若い時間が長いといいな。
「不老長寿」は人類にとって、いわば究極の夢。洋の東西を問わず、国と人民を支配した時の権力者が最後に恐れるものといえば「老いと死」でした。たとえば、万里の長城で知られる秦の始皇帝は当時の学者に不老不死の薬を作るよう命じています。ちなみに、そこで使われたのが当時秘薬と言われた「水銀」だったため、逆に健康を損ねるという皮肉な事態になったわけですが…。
IT界の王者も不老長寿を研究
現代にあっても、それは変わりません。Google創始者のラリー・ペイジ氏は2013年、アンチエイジングを研究するベンチャー企業「カリコ」を設立し、15億ドルもの資金を投じて老化の原因をつきとめる研究をすすめています。一定の力を得ると、人間は不老の夢に挑むようになるのでしょうか…。
たしかにこの数十年で人類の平均寿命は大幅に延びましたが(例:1950年から2019年で日本人の平均寿命は約1.4倍に)、それは医療の発達によって生まれてすぐに亡くなる子供が減ったこと(2017年の乳児死亡率は約0.9%、1900年では15.5%)や病気治療が進んだことが大きな要因。ヒトという生き物の持つ本当の意味での「寿命」が延びたわけではなさそうです。
もしも人間が100万歳まで生きられたら…
ゆえに人は不老不死を求めるわけですが、たとえば何らかの大発明の結果、人間の寿命が数倍以上延びたらどうなるでしょうか? 科学誌“Scientific American”では「平均寿命が100万歳になったら世の中どうなる?」という検証記事が掲載されています。かなりユニークで奥が深かったので、同誌の予測を紹介します。
困ること3つ
①人口が増えすぎる
もしも、1人あたりの出生数が今と同じ割合で推移した場合、地球上の人口は100兆人という超飽和状態に。出産数制限や他の惑星への移住といった公共政策が必須になるでしょう。
②犯罪者を収監する牢屋が足りなくなる
欧米では終身刑を科す国も多いですが、100万年生きるとなると、正直お互い辛い…。牢屋の数も足りなくなっちゃうので、有期刑にすべき! って議論が起きるでしょうね。
③文明が進化しなくなる
若者に対する中高年(何歳から中年と呼ぶかはわかりませんが)が多すぎて、何か新しいことをやろうとしても「1,000年前はこうじゃった」「いやいや、わしが子供だった3万年前はみんなこうしていた」なんて意見が出まくって、何も新しいことができず、文明が一切進化しなくなるおそれがあります…。 他にも、バースデーケーキにろうそくが乗り切らない、なんて意見もありました。
いいことも3つ
①環境問題をみんな真剣に考える
たとえば、「このままいくと500年後には北極の氷が全部解ける」とか言われても、「どうせ私死んでるしー」と実感がわかず、いまいちエコに力が入らないという人もいますよね。でも、100万年後まで地球に元気でいてもらいたいと思えば、自然と環境問題に真剣に取り組めるようになるでしょう。
②宇宙の遠い星に行ける
地球から太陽の次に明るく見えるシリウスまでの距離は、8.611光年。ロケットが1光年進むのに2万年かかりますから、シリウスまでは16万年以上。でも100万歳まで生きられるなら、叶わぬ夢ではなくなります。技術も格段に進歩するでしょうから、壮大な宇宙旅行ができるかもしれません。
③愛する人と、ながーく一緒にいられる。
人間にとって最大の悲しみは、愛する人の死。でも寿命が100万年なら、末永―く一緒にいられますね。ただ、事故や大けがで命を落とした際の「早すぎる…」が尋常でない悲しみになる恐れがあるので、くれぐれも気をつけなければいけません。
…とまあ、こんな感じで、実は100万年生きられたとしても、人の喜びや悲しみって今とそれほど変わらないのかな、って気もします。もしかしたらラリー・ペイジ氏の「カリコ」がとっておきの「長生きの秘策」を編み出すかもしれません。
もし、もしも100万年生きられる薬ができたら、皆さんは欲しいと思いますか?
Source: Scientific American