世界で最も裕福な産業にもついに逆風が……。
石油会社にとって最悪の時代がやってきました。石油産業最大手のひとつでさえ、まるで砂の城みたいに崩れようとしています。でも、地球にとってはウェルカムかも…。
歴史的な大赤字
最新の沈没組は、先日史上最大の四半期損失を報告したエクソンとシェブロン(ともにアメリカの総合エネルギー最大手、エクソンは日本でもかつてエッソの商標のもと展開を行なっていた)。その報告前日には、エクソンが株主への支払いを確保しつつも解雇やその他のコスト削減を検討していると報道されていたとのこと。気候変動問題で最も偉大な悪役たちを襲った運命の大逆転は、石油産業の支配力に別の打撃を与えたことになります。
最新の投資家向けリポートによると、エクソンは今年の第2四半期に11億ドル(約1,160億円)の損失を出したのだとか。ちなみに、同社は昨年の同時期には31億ドル(約3,300億円)の利益を計上していました。まさに天国から地獄。損失の最大の理由は、最近おなじみになってきた「世界的な供給過剰と新型コロナウイルスの需要への影響」だそうです。この2つの要因はこの春、原油価格暴落によって記録的な量の石油が世界中のタンカーに積まれたまま港を目の前に波に揺られ、人々がコロナを避けて外出を自粛している間に大気汚染が急激に改善したときにハッキリ現れていましたよね。そしてついにそれがエクソンの会計帳簿でもハッキリ見てとれるようになっちゃったってわけ。
エクソンの今年の損失は、これまでのところ17億ドル(約1,800億円)。それでもまだ1989年以来最大となる30億ドル(約3200億円)の損失を出したシェブロン(ブルームバーグは 「壊滅的な赤字」という見出しでグラフを報じている)とは比べものになりません。 それが石油産業の現状です。
お先真っ暗すぎる石油産業の未来
巨額の損失は、より良い会社には起こりえないことです。両社とも気候危機については全くの無能で、何もしないための努力ばかりして、脱炭素化の目標を掲げながら活動家を侮辱することに何十年も費やしてきました。ですが、ここ数年は負け組化しています。活動家たちは反石油産業に世論を導くことに成功し、石油という有毒物質の掘削と販売を行なうための財政は少し厳しくなってきています。高いリスクが伴う北極圏の掘削には資金を提供しないと主張する銀行が増えてきており、小規模な石油会社がパンデミックの影響で負債を返済できなくなっているため、財政状況は今後さらに厳しくなる可能性もあるみたいですよ。
悪あがきを続けるのか、クリーンな事業に方向転換するのか
石油会社は、時代遅れの石油に他の使い道がないかを探して奔走することになりました。石油化学はガス会社や石油会社が積極的に進出してきた分野であり、プラスチック業界は自分たちに有利になるようにコロナを積極的に利用しようとしています。たとえば、州や都市にレジ袋の使用禁止を撤回させるか、若しくは少なくとも禁止を遅らせようとして、プラ製レジ袋の方が衛生的であるというデタラメな考えを広めようとしたりしています。
エクソンは決算発表で、手指消毒剤やプラスチック製の個人用保護具の製造を継続することで、パンデミックを資本化することも視野に入れていると述べています。それは客観的にみて新型コロナ対策としても有効ですし、雇用も生まれるので良いことかもしれません。しかし、トランプ大統領の無策ぶりがたたって新型コロナを抑制できそうにない現状をみれば、地球を汚染する化石燃料を長年に渡って掘り続けて1,770億ドル(約19兆円)規模の会社を築き上げてきたエクソンが手指消毒剤を作るのは、持続可能な長期的ビジネスではありませんよね。また、石油会社として平常運転に戻るのもまた、持続可能ではありません。でも、幸いなことに石油産業は、発電所の閉鎖や、使われなくなったガス井や油井を埋めることによる雇用の増加、解雇された石油産業従事者の経済救済など、より良い具体的な方法を選ぶことも可能です。
化石燃料にこだわり続けると、今後数十年かけてフェードアウトしていくしかない化石燃料産業には、再生可能エネルギー事業への方向転換や、残してきた汚染の浄化事業など、新しい時代にふさわしい何かをはじめるか、立つ鳥跡を濁すことなく、散らかしたものをできる限り片付けてから、歴史に区切りをつけてもらいたいものですね。
修正・訂正[2020/08/19]エクソンとシェブロンの赤字額に関する表記を修正し、主述関係を整頓しました。また、リンクの間違いを訂正しました。