ソニーが発表した「空間再現ディスプレイ」からは3Dコンテンツと夢が飛び出てくるんですよ!

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  • author かみやまたくみ
ソニーが発表した「空間再現ディスプレイ」からは3Dコンテンツと夢が飛び出てくるんですよ!
3Dモデルが! すごい解像感で! 飛び出すんだってば! Photo: かみやまたくみ

よーく見て!

ソニーが空間再現ディスプレイ(Spatial Reality Display、以下SR Display)という新しいタイプのディスプレイを2020年10月31日に発売すると発表しました。さっそく体験してきたのですが…やばいよこれ、ディスプレイから3Dモデルが飛び出してくる!!

上の写真はSR Displayによる空間再現体験を奇跡的に捉えた1枚です。よーく見ると、カニの脚がディスプレイから飛び出ているのがわかるでしょうか? ディスプレイの表面とカニの脚の位置関係が微妙におかしくなっています。動画でもご覧ください。

Video: ギズモード・ジャパン/YouTube

このSR Displayは10月16日(金)からソニーショールーム/ソニーストア 銀座で展示されています(ほかのソニーストアでも展示予定あり)。気になった人は実際足を運んで試してみてください。変な声でると思いますよ…。

ソニーが作った裸眼でVR/3D体験ができるディスプレイ。解像感にびびる

ふつうならVRヘッドセットや3Dメガネなどが必要になる立体的なコンテンツ体験。それを裸眼で可能にするのがSR Displayです。ぱっと見はこんな感じのディスプレイです。

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PCとつないで使うディスプレイです。この写真では3Dコンテンツをふつうに(平面的に)表示しています
Photo: かみやまたくみ


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オプションパーツ類(同梱品)を外すとこんな感じ。PCから出力される映像が映ります。そこは一般のディスプレイと同じ
Photo: かみやまたくみ


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中央上部にあるのが「高速ビジョンセンサー」。SR Displayの前にいる人の顔と視線をトラッキングします(重要)
Photo: かみやまたくみ


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ディスプレイの表面には「マイクロオプティカルレンズ」が高精度に配置されています(重要)。マイクロオプティカルレンズは「左の目用の絵」と「右目用の絵」を同時に送り出せる極小のレンズです。VRヘッドセットのようにディスプレイを左右にわけるのではなく、送り出す光情報を調整するというアプローチ
Photo: かみやまたくみ


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ディスプレイ部は45度ほど傾斜しています。これがいちばん見やすいからだそうです。ディスプレイ裏にはスピーカーも搭載
Photo: かみやまたくみ


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背面にはソニーのロゴ。電源コネクタ・HDMIポート(映像入力用)・USB-Cポート(高速ビジョンセンサーのトラッキング情報をPCに転送)がケーブルマネジメント用の穴からのぞいています
Photo: かみやまたくみ


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上部には電源・メニューボタン・音量ボタン。本体は金属製で、表面仕上げはマット感あり。高級感すごいです
Photo: かみやまたくみ


ソニーによる利用イメージ図はこんな感じ。PCにつないで3Dコンテンツを表示すると、それがディスプレイから飛び出すように(立体的に)見える、という特殊なディスプレイなんです。コンテンツのほうがこちら側(現実世界)にきてくれる感じで、VRヘッドセットとは完全に別物です。

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Image: Sony

SR Displayでは4K 60Pでの3D/VRコンテンツ表示が可能です。目の前に飛び出してくる3Dコンテンツの解像感はすさまじく、質感表現もすばらしいです。自分の網膜上で直接映像が再生されているかのようなクリアさで、自分がこれまでに体験したどのVRヘッドセットよりも美しい立体映像でした。3Dの受肉具合が3段階くらい進んじゃった感じ…。

プロのVR/3Dコンテンツクリエイター向けの特殊な製品

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Unity・Unreal Engine 4にSDKで対応(高速ビジョンセンサーで取得したユーザーの顔の位置・目の位置を受信して、それに合わせた映像信号を出力する)
Image: Sony

残念ながら、現状で立体的に表示できるのはUnity・Unreal Engine 4(3D/VRゲーム開発ソフトウェア)上で製作しているコンテンツのみ。一般のゲームなどには使えません。SR Displayの想定ユーザーはゲームクリエイター・3Dクリエイター・モデラー等々のVRや3Dを扱うプロフェッショナルで、製作中コンテンツのクリエイティブチェックなどに用いるように作られています。ショールームでの展示(カーディーラーで新車を見せるとか)も用途として想定されています。要は業務用ですね。市場想定価格は50万円。ソニーとしても「出してみよう」という感じの、チャレンジングな立ち位置の製品なんだそうです。

とはいえ、デモの中にはキャラクターがライブをしたり、360度カメラから作成したリアルな人物モデルが動き回るといったものもあり、価格が落ちて対応ソフトウェアが広がるなどすれば「推しを自分の間近で思う存分眺める」みたいな使い方もできそうな感じでした。夢がすごいある!

