元祖AppStoreは忘れない。脱獄アプリストアのCydiaが地獄の淵からApple再提訴

  • 10,262

  • author satomi
元祖AppStoreは忘れない。脱獄アプリストアのCydiaが地獄の淵からApple再提訴
Image: Jay Freeman @saurik / WP

脱獄界の盟主Saurikが久々に躍動。

AppStoreの独占的な商慣行が議会や法廷で問題になるなか、うちもやられたよ! と元祖アプリストアのCydiaがApple(アップル)を再提訴しました。

提訴は2008年に次いで2度目なのですが、Epic GamesMicrosoft(マイクロソフト)Basecamp、Spotify、Facebookなどが続々と反旗を翻すのを見るにつけ、元祖としても黙っていられなくなったのだそう。北カリフォルニアの裁判所に提出した訴状のなかで「Cydiaは反競争的手段により、Appleに倒産寸前まで追い詰められた」と改めて訴えました。

なんかやっぱり重みが違いますよね。だってAppStoreにいじめられたというレベルじゃなくて、AppStoreのアイデアそのもの、持っていかれた大御所なのだから

Cydiaって何?

今でこそAppStoreはAppleの専売特許と思われていますが、iPhoneはもともと純正アプリだけの携帯でした。初代のキラー性能は「すばやい通話」とYouTubeで、コピペはおろかゲームすらできず、非純正アプリなんて論外のまた論外。スティーブ・ジョブズ自身、「外部デベロッパーはWebアプリ配ればいいんじゃね?」というスタンスだったのです。

2007年のWWDCで「デベロッパーはWebアプリを自由に開発できる。SDKも要らない」とアピールするジョブズ(0:25~)
Video: PCWorld/YouTube

でもそれじゃつまらない。そう考えたサードパーティーのデベロッパーがiPhoneをJailbreak(脱獄)して管理権限を手に入れ、思い思いの改変やアプリを脱獄アプリストア「Cydia」(2008年2月登場、Cydiaはりんごに巣食う虫)で配布をはじめます。

この流れをつくったのが、当時サンタバーバラでコンサルタントとして働いていたソフトウェア開発者のSaurik(本名Jay Freeman)です。これが大きなムーブメントとなってiPhoneの売上にも貢献したから、Appleも無視できなくなってAppStoreを立ち上げSDK公開に踏み切り、デベロッパーに拍手喝さいで迎えられて今に至るというわけです。

AppStoreの発展とCydiaの凋落

AppStoreのビジネスモデルを考えたのもCydia。ムーブメントを広めたのもCydia。初期のiPhoneなんてコピペすらできなくブーイングの嵐でしたが(ギズモードも日々コピペウォッチングで、「カット&ペーストに関係するとされるコマンドが確認された」なんて小ネタまで追っていた)、脱獄すればコピペも普通にできたんですね。Washington Postによれば、Saurik自身、コピペできないスマホなんてありえねーと同僚のiPhoneボロカスに言って、だったら自分で開発しろよって周りに説得されて、やってるうちに脱獄界の中心人物になっていたようです。最初からコピペできたらiPhoneも今ごろつまらない電話で終わっていたかもしれませんよね。

こうしてコピペ、ゲームなどのキラー目当てでiPhone買う層が増え、2009年8月にはCydiaは利用者が400万人(iPhone&iPod touch全利用者の1割)に達したのですが…。

地ならしがすっかり終わったところで、公式のAppStoreが現れて、キラーな機能やアプリのおいしいところは全部どり(コントロールセンター、通知機能バブル、HOMEから直接SMSに返信できる機能はすべてCydia生まれ)。デベロッパーの囲い込みがはじまり、脱獄界は規約違反の日陰者として成果はおろかその存在すら認められぬまま、A12チップ登場で脱獄の穴も無茶苦茶塞がれ、闇に葬り去られていったのでした。

特にCydiaは2011~2012年の1000万ドル(約10億円強)をピークに運転資金も底を突き、脱獄コミュニティもかつての熱狂が失われ、まとまりを欠いていきます。ちょっとした手柄があれば横取りされ、ちょっとした落ち度や遅れがあれば集中攻撃を受け、有能なジェイルブレイカーはAppleセキュリティ部門に雇われ、今日の友が明日の敵。精魂尽き果てていったと、Saurikほどの人がブログで長文書いてて、なかなか切ないものが…。

Cydiaは裁判で「Appleによる違法なiOSアプリ販売独占がなかったら今ごろユーザーは好きな方法でアプリを探して入手できただろうし、デベロッパーもアプリ配信会社を自由に選べたはずだ」と主張しています。裁判の行方はわからないけど、現にこうして訴えてくれたことで過去を別の角度で見れますね。弁護を務めるのは、Samsung(サムスン) vs Apple特許バトルを担当したQuinn Emanuelです。

昔のことがうまくイメージできない世代のみなさまは、iOS発展史の動画で流れを俯瞰できますよ。なつかしいビジュアルとトリビアが満載です。

Video: Apple Explained/YouTube

Sources: Washington Post, @saurik

    あわせて読みたい