背筋が凍りつくような光景。
壊滅的な崩壊を免れないと予見されていたアレシボ天文台の電波望遠鏡が、とうとう崩壊してしまったのは現地時間の12月1日午前7時55分頃でした。
反射鏡上に吊られていた900トン級のプラットフォームがケーブルもろとも落下したと同時に、プラットフォームを支えていた支柱3本の先端部分も折れて落下し、反射鏡に直撃したとみられています。
早朝だったため、また事故当時は反射鏡周辺に立ち入り禁止令が敷かれていたために、人的被害がなかったのは不幸中の幸いでした。
この崩壊が意味するものは、アレシボ電波望遠鏡の死です。現在アレシボ天文台の運営を任されている全米科学財団(NSF)が事故後の調査を行なっている最中ですが、そのNSFからこんなショッキングな映像が届きました。
なんておそろしく、なんて哀しい光景…。
これ以上老朽化に耐えきれなくなった望遠鏡が、まるで運用停止が言い渡されて人影が消えたことを確認してから自ら崩壊する決断をしたかのようにも感じられる、あっけなくて潔い最期でした。
最初の映像はアレシボ天文台の管制塔から撮影したもので、差し迫った崩壊を危惧して最近設置されたものだったそうです。
続く2本目の映像はなんとドローンが捉えたもの。ちょうどタワー4の点検を行うためにプラットフォーム近くの上空をホバリングしていたところで最初のケーブルに亀裂が生じました。
プラットフォームを支えるメインケーブルは全部で4本あったはずですが、映像で3本しか確認できないのは(上の白い一本はメインケーブルではないので除く)、一番手前のメインケーブルがすでに11月初旬に落下してしまっていたから。各ケーブルは170本のワイヤを束ねてあるそうで、その一本一本が勢いよく弾かれて断線していく光景は胸をえぐられるようです。事故当時ここに誰もいなくて、本当によかった…!

なお、アレシボ天文台ビジターセンターは奇跡的にも倒壊を免れたとの朗報も届いています。
1963年に建設されて以来、57年の長きにわたって科学の発展に貢献してきたアレシボ電波望遠鏡との壮絶なお別れ。とはいえ、天文台自体は存続していきます。これで終わり、ではなく、今後NSFがどのようにアレシボ天文台を再建・運営していくのかにも注目していきたいところです。