クリエイターいわく「実在感ある世界を気軽に体験してもらえる」

現状では専門的な製品なわけですが、想定ユーザーであるクリエイターの方がSR Displayを使ったらどう感じるんでしょう? 幸い、SR Displayの開発に協力し、試用してフィードバックなどを行なっていた、ゲームクリエイター・佐々木瞬さんに既存VRデバイスとのちがいやSR Displayの利用感、その発展性についてお話をうかがうことができました。

佐々木さんはどんな体験を与えられるかを意識してお仕事をされているそうで、SR Displayについても体験を与えるツールとしてどんな性質を持つかに注目して利用されていたようでした。

佐々木瞬(ささき・しゅん)

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Image: 株式会社ヒストリア

Unreal Engine専門のソフトウェア開発スタジオ・株式会社ヒストリア 代表取締役、プロデューサー/ディレクター/エンジニア。SR Displayが対応するUnreal Engine 4でゲーム制作および自動車・建築・放送等のエンタープライズ向け3D/VRコンテンツの制作を行なっている。

── SR Displayを体験したときに解像度の高さにとても驚きました。SRDの大きな特徴だと思うのですが、いかがでしたか?

佐々木:私も驚きました。この手のデバイスであそこまで解像度の高いものってなかなかありません。解像度は高ければ高いほど情報量が増え、質感や明暗差が綺麗に出ます。現実っぽくなるのでしっかりと仮想世界に引き込め、与えられる感動も大きくなります。かなりハイスペックなPCが必要になるという面もありますが。

── 既存のVRデバイスとSR Displayにちがいは感じられましたか?

佐々木:SR Displayでは、VRで感じられる没入感や「そこにある」という事実感を、VRヘッドセットなどを被らずに実現できます。

ほかの人との体験の共有も格段に容易です(編注:SR Displayも一度にコンテンツを体験できるユーザーはひとりですが、別な人がSR Displayの前に立って見るだけで「体験のバトンタッチ」が可能です)。VRでもできなくはありませんが、コロナ渦でできた人との接触を回避する習慣が定着するとほかの人が着用したVRヘッドセットを別な人に気軽に勧めにくくなるという懸念が、特にエンタープライズの商業向けVRではあります。その点、SR Displayは時代にマッチしていますね。お店に置いてあってあったら「ちょっと見てみよう」と思ってもらえる気がします。

── 提供できる体験やその製作面にもちがいはありますか?

佐々木:VRは、仮想世界を作って「ちょっとした遊び」を用意するだけで楽しいという強みがあります。動き回れて、何かつかめて、投げられるというだけですごい体験なんですね。ただ、VRは自由すぎて難しい面もあるんです。世界に入るとみんな感動しちゃって見回しちゃう。見て欲しい方向を向いてもらうだけでも大変です。体験としてはいいんですが、作る側としては毎回苦労します。

一方で、SR Displayでの体験ではユーザーは現実世界にいるんですよね。SR Displayでもオブジェクトを覗けたりはしますが、VRとは異なり360度の体験ではありません。SR Displayで表示されるのは画角60度程度なのですが、その分作り込めます。VRだと背後などもぜんぶ作り込まないといけません。

またSR Displayには「コンテンツ内で演出ができる」という特徴もあります。VRの弱点としてカメラが奪われている(ユーザーの頭の位置に固定されている)というのがありまして。たとえば、ホラーハウスにだんだん近づいていって、最後は煽りでおどろおどろしく見せるとか、カメラワークで演出することができません。

── SR Display用コンテンツにはVRとはちがった未来がありそうですね。

佐々木:SR Display用のコンテンツは覗き込む体験になるので与えられる体験はVRよりライトにはなると思います。テレビの延長でかつVRの体験を取り入れている、といった理解の仕方をしていますね。VRはテレビの延長にはなく、別の進化の系譜を辿っていると思います。

それぞれに価値があるのではないかと。ディズニーランドにはすばらしい体験があるけれど、街のゲーセンで遊ばないかっていうとそうじゃない、UFOキャッチャーも好きだよね、みたいな。

── SR Displayの利用シーンとしてコンテンツのクリエイティブチェックがあるとのことですが、お話をうかがっているとそういった利用の仕方よりも「コンテンツを見せるデバイスとしてのSR Display」に魅力を感じられているように思いました。

佐々木:エンタープライズ向けのお仕事で3D/VRに慣れていない方と製作コンテンツのレビューをするときに生きるかも、という気がしています。以前、バーチャルモデルルームを作るお仕事を受けたときに、現場の方に作ったものをチェックしていただいたら「設計通りだけどここはちがうね」「もっとこうしたほうがいいね」といった指摘を受けて議論が始まってしまったことがあります。うちとしてはやめてくれ、もう変えないでくれという感じでした(笑)。

そのときはモニターで見ていただいていたのですが、モニターには視差がないため、正確にパースを合わせることができません。距離感などが合っていない画像を見ることになるんですね。SR Displayだと見る人の顔や目に合わせて調整してくれ、距離感も表現できます。正確に見てもらうことができます。模型の代わりに使うような感じです。こういった点には価値があると思います。

── ありがとうございます。VRとはまた異なる立体的な体験を提供する可能性を秘めた製品なんですね。


可能性を内包しつつも将来は未知数、でもクリエイターを刺激する製品。テクノロジーで世界(SR Displayの場合はコンテンツ体験)を変えていこうという情熱をひしひしと感じます。すでに成功したメーカーであるソニーがそうしたものを世に問うてくる、という図式にはかなり感動しました。今後SR Displayが市場に受け入れられていくかはわかりませんが、成功して“PlayStation SR”とかでてこないかな、などと思ってしまいました。

Source: Sony

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