1年間の生活をARメガネで記録し、VRタイムマシンを作ったクリエーター

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1年間の生活をARメガネで記録し、VRタイムマシンを作ったクリエーター
Lucas Rizzotto氏は、SnapchatのSpectaclesを1年間使うことで自分の「タイムマシン」を作った。 Image: Lucas Rizzotto

この発想は素晴らしい!

タイムトラベルは、昔から人々を魅了してやまないことの一つです。もちろん、現在タイムトラベルは不可能ですが(人間は特に最近何やってもメチャクチャにしちゃうので、むしろ無くて良かった)、とあるクリエーターが代わりに、1年間の生活をSnapchat Spectacles 3で記録し、VRタイムマシンを作ってくれました。

VR/ARアーティストのLucas Rizzotto氏は、自身のYouTubeチャンネルにてこの「タイムマシン」の制作過程を追ったビデオを投稿しました。Snapchat(スナップチャット)は「Spectacles」と呼ばれる、60fpsの3D映像を撮ることができるカメラ付きの眼鏡を発売しており、彼はこれを使って1年間自分の生活を録画しました。タイムマシンは、録画を始めた一年前まで遡ることができるのです。しかもただの一年ではありません。Rizzotto氏はこの一年を「デジタル・ノマド」として生活し、世界中を旅した体験を記録したのです。

Video: Lucas Builds The Future/YouTube

このビデオは、彼が作ろうとしている「Lucas Builds The Future」というシリーズの第1作となります。このシリーズでは、彼が未来的な技術やコンセプトを使い、毎回「クレージーな何か」を作っていくそうです。

彼のタイムマシンのアイデアは、「ハリーポッター」を連想させます。ハリーとダンブルドアが液体の入ったボウルを通して、映画を見るようにヴォルデモートの過去を見るシーンです。Rizzotto氏本人は、「マイノリティ・リポート」のメモリープロジェクターと比較しています。

彼はVRでタイムマシンを作成し、プロジェクトを3段階に分けました。操作パネル、メモリーファインダー、そしてタイムトラベル効果です。

彼によれば、操作パネルとはつまりユーザインターフェースのこと。メモリーファインダーとは、操作パネルで入力した日付を元に正しいメモリーを検索、再生するプログラムです。最後にタイムトラベル効果とは、VRでの体験をより没入感が高いものにする、アニメーションなどの特殊効果のことです。彼は単純にSpectaclesで記録したものを再生するだけでなく、本当にタイムトラベルしているような雰囲気を出したかったからです。

VRタイムマシンを完成させた彼は、ゆったりとした椅子にブランケットと枕を持って座り、過去1年間を振り返ります。彼の喜びとエネルギーは見ていて本当に楽しく、それは彼のメモリーやタイムマシン効果も同様です。

「朝起きて、鏡に映った自分が嫌いなことがある。喋り方や考え方、それに見た目も」と彼はビデオで語ります。「自分という人間が嫌いなことがあるんだ。でも、こうして距離を置いて自分を観たおかげで、新しい視点ができた。自分を全く違う別の人間として楽しめたんだ。彼はもちろん完璧ではないけど、いい奴で、思慮深くて、スマートだ。自分自身の価値を見つけるのに、タイムマシンを作ることが必要だったんだ」

米GizmodoはRizzotto氏にTwitter(ツイッター)のDMでコンタクトをとり、タイムマシンの制作過程ついて訊いて観ました。特に興味深いのは、彼がどうやって制作に時間を割けたのか、そして彼の作ったものが製品化し、色んな人が自分の過去に生きるようになったらどう思うのかです。


米Gizmodo(以下GIZ):RizzottoさんはフルタイムのYouTuberですか?それともこれはあくまで趣味ですか?

Rizotto:全然YouTuberではないです。自分の作ったものを見せたり、チュートリアルのようなものを作ったことはあるけど、ここまでの物はないです。ただ、こういうシリーズを作るというアイデアは頭の片隅に以前からあって、今回挑戦してみたんです。だから、今回のはパイロット版と言えますね!普段はインディーのVR/ARクリエイターで、Questで公開した「Where Thoughts Go」という作品が一番知られていると思います。

でも、僕は常に新しいことを試したり、自分に挑戦するのが好きなんです。だからこのビデオを作った後、もしこのビデオが10万回再生されて、登録者数が一万人を超えたらYouTubeを1年間真面目にやろうと決めています。もうすぐ目標達成ですよ!

GIZ:プロジェクトを実現するにはかなりのコーディングが必要だったみたいですが、コーディングの経験はあったんですか?

Rizzotto:過去3年で独学しました!ただ、それまでは完全に未経験です。

GIZ:それが原因でプロジェクトが難しかったということは?

Rizzotto:ある程度はそうですね。ただ、ストーリーテリングの方が僕にとっては難関でした。複雑なアイデアを普通の人にも楽しく、わかりやすく伝えて、なおかつ芸術的価値やオリジナリティを出すにはどうしたらいいのか?2年間コーディングして得た知識があれば、根気よく取り組むことで大抵の問題は解決できると思います。

GIZ:ストーリーテリングは本当に素晴らしかったと思います。正直最初は「結構長いビデオだな」と思ったのですが、観ていてあっという間に時間がすぎてしまいました!これは良いストーリーを作った証明だと思います。

Rizzotto:ありがとうございます。カオスだった制作がビデオでは全く見えないのにはいつも驚いています(笑)。今回のビデオはほぼアドリブでしたが、次はもっとちゃんと作ります!

