バッテリーも、内臓チップも、ワイヤーもなし!
ワシントン大学の研究によれば、電源なしでスマホやコンピュータを操作できるプラスチック製デバイスが完成したといいます。一体どんな仕組みなのでしょうか?
ラジオ信号を活用した先行研究
FMラジオをハイジャックして他のメッセージを流す「後方散乱」と呼ばれる手法を利用してFMラジオ信号をハイジャックして放送する、という数年前の先行研究をベースに、 Paul G. Allen School of Computer Science & Engineeringの研究者らはIoTデバイスをさらに簡易化。
薄い銅テープのアンテナと小さなコイン電池で動く電子機器を備えたシンプルなポスターをアップグレードすることで、FM無線局からの強力な信号を反射・変更し、新しいオーディオ信号を導入する仕組みを完成させました。この信号はスペクトルの近くで未使用のエリアに存在するため、ラジオを持っている人なら誰でも元のFM信号、さらにはハイジャック放送を聞くことができたとか。低消費電力でFM局が稼働するかぎり何年にもわたり放送が可能でした。
今度は、Wi-Fiに注目!
そのアイデアをさらに推進したものが、今回の研究。FM電波塔からの強力な信号を操作する代わりに、ほぼすべての家庭や事業所にあるであろうWi-Fiネットワークを使います。研究者らは、既製の3Dプリンタやフィラメントを使ってシンプルなボタンやスライダーから高度な風速計まで、ありとあらゆるデバイスを作成。アンテナとして機能させるために、銅やグラフェンが埋め込まれたフィラメントから作られた導電性のある素材も使用しています。
ノイズを理解するメカニズム
たとえばプラスチック製の風速計の場合、風でコイルスプリングと連動するプラスチック歯車を回転させます。Wi-Fi信号を吸収・反射するアンテナを断続的にアクティブ / 非アクティブにして、別のデバイスでバイナリメッセージのようにデコードできる新しい信号を生成。この反射の回数を制御・調整するメカニズムは具体的に設計でき、受信側でソフトウェアを開発して、ノイズのように見えるものを理解することさえできるとか。
そのほかにも、室内で跳ね回っているワイヤレス信号を反射させるだけで近くのスマートフォンやコンピューターの動作をリアルタイムで制御できるシンプルなボタン、スクロールホイール、スライダーも3Dプリントで作成することができたといいます。
IoTの課題のひとつは(もちろんセキュリティ上の懸念もありますが、そのほかでは)単純なデバイスでも電源が必要なこと。充電やバッテリー交換が必要なデバイスが多数あるなかで、今回のアプローチは電源を必要としないテクノロジーとして将来的な活躍が期待できそうです。