macOS Big Surプレビュー:MacのiOS化がほぼ完了

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  • author Caitlin McGarry - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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macOS Big Surプレビュー:MacのiOS化がほぼ完了
パブリックベータ公開されたmacOS Big Sur、すべてがiOSっぽくなってます。 Image: Caitlin McGarry/Gizmodo US

タッチ操作のMac実現の日は近い…?

macOS Big Sur(以下Big Sur)のパブリックベータが公開されました。さっそく使った米GizmodoのCaitlin McGarry記者が使用感をレポートしてますので、どうぞ!


Apple(アップル)製品を複数台持ってる人なら、デバイス間でタスクを引き継ぐことにもう慣れてることと思います。iPhoneで家具を探し始めて、その後MacBookのSafariを開いて続きを見るとか、家のiPadで送ったテキストメッセージでの会話を外出後にiPhoneで続ける、といった具合です。

現在パブリックベータ公開中のmacOS Big Surを1カ月以上使ってみたところ、今までなかった体験をしました。ついMacBookの画面がタッチに反応するような気がしてきて、うっかりスワイプしようとすることがあるんです。それは、アプリのアイコンからコントロールセンターからSafariのプライバシーツールからマップやメッセージの新機能に至るまで、Big SurのすべてがiOS風にリデザインされているからです。Big Surの入ったMacは、iOSに物理キーボードをくっつけて画面の反応を抜きにしたようなものです。Appleが今後タッチスクリーンのMacを作るかどうかわかりませんが、Big Surを使っていると、そんな日も近いような気がします。

この記事ではBig Surのパブリックベータでできることのプレビューをまとめますが、ベータはベータなので、一般的な注意事項はあてはまります。バグがあって日常利用に支障が出るかもしれないので、安定して動作しなくなってもいいMacがあれば、それにインストールするのがベストです。個人的にはBig Surを使っていて問題は出てませんが、John Biggs編集長はこれより前のバージョンのデベロッパーベータを使っていてかなり問題があったと言ってます。問題の出方は、人によって違うかもしれません。

この記事はBig Surのレビューではなくて、どちらかというと、Big Surが公式リリースされたらMacの使い心地がどうなるかのファーストインプレッションをお伝えしたいです。

デザインには既視感が

iPhoneとかiPadを使ったことがあれば、 Big Surのデザインはほっとするものになるでしょう。AppleはmacOSのデザインを完全に刷新して、すべてを軽く、明るくしました。今までグレーだった要素は白になり、エッジは丸みを帯び、ドックは透明になって浮かんでます。アプリアイコンもiOSでの見え方に合わせてリデザインされました。Appleのいろんなプラットフォーム横断で同じアプリを使っているので、これはしっくりくるし、便利でもありますが、もう少し変えてほしいところもあります。たとえばFaceTimeとメッセージアプリのビデオカメラとメッセージの吹き出しは、フラットなiOSでのデザインと違って、緑の背景の上に立体的に表示されるんですが、個人的に好きじゃないです。

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FaceTimeとメッセージのアイコンがBig Surだとなぜか立体的。

コントロールセンターと通知センターは、iOS化したmacOSの象徴かもしれません。Big Surでは、よく使う細かい調整機能をメニューバー右上のコントロールセンターアイコンをクリックするだけで呼び出せるようになります。たとえばWi-Fi、Bluetooth、画面の明るさといった、メニューバーのスペースを占領していたものほとんどすべてがコントロールセンターに収まってます。しっくりこなければ今まで通りに戻すこともできますが、個人的にはすっきりして良かったと思います。画面の明るさはTouch Barで調節できるので今でもそれでやってますが、その他のことはほとんどこのコントロールセンターから調節するようになりました。

ホームスクリーンの右側に表示される通知センターでは、iOSと同じように通知がグループ化されるようになりました。各グループごとに、一番新しい通知が一番上に表示されます。この通知と、リデザインされたウィジェットが統合され、重要な情報がひとつのビューにまとまりました。iPhoneの使用感とすごく近いです。

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すべてが明るい!

