リビングが、スタジアムにもサーキットにもなる。
去年、我が家に55インチの液晶テレビを導入してやりました。結果的に2019年のベスト・オブ・買い物でしたね。ゲームも映画も、やっぱ大画面っすヨ。
でも、映像に満足すると今度はサウンドを充実させたくなってきたんですよね。そんな話をギズモード編集部の人にしたところ「スゴイものがありますよ」とのこと。どんなブツなのかと聞いたら「ヘッドホンのようでヘッドホンじゃない、シアタールーム製造機と呼びたい代物」だそうで。え、なんぞそれ??
このヘッドホンがシアタールーム製造機?

「ぜひ試してみてください」と送られてきたのがVictor(ビクター)の「EXOFIELD THEATER『XP-EXT1』(以降、XP-EXT1)」。ワクワクしながら取り出してみると、箱型のデバイスとワイヤレスヘッドホンのセットです。これで部屋が7.1.4ch(Dolby Atmosの規格で定められた、床に7本のスピーカー+1本のサブウーファー+天井に4本のスピーカーを設置した仕様)のシアタールームになるんですって。ほんとにぃ?
半信半疑(疑い寄り)な思いを抱きつつ、僕は説明書片手にXP-EXT1のセッティングに取りかかるのでした。

まずは箱型のデバイス=XP-EXT1の信号処理を担うプロセッサーとテレビをHDMIケーブルで接続し、続いて再生機器としてApple TV 4Kをつないでみました。ちなみにXP-EXT1には3つのHDMI入力があり、3台まで再生機器を接続できます。XP-EXT1のプロセッサーがHDMI接続のスイッチャーにもなるわけです。
また、非圧縮のマルチチャンネル音声信号をテレビ経由で伝送可能なeARC機能にも対応していて、4Kモニターや対応外部器機とつなぐとDolby Atmosコンテンツをより一層楽しめます。

機器のセッティングができたら、今度はXP-EXT1のプロセッサーとヘッドホンをケーブルでつなぎます。この2つ、使うときはワイヤレス接続になるのですが、最初だけ有線接続します。なぜか? それにはXP-EXT1ならではの機能がかかわってくるのです。
頭の外にスピーカーを立ててくれる感じです
ここでちょっと、XP-EXT1が持つ頭外定位音場処理技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」についてお話しましょう。僕たちの耳はみんな同じように見えても、同じように音が聴こえるとは限りません。耳や頭の形、大きさは個人によって異なるため、音の聴こえ方はそれぞれ異なります。

EXOFIELDは、この個人の特性を測定し、その人に最適な7.1.4ch仕様の立体音場を再現してくれる、あたかも頭の外にスピーカーを立ててくれるかのごとくヘッドホンの中に音場を作り出してくれる技術なのです。

有線接続したのはこの測定のため。測定には専用アプリ「EXOFIELD THEATER(iOS|Android)」を使用。プロセッサーとヘッドホンをケーブルでつないだら測定を始めます。子供のころにやった聴力テストのような音が聴こえるので、しばし静聴。ヘッドホンに内蔵されたマイクでその音を測定するのですが、耳介の形状はひとりひとり異なるためマイクが拾う音も変わってくるわけです。その特性をもとにアプリ内のデータベースからマッチするデータを抽出し、生成。そのデータをプロセッサーに読み込ませて、立体音場を作り出す仕組み。測定が終わると、測定日時とともに僕の特性データがアプリに保存されました。
この特性データですが、試しに他の人のデータを使って聴いてみると、確かに違って聴こえました。家族でXP-EXT1を使う場合は家族それぞれの特性データを記録しておくとよいですね。 XP-EXT1は最大4人分までの個人測定データを登録できます。驚くほど、他人と聴こえ方が違うことが分かります。
上から音が聴こえてくる感、ハッキリ
接続も完了し、特性データの測定も終わりました。あとはコンテンツを体験するのみ。

まずは、7.1.4chの威力を試すべくDolby Atmos対応コンテンツを体験してみます。ここは音が印象的な作品を楽しみたいので、今年春にデジタル配信が開始された『フォードvsフェラーリ』をチェックしてみました。ル・マン24時間レースをテーマにした映画で、レースカーの音が派手なんですよね〜。

Apple TVで作品をレンタルし、サウンドモードを「CINEMA」に設定してレッツ試聴……

ぬおぉ、音の回り込みが! すごい! 一人称視点でのレースシーンでは、エンジンやタイヤの音が周囲から鳴っているように感じました。

あとすごいなと思ったのが、主人公が飛行機で車のお披露目会場にやってくるシーン。遠くにいる飛行機が観客の頭上を飛び越えて去っていくのですが、音の奥行きや、上から音が聴こえてくる感をとてもハッキリと感じられました。これがEXOFIELDの力……!

