まさに「死ぬほど暑い」。猛暑による死者数がウイルスなど感染症の死者数を超えるおそれ

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まさに「死ぬほど暑い」。猛暑による死者数がウイルスなど感染症の死者数を超えるおそれ
Image: GizmodoUS

本日の東京、37℃…。確かにつらい。

先日、全米経済研究所が発行した”Climate Impact Lab”に衝撃的な研究が掲載されました。もしも世界がこのままのペースで温室効果ガスを排出し続けたら、猛暑による死者数が感染症死亡率に匹敵する恐れがあるそうです。

猛暑が間接的な死因になることも

地球上で起きる異常気象の中で、もっとも危険なものが猛暑です。しかし高温が原因で亡くなる人の数は(他の大規模災害と比べると)それほど多くないため、ハリケーンや竜巻ほどインパクトがなく、そこまで認識されていないのが現状です。

気温と死亡率の関係性をより明らかにするために、研究者チームは世界41カ国から3億9900万件の死亡記録を抽出しました。これは死亡総数の55%に相当する数です。

研究の結果、暑さによるストレスや熱中症以外にも、猛暑を原因とする死亡例が多いことがわかりました。たとえば、もともと心臓血管に基礎疾患を抱えている人々にとって、猛暑は心臓発作の増加につながる危険な要因です。つまり、直接的な死因は心臓発作などでも、「暑さ」が間接的に発作を誘発するケースが多いわけです。

シカゴ大学の環境および開発経済学者アミール・ジーナ氏はEartherに対し、「基礎疾患を持つ高齢者は、こうした影響を受けやすくなっています。(高温の環境では)体が自分を冷やそうと、多くの血液を送り出します。これが循環器システムに余分なストレスをかけるのです」とメールで説明しています。「こうした、いわば間接的な死は、データを注意深く調べ、統計モデルにおいてすべての交絡因子を制御して、はじめて観察および原因の特定ができるのです」。

80年後に日本で猛暑による死者が8万人増という試算

猛暑が死亡率に与える影響を検証したところ、世界の指導者が温室効果ガス対策を一切行わなかった場合(いわゆるRCP8.5シナリオ)、2100年の熱波による死者は現在比で10万人あたり73人(日本だと約8万8,000人相当)増えることがわかりました。これは、HIVやマラリア、黄熱病といった感染症による死亡者の総数に匹敵する数値です。

ただ、地球上すべての地域が平等に地球温暖化による影響を受けるわけではなく、最も死者数が増えるのは、最も気温が高い地域になると見られています。バングラデシュやパキスタン、スーダンなどがそれに該当し、死亡率は10万人当たり200人以上となる恐れも。また、気温だけでなく貧困もまた、その要因となります。

貧困も重要なファクター

経済発展は非常に重要なファクターです。経済的に恵まれている地域ほど、将来的な温暖化による影響がはるかに少なくなります」とジーナ氏は言います。「豊かさが物をいうことは間違いありません。インフラやテクノロジーに投資できるようになりますから。エアコンなどの冷却設備もそうですね」。

各国がこうした関連死を防ぐためには、冷却センターの建設などの適応策にどれだけ投資できるか、ということが重要なファクターになるというわけです。

「より貧しい地域では、温暖化適応への予算が限られています」とジーナ氏は言います。「本質的に、裕福な場所は気候変動がもたらす影響に金銭を、貧しい地域は命を対価として支払っていると思われます」。

それぞれの国内事情をみても、温暖化による打撃には地域差が出るはずです。エアコンなどの冷却技術や医療にアクセスできない人たちが最も大きな影響を受けるでしょう。年齢もまた、大きな要因です。65歳以上は酷暑で悪化する恐れのある基礎疾患を抱えている人が多く、彼らが最も苦難を強いられることになります。

世界経済にも大きな損失

大勢の人が亡くなることで経済も大きな打撃を受けます。研究者の予測では、このままのペースで温室ガスが排出された場合、猛暑の関連死にかかわるコストは2100年末までに世界経済生産の3.2%にのぼるとのこと。さらに、世界が排出する二酸化炭素1トンあたり、36.60ドル(約3,870円)の損失が生じると試算されています(ちなみに全国地球温暖化防止活動推進センターによると、2017年の二酸化炭素総排出量は約237億トンだそう)。

ただ重要なことは、大勢の人が亡くなると予測された未来は、今後の行動によって変えることができるということです。もしも各国のリーダーが気候変動の危機に真剣に取り組み、温室効果ガスの排出量を急速に削減するための措置を講じ、低位安定化シナリオ(RCP4.5)の条件を満たした場合、猛暑関連死の増加速度は、もっとも深刻なRCP8.5の3分の1未満に抑えられます。それでも、世界の不平等は消えません。

やるなら今しかない

「貧しい地域は、気候変動への貢献は少ないのに、受ける影響は多いのです」とジーナ氏は言います。 今回の研究では、地球温暖化の抑制だけでなく、経済的不平等解消に取り組む必要性も浮き彫りになりました。そのためには、より豊かで、二酸化炭素排出量の多い国が気候変動対策を主導し、他国の適応プランに投資することが必要です。特に、歴史的にも最大の温室効果ガス排出国であるアメリカがその役目を果たすことが求められます。

始めるなら、今です。先日、イラクの気温は53℃を超えました。進むべき道を改めない限り、将来さらに深刻なことが起きることになります。

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