脳インプラントで、テレキネシス=念力は可能になる?

  • author Daniel Kolitz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
脳インプラントで、テレキネシス=念力は可能になる?
Image: Gizmodo US

テレキネシス、または念力。

goo辞書によれば、「静止した物体を動かすなど、術者が念じるだけで事物に物理的効果を与える現象」。仮にこれが超常現象ではなく、科学技術の力で実際に人が身につけられる力だったとしたら?

4人の専門家に聞いてみたところ、答えは全員YESでした。


脳内インプラントを使ってモノは動かせる。問題はノイズだ

Bradley Voytek(カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授。Halıcıoğlu Data Science Institute所属、神経科学の大学院課程を指導)

非常にアカデミックな答えをするならば、ほとんど可能です。

テレキネシスが成立するには、われわれの脳波を読み取ってそれらの電気的な信号を変換し、現実世界での現象につなげる必要があります。脳波をたくさん読み取れば読み取るほど、その現象をより精密にコントロールできるようになります。

しかし、わたしたちが一度にどのぐらい意識を分散させられるのかが最初のボトルネックとなるでしょう。片手でお腹をさすりながらもう片方の手で頭をポンポンたたくことすらできない人もいるんですよ!そう考えると、たとえ脳インプラントの技術が飛躍的に進んで、将来それを使ってテレキネシスのようなことをできたとしても、一度に野菜を千切りにして、飲み物をグラスに注いで、メモをしたためることができるようになると考えるのはちょっとおこがましいですね。

それにエンジニアのみなさんにとっては残念なことに、ニューロンを含めた生物の営みはコンピューターにとって非常にノイズが多く、そこから信号を読み取ることは極めて難しいんですよ。ノイズレベルが高ければ高いほどデバイスのコントロールは効かなくなりますから。もしノイズもひっくるめて脳が出している電気信号すべてを現実世界の現象に変換してしまうデバイスがあったとしたら、意図せずともランダムな現象が起きてしまって最悪だと思います。

では、テレキネシスの定義を変えてみたらどうでしょうか。もしもそれが「体で直接触れずともモノを動かせる」ことだとすれば、はい! 現時点ですでに脳インプラントを使ってできますよ

もっと言えば、脳インプラントなしでもできます。すでに市場に出回っているおもちゃなどで、脳内の860億個ぐらいあるニューロンから電気的な信号を読み取れる帽子をかぶれば、小さなロボットかなにかを前進させたり後退させたりできます。というか、こんなことはもう数十年も前から可能でしたよ。

でも、質問されているのはこういったことではないですよね。おもちゃの車をヘンテコな帽子をかぶりながら行ったり来たりさせるんではなくて、もっとX-MENのジーン・グレイみたいに視線を投げかけるだけで何かを空高く吹っ飛ばしたりだとか、そういった精神の力を司ったアクションのことを言ってるんですよね。

だったらいっそのこと派手なのがいいですね、アイアンマンのアーマーみたいな。あのアーマーはトニー・スタークの脳と神経インターフェースを介して直接つながっているんですよ。

まあ、これは憶測に過ぎませんが、仮に私たちの脳にたくさんの小さな脳インプラントを植え込んだとしたら、一度に脳波信号を大量に読み取ることができるわけです。たくさん読み取れれば読み取れるほど、コントロールがより精密になる。ドローンの大軍をあなたの脳内でコントロールできるかもしれません。ひとつひとつのドローンをコントロールして、物を運ばせたり、あなたの周りを飛びまわらせたりできる。

「これぞテレキネシス!」って感じがしますけど、それでもやっぱり脳のノイズが干渉してしまうことは避けられません。ですから、技術的に優れた脳インプラントの開発と同時に、ノイズに干渉されないようなもっと賢いコントロールの方法も探さないと。

充分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない

Andrea Stocco(ワシントン大学心理学准教授。Institute for Learning and Brain Sciences (I-LABS)と、Cognition and Cortical Dynamics Laboratoryを兼任)

「テレキネシス」が何を意味しているのかによりますね。

アニメによくあるパターンで、「精神の力のみを使ってなんの力学的なエネルギーも電磁作用も介さずに物体に物理的な力を及ぼす」ことを指すのだとしたら、テレキネシスは物理学の領域を逸脱しています。