どんどん試していきましょう。次はブルーレイプレイヤーを接続し、XP-EXT1購入時に数量限定の初回特典として付いてくる『ボヘミアン・ラプソディ』のブルーレイを鑑賞。ロックバンド、クイーンを描いた映画で、終盤の英ウェンブリー・スタジアムで行われたライブシーンがハイライトです。ここをサウンドモード「MUSIC」で試聴しました。

あぁ! これも分かりやすい。ボーカルや楽器が会場の中で鳴っているものとして感じられます。距離感や残響感、要はライブ感ですね。ヘッドホンでこの鳴りが味わえるのは、ちょっとすごいなぁ。
せっかくなのでEXOFIELDをオフにして、通常のステレオヘッドホンとしても聴いてみましたが、これはこれで声や音楽がストレートに届いて聴きやすいですね。音圧も感じられます。
EXOFIELDをオンにすると圧倒的な立体音場による「その場にいるかのような臨場感」が楽しめる。一方、オフにすると通常のヘッドホンのように耳にストレートに届く音が楽しめる。個人的にはこれ、どっちもアリです。むしろコンテンツによって選んで楽しみたいなと思いました。モード選択も同様です。
ゲームやスポーツ観戦にもいいですよ

今度はPS4をつなぎ、サウンドモードを「GAME」にして『フォートナイト』をプレイしてみました。PS4はDolby Atmosには対応していないですが、もともとバトロワ系ゲームは足音や銃声の方向が聴き取れるよう音に立体感があるので、まずは素直にEXOFIELDオフの2ch(いわゆる普通のステレオ)で聴いてみます。うむ、よい感じですね。
それをEXOFIELDオンで7.1.4chにアップミックスすると……なるほど! 移動時の足音や銃声の広がり方などが「その場で聴いている」感になる。これは没入感が増しますね。
個人的には音の聴き取りやすさでオフの方が好みでしたが、これはぜひ皆さんにも聴き比べてほしいところです。あと、EXOFIELDによる没入感の増しっぷりは、アドベンチャーゲームやレースゲームにもよさそうだと思いました。

最後にFire TV Stick 4Kをつないで、「DAZN」でスポーツコンテンツを鑑賞してみました。サウンドモードは「CUSTOM」に設定。このモードはイコライザーで好みの音質にできるんですよ。また、こちらでもコンテンツ自体は2chのものを、EXOFIELDオンの7.1.4chアップミックスで試したいと思います。さて、どう聴こえるか……

おほー、この臨場感よ! サッカー、野球、テニスと一通りチェックしてみましたが、アツさ5割増しですね。その場で聴こえている感というのは、ライブだけでなくスポーツ観戦においても重要なんだなぁと実感しました。
一方EXOFIELDオフの2chで聴いた場合は、臨場感はほどほどですが実況が聴こえやすくなります。これもゲームと同じで、状況に応じて使い分けするとよさげかも。
ちなみに、最近の試合だと無観客もしくは観客数を絞ったものばかりだったので、歓声が足りないと思って、YouTubeでちょっと前の歓声アリのスポーツ映像もチェックしてみましたが、EXOFIELDをオンにすると観客の中に埋もれるような感覚が確かにありました。歓声がある方が断然よい!
音の「どこでもドア」、EXOFIELD THEATER

ギズモード編集部員いわく「シアタールーム製造機」という「EXOFIELD THEATER『XP-EXT1』」。僕としては、リビングにいながらどこにでも飛んでいける、『ドラえもん』の「どこでもドア」オーディオバージョンのようにも感じました。EXOFIELDをオンにすれば、ル・マン24時間レースのサーキットにも、銃声が飛び交う荒野にも、歓声が湧き上がるスタジアムにも行けてしまう。
XP-EXT1の市場想定価格は約11万円ですが、スピーカーで部屋にDolby Atmos対応の7.1.4ch環境を構築しようと思ったら……ちょっと金額は考えたくないくらいなので、それに比べるとコスパよしと言えます。
ヘッドホンなら夜中でも音量を気にせずコンテンツを楽しめるし、スピーカーに対して正しいリスニングポジションを維持する必要もない。EXOFIELDのオンとオフを切り替えれば、1台のヘッドホンでいろいろな聴き方も楽しめます。
というわけで、我が家の映像コンテンツ体験が大幅レベルアップして、おうち時間が一気に捗ってしまいそうです。マーベル作品とかまだ見てないしなー、あ、昔の映画も見たいなー。時間が足りないぜ!
Source: EXOFIELD THEATER『XP-EXT1』