太陽には双子がいた説

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
太陽には双子がいた説
Image: M. Weiss via Gizmodo US

太陽系はどのように誕生したのか。

最新の研究によれば、太陽系にはもともとひとつではなくふたつの恒星があったかもしれないそうです。

太陽の「双子」とでもいうべき星がかつて存在していたと仮定すると、いまだ発見されていない第9惑星の存在も説明できるのだとか。一体どういうことなんでしょうか。

説明しきれない「オールトの雲」の謎

太陽の双子はもうとっくに太陽系から姿を消したけど、かつて存在していた痕跡は現在の「オールトの雲」に見ることができる、と主張しているのが学術誌『The Astrophysical Journal Letters』で発表された論文です。

Image: NASA

オールトの雲は、太陽系を球状に包みこんでいる巨大なもやのようなものだと考えられています。あまりに地球から遠く離れているため、いまだ直接観測されたことがありません。海王星の軌道よりも、さらにその外縁に位置するエッジワース・カイパーベルトよりも遠くにあり、太陽から1000AU(AU=天文単位で、1天文単位は地球と太陽の平均距離)ぐらいの距離から始まって、太陽から10万AUも離れた距離まで広がっていると推測されています。

ちなみにNASAによると、ボイジャー2号は現在太陽から119AUほど離れた星間空間を飛行中で、オールトの雲の内側に到達するまであと300年、オールトの雲を抜け出すまでにはあと3万年もかかるんだとか…!

オールトの雲の中では氷と塵でできた小天体が1兆個以上もひしめき合っており、これらは太陽系が形成された時にとりこまれそびれた余剰の星間物質だと考えられています。そして今回発表された論文によれば、オールトの雲に含まれる物質量があまりにも多いことから、原始の太陽系がふたつの恒星を有する連星系だった可能性が浮上してきました。

かつては連星系だった?

今までは、いくら太陽系の形成をコンピューターでシミュレーションしてみても、このオールトの雲に含まれる物質量の多さを再現することはできていませんでした。同じように余剰の星間物質で形成されているとされる散乱円盤と比べると、あきらかにオールトの雲のほうに物質が偏りすぎているのを誰もうまく説明できなかったのです。

「オールトの雲は未解決のミステリー」と論文著者のAvi Loeb、Amir Siraj両氏は語っています。そこでふたりが出したエレガントな答えが「太陽双子説」です。

「もし太陽がもうひとつ存在していたとしたら、バース・クラスターからより多くの物質を捉えられたはずです」とLoebさんは米Gizmodoにメールで説明しています。「原始の太陽とその双子の星のそばを通りかかった天体は、いずれかの星の重力に手繰り寄せられ、エネルギーを失って捉えられたと考えられます」。

Loebさんが言うバース・クラスター(birth cluster)とは、同じ星間分子雲から誕生した原始星の集まりのこと。星間分子雲は「星のゆりかご」とも呼ばれ、特に星間ガスの密度が濃い部分から原始星が誕生します。

原始星の集まりはやがて恒星風、または天の川銀河そのものの潮汐力によって引き離され、方々へ散らばりました。太陽の双子だった恒星もご多分にもれず、やがて太陽から遠く引き離されていったと考えられるそうです。

現在もっともポピュラーな説によれば、オールトの雲は太陽系形成時に取り残された星間物質が惑星の力で遠くまで飛ばされた結果だと考えられています。

しかし、この考え方では散乱円盤と比較した時のオールトの雲の物質量の多さを説明できませんでした。我々が考えた理論モデルならば、説明がつきます

とLoeb氏。

オールトの雲の物質量から計算すると、ふたつめの太陽は我らが太陽とほぼ同等の質量を持っていたと考えられるそうです。つまり、双子ですね。そしてふたつの太陽の間には 1000AUぐらいの距離があっただろうとも推測されています。

第9惑星もゲット?

この新説について、研究に直接関わっていないカリフォルニア工科大学教授・Konstantin Batygin氏は、「太陽が昔連星系だったと考えるのはもっともです」とおおむね肯定しています。「むしろ、原始星の集まりの大半は太陽規模の恒星が複数生まれ、後に分離していくこともわかっているんです」。

太陽とその双子が離ればなれになっていく過程で多くの星間物質が失われただろうと推測されますが、それでも今のオールトの雲に含まれているぐらいの物質量は留まったと考えられるそう。

さらに、ふたつの太陽の重力はオールトの雲のみならず、第9惑星をつかまえた可能性すら考えられるそうです。

Batygin氏と同僚のMike Brown氏が2016年に初めて提唱した「第9惑星説」は、海王星のさらに外側に地球の5〜15倍の質量を持つ天体が存在していて、太陽系外縁天体の軌道にブレを生じさせているとする仮説。

第9惑星の成り立ちや性質については諸説あり、まだなんの証拠も見つかっていないのですが、Loeb氏らはふたつの太陽の重力が巨大な漁網のような役目を果たして、太陽系外から準惑星群を引っ張りこんできた可能性を推しています。

そう、「第9惑星」はなにも惑星だとは限らないんだそう。準惑星の集まりかもしれませんし、オールトの雲にひそむ宇宙塵の巨大な吹きだまり、はたまた原始ブラックホールである可能性も指摘されています。

ブラックホール説を発表したイリノイ大学のJames Unwin教授は、今回の論文の意義はこの第9惑星の存在を確かめる方法を具体的に提示している点にあると話しています。もしかしたらオールトの雲の領域には未だ発見されていない準惑星がごろごろしているのかもしれない。そしてそれらが私たちが探していた「第9惑星」なのかもしれない。

今後第9惑星を探していく上で、重要な手がかりとなりそうです。

双子のゆくえは知れず

奇しくもヴェラ・ルービン天文台が2021年に完成する予定で、一気に宇宙観測の幅が広がると期待されています。もし第9惑星の存在が明らかになれば、同時に「太陽双子説」のほうも信憑性を帯びてくるというもの。

それにしてもやっぱり気がかりなのは太陽の双子のゆくえですよね。

こちらについては残念ながら共同著者のSiraj氏が「天の川銀河のどこにあってもおかしくない」とプレスリリースで語っています…。

とっくの昔に行方不明になってしまった太陽のかたわれ。今でも夜空のどこかでキラリと輝きを放っているんでしょうか。

Image: NASA
Reference: NASA

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