プラズマ銃はさすがにやり過ぎた?『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』第10話ガジェット解説

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  • author 西谷茂リチャード
プラズマ銃はさすがにやり過ぎた?『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』第10話ガジェット解説
©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

サイコーな銃だとは思うけど。

ガジェットコーディネート業として、ギズが作中のガジェットの考案やテクノロジーの監修をしているTVアニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』。第10話は「胸熱」のひとことでした。決裂していた主人公・神戸大助(かんべ だいすけ)と加藤春(かとう はる)が船上で合流し、妙に噛み合うバディが再結成

二人は第9話で無効化されてしまった大助の装備(ASV)を鈴江サポートのもと再起動させ、プラズマ銃=ヴォルテクスガンで邪魔をしてくるフランツ・ワインスキーを撃破。

しかし艦橋にいた神戸茂丸(かんべ しげまる)は惜しくも取り逃してしまい……と思ったら発信器(サーブバグ)で逃亡先をすぐに特定。警察官になった大助と、トラウマを克服してヒーローに戻った加藤が、ヘリで追いかけに行きます。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

ガジェット解説シリーズ第10話では、ワインスキーが楽しそうに撃っていたヴォルテクスガンをご紹介。大助が着こなすスタイリッシュなASVとは対照的な、無骨でテック感溢れるプラズマ銃です。

そしてこれは僕の心残りのガジェットでもあります。というのも、アニメ企画時に定められていた「10年以内に作れそうなガジェット」のリアリティーラインを超えてしまったかもしれないんです。それでも「いまのテクノロジーの延長線上で作れる」ことに変わりはないので、全力で解説していきます。

『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』は毎週木曜24時55分からフジテレビ“ノイタミナ”ほか各局にて放送中。各放送・配信情報などはこちら

Vortex Gun

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥(第9話より)

ヴォルテクスガンを一言で表すと「高温なプラズマの渦を着弾時に爆発する弾として打ち出す銃」です。その機能の一覧はこの通り:

・爆発の威力はコントロール可能

・船上にいる限りエネルギー切れにならない

・コンパクトで邪魔にならない装着感/使用感

非殺傷から対物まで様々な威力の弾を撃ち分けることができて、エネルギーは実質無制限。腕に着けられるコンパクトな武器としてはありえないレベルの柔軟性ですよね。でも下記の要素を組み合わせれば実現可能なんです:

プラズマはよく「固体・液体・気体に続く物質の第4の状態」と呼ばれていて、基本的にどんな物質(元素)も十分なエネルギーを加えればプラズマになります。身近な例でいうと蛍光灯やネオンサインですね。あのガラス管のなかにはアルゴンや水銀(蒸気)といった特定の気体が封じ込められていて、エネルギー(電気)を通すと気体がプラズマになって光るんです(多くの場合は蛍光塗料と組み合わせて使われています)。

Video: confessfletch/YouTube

そしてもちろん、空気も十分にエネルギーが注入されればプラズマ化します:

Video: Sparrow338/YouTube

重要なのは、プラズマとは基本的にエネルギーが多い=温度が高い物質の状態であるということ。もう1点重要なのが、プラズマが磁場でコントロールできるところです。本来プラズマは熱い気体のようなものなのですぐに離散してしまいますが、たとえば以下の動画だと:

Video: MIT Plasma Science and Fusion Center/YouTube

プラズマが通るガラス管の外側に2つの電磁石が巻かれていますよね。で、電磁石がオンになるとプラズマの流れが細くなっているのが分かります。つまり強力な磁場があれば、高エネルギーのプラズマを狭い空間に閉じ込められるんです。

ここで登場するのが、電線をクルクル巻いて電気を流すことで強力な磁場を発生させる、電磁石という古くからのテクノロジー(学校でモーターとか作るときに触るやつ)。かなり特殊な巻き方をしなければならないですが、理想的な磁場を発生させることができれば、プラズマを磁場の中に閉じ込める=電磁石にまとわせることができるはずです。

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Image: Shutterstock
電磁石がまとうプラズマの渦(イメージ)。

あとは数センチくらいの電磁石を用意して、空気から作った高温のプラズマをまとわせ、磁力で磁石を打ち出すコイルガンの要領でプラズマごと電磁石を撃ち出せば……。

Video: ElectroBOOM/YouTube

おおむねヴォルテクスガンの出来上がりです。着弾時の爆発力は纏っているプラズマのエネルギー量に比例するので、撃つ際に纏わるプラズマ量と温度をコントロールすることで、自由にカスタマイズできます。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥(第9話より)
指を曲げる動作で撃つ。

問題はプラズマを発生させたり加熱したりするに必要なエネルギーの確保です。腕に着けるコンパクトな装備に、重くてかさばるデカいバッテリーを付けるわけにはいきません。そこで、ヴォルテクスガンは船に備え付けられている「アドリウムアンテナ」からワイヤレスで電力を受け取る仕組みになっています。最近のスマホがワイヤレス充電できるのと似たような仕組みですね。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥(第9話より)
アドリウムアンテナはASVの邪魔をしつつヴォルテクスガンには給電していた。

使用者のワインスキーにとってみれば、小さな電磁石さえ尽きなければずっと撃ち続けられる便利な武器。雇い主の茂丸にとっても、万が一の場合はいつでも電源を断てるセーフティーネット付きの武器。お互い得るものありで、ワインスキーは承知の上でエンジョイしていたのでしょう(やたら大助に向かって撃っていたのは、セーフティー機能がどこまでリアルタイムに機能するのか試していた…?)。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

というわけで、ヴォルテクスガンも頑張れば作れそうな気がしてきませんか? 僕はしています。ただしあと2つキーテクノロジーがそろえば……という条件付きなんですけどね……。

それは、幅広く使える超伝導物質の開発(電磁石の磁力を格段に上げられる物質)と、高温高密度のプラズマを安定して操るノウハウの蓄積です(核融合炉などの実現に必要)。この2つは、もしかしたら10年以内にできるかもしれないし、もしかしたら2〜30年かかるかもしれないテクノロジーで、10年のラインを超えた可能性おおありです(そもそも「絶対作れる」と言い切れないくらい未知数)。

あと、ヴォルテクスガンを考案した自分がいうのもおかしいですが、この2つのテクノロジーが平和的に使われることを願っています。そうした意味も込めて、次回のガジェット解説記事はこの2点の平和的な解説にしたいと思います。

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©筒井康隆・新潮社/伊藤智彦・神戸財閥

察しのいい方はもうお分かりかもしれませんね。ナゾ物質アドリウムは超伝導物質で、茂丸が船で研究していたのは核融合炉です。

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ヴォルテクスガン ほしい?

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