大した変化じゃないように聞こえるとしたら、それはたしかにその通りなんです。でもこの全体的な使用感のせいで、Macがタッチスクリーンじゃないことを忘れてしまいます。今Macは、他のタッチスクリーンデバイスと同じように見えてます。

Safari:Chromeから乗り換え必至

私はChromeが好きじゃないです。Chromeはリソースを浪費して、数タブ開いただけでバッテリーライフを食いまくります。複数ウィンドウで調べ物でもしようものなら大変です。かといってSafariに乗り換えるかというと、Chromeに保存してるブックマークとかパスワードが多すぎて、つい優先順位が下がってました。でも今プライバシー重視のSafariの機能によって、Safariがいかにバッテリーを浪費しない優れたブラウザだったかを思い出し、乗り換えの優先順位が高まってるところです。このへんの新機能は、うれしいボーナスです。Safariのバッテリー持ちについては、Apple自身が「ChromeやFirefoxより最大1時間長くネットサーフィンができます」と言ってますが、自分自身ではまだテストできてません。

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Safariのファビコンでは、どのタブが何なのかがわかりやすくなりました。

Big SurのSafariは、立ち上げるところから完全にカスタマイズできます。スタートページに表示させるものはお気に入りとかリーディングリストにリンクを入れることでキュレーションでき、背景画像を選べるのもナイスです。スタートページのパーソナライズを何もしなくても、最近見たページとか、よく見るページを元にしたSiriからの提案とかを表示できます。

それからプライバシーレポートでは、Safariがブロックしたトラッカーの詳細情報を確認できます。今まで広告ブロックアプリを使ったことのない人は、自分がいかに追跡されているかがわかってショックかもしれません。あとはタブも刷新され、どのタブがTwitterでどのタブがGoogleなのかをファビコンで表示してくれたり、タブにマウスオーバーでページのプレビューを見せてくれたりします。タブを無数に開きがちな人にはありがたいですね。

Safariの正式リリース後に試すのが楽しみなのは、今デベロッパーが絶賛開発中のSafariの機能拡張です。他のブラウザだと機能拡張はずっと前から当たり前になってますが、Safariの中でどうまとまっていくのかは興味深いです。

iOSの機能がmacOSにも

現在iOS 14もパブリックベータ公開中ですが、こちらも新しい機能がたくさんあります。そしてその多くがmacOSにもやってくるので、この秋にはiOSとmacOSの使用感はますます近づいてきます

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Big SurでのメッセージアプリはiOS 14と同じ見え方に。

たとえばメッセージアプリでは、会話をアプリのトップにピン留めできたり、グループでの会話に写真とか絵文字のラベルを貼ったり、メッセージを検索したりができるようになります。メッセージアプリをプラットフォーム横断で使っている私としては、見た目が統一されるのはありがたいです。

マップもiOSとmacOSで同じ見た目・機能になり、たとえばガイドとかサイクリングのナビゲーションとかが入ってきます。マップはiPhoneで使うほうが便利ですが、でも同じアプリに同じ機能、同じデザインが入ってることで、使用感がより一貫したものになります。

となるとやっぱり、ついMacの画面をタッチしたくなります。

Appleは「Macにはタッチ不要」という姿勢を貫いていて、タッチできる大きな画面がほしければiPadをどうぞ、という流れです。たしかにiPad ProにMagic Keyboardを付けたりしたら最高です。でも今、macOSとiOSがこれだけ近づいてきて、デベロッパーがiOSとmacOSの両バージョンを作るのもより簡単になる環境をAppleが提供していて、AppleがARMベースの内製プロセッサでMacを作ろうとしてるってことは、タッチスクリーンのMacが出てくるのは当然の帰結のように思えます。でももちろん、これだけの伏線があっても回収されなくて、私は永遠にMacBookの画面をマヌケにスワイプし続けるのかもしれません。さてどっちに転ぶことでしょうか?

注:本稿のスクリーンショットは取材のための特別な許可を得て掲載しています。

Image: John Biggs/Gizmodo US