Apple税15%減税がかすめもしない大手のリアクション

  • 7,640

  • author satomi
Apple税15%減税がかすめもしない大手のリアクション

App Storeの売上の95%を担うのは2%の大手デベロッパーSensor Tower調べ)。

それなのにApple(アップル)が手数料率を来年から30%から15%に切り下げるのは、年商100万ドル(約1億円)未満の中小デベロッパーだけで、「おれたちはかすめもしないじゃねえか」と大手が怒ってます。各社のリアクションを見てみましょう。

手数料の軽減基準

…とその前に軽減措置の中身ですが、これはコロナで苦しむ中小を助けるApp Storeスモールビジネスプログラムの一環で行なわれるもの。対象は、Apple手数料を差し引いた後の全アプリの売上高が前年100万ドル(約1億円)未満のデベロッパー(原文では「未満」)です。アプリ販売売上とアプリ内課金の両方の手数料が1年間15%になります。

年末100万ドルに届きそうな企業はブレーキ急停止。もう届いちゃった企業はええええーっと泣いてる頃かもしれませんね。

Epic Games

Apple手数料込み価格の並行表記で人気ゲームの『フォートナイト』が削除され、手数料減らしのムーブメントを展開中のEpic Gamess社Tim Sweeney CEOは「デベロッパーを2つに引き裂いて、ストアと決済の独占を続ける計算ずくの措置。全デベロッパーを平等に扱うという約束は空約束だったのかと思うと、あんまり手放しでは喜べない気分。これからも大多数のアプリ内課金は30%のままだし、Apple税込みの割増価格を消費者が負担する現実は変わらない」と微妙な胸中を声名で明かしています。

Spotify

競合関係にある楽曲配信のアプリ内課金でAppleとずーーーっと争っているSpotifyもこんな手厳しい意見。

今回の措置を見れば、App Storeのポリシーがいかに一方的で場当たり的なものかがよくわかる。Appleは手数料が割高で不公平なだけでなく、自社の決済システムをApp Storeとバンドルし、その利用を拒むデベロッパーを連絡の蚊帳の外に置く。だからSpotifyのようなアプリはAppleと競合するサービスの展開で圧倒的に不利な立場に追いやられる。[...]Appleのこのような「粉飾」的な動きは無視でいいので、当局には消費者の選択の自由を守り、公正な競争の保全、全員参加の場を早急に整備されることを期待したい。

Match Group

デートアプリTinderの開発元Match Groupも怒りを隠しません。

Appleの反競争的で独占的なふるまいはもはや過去の例を持ち出すまでもないだろう。Appleに「デジタル製品・サービス」業種とにらまれたら最後で、デベロッパーはAppleの決済システムの利用を強要され、売上の15%のみならず顧客情報のコントロールまで奪われてしまう。しかも経営努力で売上がやっと100万ドル(約1億円)の大台に達すると、今度は手数料が2倍に引き上げられてしまうのだ。これでは成長軌道を維持することさえままならない。

アプリ公正性のための連合

フォートナイト裁判の動きを受けて以上の3社らが中心となって立ち上げた「Coalition for App Fairness(アプリ公正性のための連合)」は、9月の結成後、加盟企業の数が2倍に増えています。中小デベロッパーが15%の手数料減額対象になるということで、心配されるのは求心力が削がれることですが、次の声明を発表して結束を新たにしました。

AppleがポリシーをApp Store原則に準じる内容に改正し、公正なエコシステムを実現するまでは、これまでどおり世界中のデベロッパーが一丸となって闘っていく。

まあ、連合的にはApple税の減税より決済サービスのApple独占を止めることのほうが実は大きな目標だったりしますからね。

Hey開発者DHH氏

『フォートナイト』ほど注目はされなかったけど、今年は次世代メール「Hey」の削除も大きな話題になりました。

開発元はシカゴのBasecamp。修正パッチを配信しようとしたら、「登録と決済がサイト経由なので、アプリ内課金を実装しないと配信できない」と言われて、共同創業者兼CTOのDavid Heinemeier Hansson(DHH)氏が「30%もApple税払うぐらいなら自分で家ごと焼き払ってやる」と激怒した事件。欧州委員会がApp StoreとApple Payを独禁法違反で調査に乗り出した、まさにその日の出来事でした。

すったもんだの揚げ句、アプリはAppStore審査ガイドライン3.1.1.のApp内課金条項違反で削除になって、Appleは削除通知をBasecampより先にマスコミに流すというオマケつき。「長年多くのアプリを開発いただきましたが、この8年間、AppStoreの売上には一切貢献していただいていません」という審査部からのメールがWWDC直前に拡散したのは記憶に新しいところですけど、そのDHH氏は今回こう連続ツイートしていますよ

AppStoreに異議を唱える人を2つに分けて、大手デベロッパーについては、欲に切りがない会社というレッテルを貼ろうとしている。巧妙だね。

100万ドルの15%は15万ドル(約1560万円)。それだけあれば社員2人雇って、クレジットカード決済手数料払ってもまだ釣りが出るだろう。15万ドルだよ、15万ドル! 前の30万ドルよりは安いが、こんなに巻き上げて中小支援のチャリティと言われてもね。

「AppStoreのルールは全員平等」なんて所詮はただの絵空事なのか。

国会の動き

各社個別の裁判も気になるところですが、もっと気になるのは、米下院反トラスト法調査委員会の動きです。10月6日にまとめた450ページの報告書には次のように書かれていて、Appleの旗色はあまりよくありません。

(ソフトウェア&サービス事業拡大に向け)AppleはApp Storeでコミッションと手数料を徴収している。競合不在の環境で、AppleはiOS端末へのソフトウェア配信に対する独占的権限を有し、アプリデベロッパーの質とイノベーションを低下させ、消費者が負担する料金を上げ、選択の幅を減らしている。

Appleの今年のApp Store手数料収入は439億ドル(約4兆5600億円)。うち403億ドル(約4兆1860億円)はたったの1500社から得たもので、そちらはこれからも30%のまま。不公平感が増すぶん、さらに旗色は悪くなるのではないかと言われています。決済独占を止めるのは、そちらが先かもしれません。

訂正[2020/11/24]誤字を訂正しました。
Sources: The Verge

    あわせて読みたい