3年近くも地球のまわりを飛び回ってた「ミニムーン」の実態が明らかに

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
3年近くも地球のまわりを飛び回ってた「ミニムーン」の実態が明らかに
Image: Catalina Sky Survey via Gizmodo US

月や、国際宇宙ステーションや、人工衛星や宇宙ゴミ以外にも地球のまわりを回っているもの、なーんだ?

答えは「ミニムーン」。正確には「一時的捕獲天体(TCO: Temporary Captured Orbiters)」と呼ぶそうで、いずれは地球の重力圏を離れ、太陽のもとへと飛び去ってしまう自由奔放な流れ者です。

人類初のミニムーンは14年前に発見された小惑星2006 RH120でした。そして今年の2月15日には、アリゾナ大学のカタリナ・スカイサーベイが観測史上ふたつめのミニムーンである小惑星2020 CD3を発見。上の静止画からも見てわかるようにとても小さな天体で、当初は幅約1.9~3.5 メートルと推測されていました。

今までたったふたつしか観測されていないとなると、ミニムーンがさぞレアな天体かのように思われますが、単に見つけるのがむずかしいだけなのだとか。

ハワイ大学の天文学研究所(Institute of Astronomy)が発表したところでは、地球の大気圏内で燃え尽きる隕石のうち、1000個に1個はかつてミニムーンだったと推察されるそうです。ですからミニムーンが地球を周回していること自体はそんなに珍しくないものの、サイズが極端に小さいのと、周回軌道が不安定なのとで、見つけ出すのが非常にむずかしいそうなんです。

ちなみに、もしミニムーンが地球に堕ちてきたとしても、小さすぎて地表にはなんら影響を及さないそうなのでご安心を。

宇宙ゴミではなかった

Image: Javier Roa Vicens via Gizmodo US

小惑星2020 CD3は2月に発見された時点ですでに地球から遠ざかっていたため、もはや観測することができません。しかし、このふたつめのミニムーンについてはこれまで多くの天文学者が熱意を注いできており、その集大成としてこのたび14の研究機関から23人の著者が共同で研究論文を発表しました。

国際天文学連合の小惑星センター(MPC)が2月に電子ジャーナルですでに初期見解を発表しているのですが、今回の論文はさらに詳細な内容となっています。

まず今回の論文で明らかになったのは、2020 CD3が宇宙ゴミ(スペースデブリ)ではないということ。発見当初は人工衛星の破片や使用済み燃料タンク、その他もろもろの人工的な物体かもしれない疑念が払拭できませんでしたが、その後の観測により2020 CD3の面積質量比(AMR:スペースデブリを分類するために使うパラメータ)と光度の低さから、この物体がケイ酸塩を主成分とするS型小惑星であると確認できたそうです。

なんと、去る9月にも別のミニムーンらしきものが発見されたそうなのですが、こちらはNASAが1966年にローンチしたCentaurの第2ステージロケットであることがほぼ確定したのだとか。残念ながら、宇宙ゴミだったんですね。

思ったより小さかった

ほかにもわかったのは、2020 CD3が当初考えられていたよりもやや小さめだったこと。最終的には幅1.2メートルぐらいだと考えられるそうで、これって地球上にざらにある岩石サイズですね。意外と小さかったことから、もともと火星と木星のあいだのどこかから飛来した小惑星が、なにかの拍子に砕け散ったあとの破片だとも考えられるそうです。

論文の共著者である国際天文学連合のRobert Jedicke氏は、「現代の天体望遠鏡の性能は素晴らしいですよ。岩石サイズのミニムーンを月と同じぐらいの距離から観測できるんですから」とハワイ大学のリリースにコメントしています。

2年半もステルスモード

サイズに加えて、小惑星のこれまでの動きもより明確になりました。わかったのは、2020 CD3が過去2年半の間人知れず地球を周回し続けていたこと。わたしたちが気づいていなかっただけで、すでに2018年からミニムーンモードに入っていたようで、一度地球に急接近したところをカタリナ・スカイサーベイに捉えらたこともあったそうです。

2020 CD3は総じて2.7年間地球を周回したのち、ふたたび太陽の重力に引き寄せられて飛び去りました。こんなに長い間地球を周回していたのはいささか予想外だったみたいです。繰り返し行われたシミュレーションの平均値からはもっと短期だと推測されていたものの、「ミニムーンが月に接近した場合のシミュレーションが実際の2020 CD3の動きと一致していたため、シミュレーションに使われた軌道モデルの信憑性を裏づける」結果にもなったそうです。

さらに、ミニムーンが思ったよりも速く自転していたこともわかりました。このことをうまく予測できなかったのは「1メートルほどの小さな小惑星についてはまだ科学的見解が不十分」であったため。ミニムーンについての研究が、今後の小惑星研究で取り組むべき課題をあぶり出すかたちとなりました。

宇宙が人類の懐に飛び込んできてくれる

将来のスペースミッションにおいて、ミニムーンはさらなる脚光を浴びそうです。論文の筆頭著者でありクイーンズ大学ベルファストで宇宙物理学を研究しているGrigori Fedorets氏いわく、

ミニムーンは小惑星帯を地球の近く、天文学的には手を伸ばせば触れるぐらいの距離に持ってきてくれますから、サンプル採取に大いに役立つ可能性があります

と話しています。

今後近い未来にミニムーン・ミッションが実現したら、太陽系の成り立ちについてなにか新しい情報を得られるかもしれません。あるいは、小惑星探査の技術を磨く場所と機会を提供してくれるかもしれません。

2020 CD3はおそらくもう地球へは戻ってこないでしょう。でも、2023年にはヴェラ・ルービン天文台が本格始動する予定で、より広く、深く宇宙を見渡せることになります。そうなれば、新たなミニムーンの発見も期待できそうです。

星のめぐりがほぼ一定の周期を保っているのに対して、小惑星など小さな天体の自由奔放さよ。予測のつかない動きをするミニムーンだからこそ、ついそのあとを追いたくなってしまうワクワク感があるんですね。

Reference: University of Hawai'i, The Astronomical Journal, International Astronomical Union Minor Planet Center

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