ハイテクな「垂直農法」は、私たちの未来の食を支える期待の星となるのか...?

  • 5,478

  • author Dharna Noor - Earther Gizmodo
  • [原文]
  • Rina Fukazu
ハイテクな「垂直農法」は、私たちの未来の食を支える期待の星となるのか...?

インドア農業のポテンシャル vs 環境負担への懸念。

高く空まで伸びるように、建物を使って垂直的に作物を育てる「垂直農法」というアイデアをご存知でしょうか? 世界人口が増えて食糧危機が懸念されるなか、じつはもう何年も前から注目されているソリューションなのだとか。

垂直農法がうまくいくと...

最新の研究によると、こうしたハイテクファームは世界的な小麦の生産に革命をもたらす可能性が示唆されています。

小麦は、世界でもっとも広く栽培されている作物。世界中の人々が日常的に多くの量を消費していて、平均的な食事におけるカロリーやタンパク質の約20%を占めているといいます。では、世界の人口が増えるなかで供給は間に合うのか? 必然的に、いま以上の生産量が必要になるといわれています。

とはいえ、耕作地は貴重でかぎりある資源。そこで、縦に積み上げるかたちで農作物を育てる垂直農法にはどれほどの役割を期待できるのか、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)が新たな検証結果を発表しています。

研究では10層の垂直農場を2つ使って、作物にとって最適な人工の光や温度、二酸化炭素レベルに設定された環境が再現されました。

シミュレーションによると、これで1ヘクタールあたり年間1,940トンの小麦を生産できることが明らかに。ちなみに現在の小麦収穫量は、平均で1ヘクタールの土地あたり年間3.2トン。この数字を見ると、論文著者たちが垂直農法の研究に取り組んでいるというのも納得。非常に効率よく生産できそうですよね。

懸念されているのは、環境への負担

世界ではすでに9人に1人が飢餓に直面していて、このまま人口が増えれば問題がさらに深刻化する可能性があるとされています。こうした事態に備えるためには、世界全体で60%以上多くの小麦を生産する必要があるのだそう。

これは、なかなかチャレンジングな問題だといえそうです。というのは現在でさえ、温暖化や気候危機による環境の変化によって世界中の作物の収穫量は低下傾向にあるのだから。

今回の研究が示した検証結果は、こうした問題に対する一筋の希望のようにも感じられます。ただ、現時点ではあくまでシミュレーションなので、これだけの量の小麦を栽培するうえでどのような障壁があるのか、実際にやってみないとわからない部分もありそうです。

現段階で明らかな部分もあります。それは、膨大なコスト。従来の農法とは異なることを踏まえても、膨大なエネルギーを消費するほか、人工の光システムも必要となります。ただ、論文著者によると、シミュレーションのシステムでは太陽光から直接受けるよりも30〜50%の光強度を得られるといいます。

一方で、こうした屋内環境での給水システムやテクノロジーも、最適な温度や空気の質を維持するうえでコストがかかること、さらに電力供給の方法によっては環境への影響にもつながることになります。以前行なわれた調査では、こうしたシステムへの電力供給には、現在の高排出なフードシステムと比べてもはるかに多くのエネルギーが必要になる可能性があることが示唆されています。

垂直農法は、今のところ非現実的なのか

米Gizmodoのメール取材に対して、次のようにコメントを寄せてくれたのはカンザス州のNPO法人「the Land Institute」のStan Cox氏。科学者であり、植物育種家でもあります。

太陽光と同じくらい強い人工の光を使って作物を育てようとした人は、これまでに誰もいません。その理由はシンプルで、あまりにも多くのエネルギーを必要とするからです。

一方、今回の論文著者は、昨今のソーラー発電の進化により電気コストは下がっており、照明も効率的になっていると述べています。ただ、垂直農法により栽培された作物は、現在の農作物の市場価格と経済的に競争する可能性はまだ低いとしています。

これについて研究に携わっていない立場のCox氏は「控えめな表現」だと捉えているようです。

わたしの10年前の計算ですが、1ポンドの穀物を生産するうえで小麦が必要な光の量を考慮に入れつつ、米国の小麦作物をすべて室内で栽培すると、国全体の年間電力量の8倍が消費されることになります。

これは、昨今の照明効率の進歩よりも前のことになるので、いまならおそらく、国内の総電力供給量の4〜5倍くらいになるでしょうか。たったひとつの作物に、ですよ?

さて論文著者はというと、オートメーションの革新によって垂直農業のコストをさらに削減できる可能性があることについても指摘しています。この点に関しては、農業労働者が現在抱えている賃金削減の問題をさらに悪化させることになることも忘れてはいけませんが…。

食にまつわる問題はまだある

こうした理由から、垂直農業は農業と環境の分野でたびたび議論白熱しています。

垂直農法がうまくいけば、小麦の生産の効率性が何百倍も跳ね上がることがわかった一方で、今回の論文著者は、室内で栽培されている小麦の栄養価、品質、発生し得る病気など、現時点で未解明な部分もあることを認めています。

また、もうひとつ忘れてはいけないのが、垂直農法がうまくいったとしても、私たちの農業問題がすべて解決されるわけではないということ。まだまだ現代の食を取り巻く問題は数多くあり、食品廃棄の削減、肉中心の農業システムからの脱却、作物の多様化、土壌の改善など、その他の体系的な変化も同時に目指していく必要があります。

論文著者は、今回の研究を次のように結論づけています。

特定の状況において、エネルギーコストや収益性の問題が解決できるのであれば、屋内での垂直小麦栽培は魅力的かもしれません。

しかしここで説明した結果は、近い将来、世界の食料安全保障を達成するうえで必要な穀物生産のほんの一部にしかすぎないでしょう。

実用的な垂直農園 ほしい?

  • 0
  • 0

シェアする

    あわせて読みたい