一方で、もっとありふれた例をお探しならば答えは違います。電波や通信回線を通じてロボットアームを遠隔操作したり、カーソルや通話アプリなどのソフトウェア内に組み込まれたオブジェクトをコントロールするのも「テレキネシス」なのであれば、これらすべてのことは脳インプラントを使えば確実に可能です

確実、と申し上げたのは、これらすべてのことがもうすでに実行済みだからです。

Andy Schwarzはサルや人の体に電極アレイを植え込んでロボットアームをコントロールすることに成功していますし、Rajesh Rao(訳者注:本稿の3人目の回答者)はロボットアーム、さらには独立したロボットの動きをコントロールできる脳波計インターフェースを開発しています。Miguel Nicholelisはパワードスーツを制御する脳波計インターフェースを開発しており、半身不随になった患者がパワードスーツを着用することで歩けるようになったり、サッカーボールを蹴ったりできるようになることを実証しています。これらのテクノロジーはまだまだ改善の余地があるものの、明らかにポテンシャルがあります。

「テレキネシス」というと魔法のように聞こえますけど、イギリスのSF作家、アーサー・クラークの言葉を借りるならば「充分に発達している科学技術は、どれも魔法と見分けがつかない」のです。

それに、先述のアニメで見るような類のテレキネシスは物理的に不可能だとしても、その技術的な応用として脳インプラントとワイヤレスシグナルを介して物体を遠隔操作することはすでに可能です

人とIoTがつながる世界

Rajesh P. N. Rao(ワシントン大学教授。専門分野はコンピューター科学・コンピューター工学・電気工学。Center for Neurotechnology共同ディレクターを兼任)

ブレイン・コンピューターインターフェース(BCI)と、作動装置を内蔵したオブジェクトと、BCI、もしくはインターネットに無線でつながっている環境があれば、テレキネシスは可能です

実際、2006年にはわが研究室において非侵襲性のBCIを介したロボットの遠隔操作に成功しています。

Video: uwneuralsystems / YouTube

また、近年では人の脳内に直接植え込まれたインプラントを使ってロボットアームを制御する実験も成功しています。

Video: UPMC / YouTube

世界が「モノのインターネット(IoT)」に近づくとともに、今後そう遠くない未来には人間がIoTデバイスとつながり、制御できるようになるBCIが開発されるでしょう

どんなコンピューター制御された装置にも脳からアクセス可能に

Stephen Heims Tillery(アリゾナ州立大学准教授。神経科学者。いかに脳が知覚情報を用いて熟練した手の運動課題の制御を学んでいるかを研究)

「テレキネシス」が体の筋肉を使わずに物体を動かすという意味であれば、ええ、もちろん、もう20年前に実現していますよ。こちらはサルが思考のみを使ってロボットアームを動かしている様子です。

Video: lastnight / YouTube

こちらは人が同じことをやっているほんの一例です。

Video: Brown University / YouTube

さらに遠い距離から物体の動きを脳波で制御するのであれば、それもすでに実現しています。こちらは脳波を使ってドローンを飛ばしている様子です。

Video: Paul Strohmeier / YouTube

これらの研究から見えてくるのは、ブレイン・コンピューターインターフェース(BCI)を活用すれば、コンピューター制御されているあらゆる装置に私たちの意思で影響力を及ぼすことができるということです。

神経工学の観点から現在研究が進んでいるのはロボットアーム、パワードスーツ、車両、車いすなど。これらは至極自然なことで、BCIが失われた人間の体の機能を補うことをメインとしているためです。これら以外のものがBCI研究の対象となったことはこれまでほとんどありません。

BCIが物理学の法則を無視することはできませんが、遠距離操作が可能なテクノロジー全般を使いこなすための直接的なインターフェースとして可能性を持っていることは確かです。現時点での研究課題は、脳とコンピューターをつなぐインターフェースの開発そのもので、イーロン・マスクが巨額を投じているのはここです。もうひとつの課題としては、脳が発する電気信号をどのように使ったらほかのデバイスをコントロールできるようになるかです。

どのようなデバイスをコントロールできるようになるか、それはあなたの想像力におまかせします。

Reference: goo辞書

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