昭和世代ならお馴染み?
子供の頃からポケットサイズのガジェットに夢中になっていたという米Gizmodoライターが、あの懐かしのデバイスについて綴っています。
それはタブレット、スマホ、ガラケー、ポケベルよりも前のこと…。いつもポケットや鞄に入れて持ち歩く携帯デバイスとして、おそらく電子システム手帳は先駆け的な存在だったのではないでしょうか。
ネットワーク接続なし、あるのは電話帳、スケジュール管理、経費の精算などといったデータの保管機能。スーパーへの買い出しの際にはこれでショッピングリストを作ることができます。
80年代後半には、わざわざ覚えていられないようなことをデジタルにメモできるデバイスが多くありました。その多くは、追加機能がついた高度な計算機。我が家には、カシオのデータバンク腕時計があったのも覚えています。
はじまりは1976年
こうした電子システム手帳のルーツを辿ると、インドの発明家であるSatyan Pitroda氏という人物に行き着きます。彼は、1976年に時計とカレンダーを組み合わせたデバイスの特許を取得しています。これはキーボードで予定を打ち込めるほか、アラートメッセージでいつ・どこに行くべきかを知らせてくれる機能つき。
実際にこうした技術が消費者の間で普及するようになったのは、1989年頃。シャープのWizardからはじまり、英数字キーパッドがついたちいさなノートパソコンのような見た目で、コンパクトながら多機能な電子手帳が登場。拡張カードを使用すると機能を追加することもできました。
1994年頃には、FAXの送受信機能、さらにはスタイラスを使ったタッチスクリーンなど、基本的な通信機能が揃うように。こうしたデバイスは機能も価格もプロ並みだったので、そう簡単には手が届かなかったんですけどね。

その後シャープに続き、Rolodex(ローロデックス)、カシオなどのメーカーが電子システム手帳を作るようになると、通信、FAX機能なしのシンプルで安価なバージョンが登場して、1万円以下で買えるように。シャープもこの流れに乗って、新たに安価な電子システム手帳モデルを売り出しています。
12歳だったあの頃…

当時のわたしは12歳。知っている人たちの誕生日や電話番号を入力したり、許可された場所(すなわち学校以外)にはどこへでも持って歩いたりしていました。キーボードは小さくて打ち込みづらいし、スクリーンは単色で低解像度で暗いところじゃ読めないし、ストレージはたったの32KB。ゲーム機能だってひとつもありませんでした。
それでもこのZQ-3000モデルを持ち歩いていたのは、これが次世代コンピュータだ! という信念みたいなものがあったのかもしれません。なんといっても、当時のパソコンはコンセントなしじゃ動かない、重たいベージュの物体の時代でしたからね。
ひとつのデバイスの終わり

そんな時代だったからこそ、コンパクトで多機能な電子システム手帳は90年代も成功していたように見えました。ところが1996年になると、もはや競合できないデバイスが登場することに。
大きなスクリーンを備えた、Palm社のパームパイロット・パーソナルです。それはPDA(パーソナルデジタルアシスタント)のようなデバイスで、ペンでサッと書いたものを編集可能なテキストに変換することができたのです。
そこからPDAは進化を遂げ、ついにはワイヤレステレコミュニケーションなど、電子システム手帳では叶わなかった機能が追加されるように。最終的には「Palm Treo」など、PDAが携帯電話に融合されるようになると、電子システム手帳の時代はついに終焉を迎えました。
でもほら、絶滅した恐竜のように、電子システム手帳だって忘れられたわけじゃないんです。Samsung Galaxy Fold、Motorola Razr、それにMicrosoft Surface Duo / Neoのようなデバイスを見てもわかるように、折り畳み式ガジェットの波がまた来ようとしているじゃありませんか。もちろん、12歳のときに使っていたシャープの電子システム手帳にできることと比べたら混同できない部分も多くあるのはわかっています、でも、これからのデバイスのデザインにはもう注目せずにはいられません!