GIZ:ビデオを観ていると、メモリーファインダーの部分が最も難しかった印象があるのですが、これは正しい認識ですか?原因はメタデータの問題ですか?それとも当初どうやって作るのか手探りだったからですか?

Rizzotto:いくつかのレベルで他より困難でした。一番の原因は、ここまで大量のデータを扱ったことがなかったということです。子供用のプールからいきなり太平洋のど真ん中にいれられたような気分でした。メタデータの問題は泣きっ面に蜂のようなもので、この二つにプレッシャーも合間って、大きな問題になりました。

GIZ:でも、うまくいったじゃないですか!

Rizzotto:あ、一つ裏話があって、プロジェクトの入ったハードドライブが5月に故障して、全てを失いかけました。

GIZ:うわ、それは...。どうやって復旧したんですか?

Rizzotto:Twitterで土下座しながら助けを請ったところ、コミュニティの力でなんとか解決できました。本当に困った日でしたが、その分面白い話になりますよね。

GIZ:ハードドライブと言えば、最終的に何個使ったんですか?

Rizzotto:正確には204個です!実際にストレージとして使ったのは2TBのドライブ4つで、残りは演出のために使ったジャンクドライブです。

GIZ:ところで、一年の旅はどういう内容だったんですか?一年通していろんな場所に行ったんですか?

Rizzotto:そうです!2019年にデジタル・ノマドとして生活し始め、数週間ごとに国を変えたので、たくさんの場所に行きました。それがきっかけで自分の人生を記録し始めたんです。僕の記憶力は金魚並みなので、自分が見たことや自分に起きたことを忘れたくなかったんです。

そこで記録を始めて、やればやる程気にいったんです。

GIZ:この1年間は休暇だったんですか?それとも会社やクライアントとリモートワークを続けていたんでしょうか?

Rizzotto:インディーデベロッパとして、自分の作品をリモートで開発していました。絶対に必要な時だけフリーランスをして、それ以外は自分が一番情熱を傾けていることをしています。

GIZ:Snapchat Spectaclesに決めるまで、何種類くらいカメラを試したんですか?

Rizzotto:GoProを使って実際一度作ってみたのですが、煩雑で煩わしかったです。Spectaclesは初めて使った瞬間からカッチリハマった感じです。

GIZ:Spectaclesは一度に1分しか記録できませんが、どうやって作ったんですか?もしかして、一日あたり何百回、下手したら何千回も撮っていたということですか?

Rizzotto:そうです。全部細かいクリップに分かれていました。ファイルはBluetoothを介して自動的に携帯に転送されるので、1日の終わりにローカルドライブにセーブして携帯から消去していました。

GIZ:じゃあ1分ごとに録画ボタンを押していたんですか?それともSpectaclesが自動的に録画して勝手に動画を分けていたんですか?

Rizzotto:答えは簡単ではなくて、だからビデオでも触れていないんです。正解は両方です。自動的に録画してくれる方法を見つけたのですが、眼鏡がオーバーヒートする問題が発生しました。なので日によっては自分で手動でやっています。なので、ビデオでは出来る限り録画したと表現しています。

GIZ:Snapchatはあなたのプロジェクトに賛同したり、協力したんですか?

Rizzotto:いえ、全部自分でやっています。ただ、プロジェクト完成の数ヶ月前からコンタクトを取り始めて、たまにチャットしています。Spectaclesを使ったプロジェクトとしては今の所一番面白いものではないかと思います。

GIZ:すごい!メタデータの問題だけでも助けてもらったのは良かったですね。

Rizzotto:そうですね。解決策がアッサリしていたのは面白かったです。プログラマーあるあるですね。

GIZ:過去に生きるようになることが不安だ、とビデオでも少し触れていますね。あなたがそう言ってすぐに思い浮かんだのは、死に別れた家族や元彼、元カノなど、過去の人間との思い出の中に生き続けてしまい、いつまでも前に進めなくなってしまうことです。これは考えたことありますか?

Rizzotto:はい、結構考えました。自分から離れてしまった人を思い出せるようなものは何でも、人を足止めしてしまいます。物、写真、思い出など様々です。僕の作ったものは特別その点でユニークだと思いませんが、より強力なものではあるかもしれません。時間を戻すことでもう会えない人と時間を過ごすことができましたが、彼らの存在を感じられるのは正直嬉しかったです。

しかし、これが人の悲しみとの付き合い方にどういう影響を与えるのか、というのはより注目して考えるべき話題だと思います。

短い答えとしては、初日から考えていたことです。ただ、あまりに大きすぎる疑問なのでそこまで取り組めるとは思いませんでした。もっと考える必要があると思います。

GIZ:ビデオを見て、視聴者にどういうことを感じてもらいたいですか?

Rizzotto:いろいろです。新しい切り口からアプローチすれば、不可能なものも作れるということ。テクノロジーは時に危険ですが、時に自分を理解し、人間として成長する新しい道を示してくれること。そして自分の未来、現在、過去に優しく接するべきで、気づくと気づかざるとに関わらず、その3つは常に繋がっているということです。

最後に、ビデオでも言っていますが、「自分の過去を尋ねるということは、その後の人生にずっと影響するような素敵な体験を与えてくれる」。

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