微生物、宇宙空間で年単位での生存を確認

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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  • たもり
微生物、宇宙空間で年単位での生存を確認
3年がかりの実験が行われた国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」実験棟 Image: JAXA/NASA

国際宇宙ステーションの日本実験棟では「たんぽぽ計画」の一環として、放射線耐性微生物を長期間にわたって宇宙の過酷な環境にさらす実験を実施。その結果、3年も宇宙空間にさらされた後の微生物の生存が測定されたのです。この発見は生命が他の天体から地球に飛来したとするパンスペルミア仮説を強めることになるかもしれません。

極限環境微生物を宇宙空間に晒してみたら生きてた

デイノコッカス・ラディオデュランスは凍てつくほどの寒冷な気温、電離放射線、紫外線、そして乾燥に耐えられる極限環境微生物。そしてFrontiers in Microbiologyに掲載された最新の研究は、この微生物が宇宙空間の過酷な環境でも生き残れると示しています。

デイノコッカスの乾燥サンプルを国際宇宙ステーションの外壁にあるパネルで3年間曝露させてから地球に持ち帰ったところ、生存している菌体もあったことがわかりました。実はこの実験を行うにあたって実験を率いた東京薬科大学の山岸明彦名誉教授らはデイノコッカスの菌体を「塊」としていたのでした。

今回の研究成果は、特定の微生物は塊になっていれば宇宙空間をまたぐ長旅の間、生存可能であると示唆しています。そのため、この結果が微生物は他の惑星に根付くことができるというパンスペルミア仮説を後押しすると彼らは語っています。この研究は、生命が地球か火星のどちらかの惑星からやってきたというパンスペルミアのシナリオについても論じています。(公平な立場で言うと火星が生命居住可能であったかはまだわかっていません)

最強の微生物 vs 宇宙

2008年、山岸教授らは高層大気中に漂う微生物を見つけるために航空機と大気球を用いました。そもそもデイノコッカス・ラディオデュランスは「ギネス世界記録」に世界で最も放射線に強い細菌として掲載されており、そのサンプルは地上から高度12kmでも発見されています。この微生物が対流圏上部で確認されたことから、デイノコッカスが宇宙の過酷な環境でどうなるのかを理解しようということになったのでした。

「塊」にすると宇宙でも生存できる微生物たち

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日本の油井亀美也宇宙飛行士。実験棟にて
Image: JAXA/NASA

同チームの実験計画はサンプルをISSの曝露部に設置して1年、2年、3年の期間にわたって宇宙空間にさらしておくというものでした。

これにより、研究者らは微生物の長期間にわたる生存曲線の推定と生き残る可能性の評価を行えたとのこと。実験は2015年から2018年にかけてISSの日本の実験棟「きぼう」で実施され、さまざまな厚さの微生物の塊が宇宙にさらされました。

実験結果は、厚さが0.5mm以上だった微生物はどれも部分的に3年間の暴露を生き延びたと示しています。研究によれば塊の表面にいた微生物は死んでしまったものの、それが下にいる乾燥した微生物を保護する殻のようなものをつくっていたとか。

生存期間も長い模様

全3つのサンプルグループの生存データを推定したのち、科学者らは直径1mm以上の塊は宇宙空間で計8年は生存でき、それより厚い塊は15年から45年間は生存できるだろうと外挿しました。

デイノコッカス・ラディオデュランスはいかにしてそのような過酷な環境を生き延びられるのかと問われた山岸教授は「複数コピーのゲノムを有し、DNAへの損傷を修復する能力が高い」からだと語っており、デイノコッカスは水で元に戻された後はそうやって修復しています。

今回の成果は既知の極限環境微生物についてではあるものの、現時点では宇宙での微生物における最大の推定値となりました。特定の微生物はきちんと保護されていれば、長期間にわたって宇宙空間で生き延びることができると示しています。こういったシールドは集合体や石棺のような形を取ることができます。

塊になった微生物が星間移動したかもという仮説へ

この発見からマサパンスペルミアという造語が生まれました。「マサは塊や集合体を意味するので、マサパンスペルミア(マサは塊の意味)は微生物の塊が星間を移動したかもしれないという仮説」だと同教授は語っています。

好奇心を刺激される研究ですが、パンスペルミア仮説そしてマサパンスペルミアをさらに補強するには多くの作業が必要です。理論的には、微生物は火星に移動するには十分なほど長く生存できることになりますが、その主張にはいくつかの但し書きがつきます。

「物体が火星と地球と行き来するには平均して数百万年」と山岸教授は説明しています。「しかし最短の軌道では数カ月や数年で、その頻度はとても低い」とのこと。

ですから、微生物がヒッチハイクして火星へと旅するのは可能ではあるものの、可能性は低いのです。極限環境微生物は最長45年間も宇宙空間で生き延びるかもしれませんが、惑星間の移動と火星への長旅には確実に当てはまるであろう数百万年も生きていられるかはまだわかりません。

(おそらく天体衝突による)激しい宇宙への旅、異星の大気圏への突入時の過熱、異星の地表との衝突を微生物が生き延びられるかといった他の要素を考慮すると、物事はさらに複雑になります。

パンスペルミアは素晴らしい説ですが、多くの物事が起きてなかったら成立しないものです。しかし、もしこの説が事実だと証明できたなら、生命は想像をはるかに超えるほど宇宙に広く行き渡っているということになります。

Source:, Frontiers in Microbiology, Guinness,

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