Lenovo ThinkPad X1 Foldはとっても未来で、とってもハードルが高い

  • 11,685

  • author Sam Rutherford - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
Lenovo ThinkPad X1 Foldはとっても未来で、とってもハードルが高い
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

ノートPCはどこに向かうのか。

ディスプレイが曲がる折りたたみスマホは1ジャンルとして定着した感があります。ところがこんどはノートPCのディスプレイが折り曲がる、LenovoのThinkPad X1 Foldが登場しました。それってメリットあるの? 使いやすいの? 米GizmodoのSam Rutherford記者が1週間使ってレビューしてますので、どうぞ!


今ノートPC業界は、岐路に立っています。従来のクラムシェル型PCがすぐに消えるということはありませんが、この10年でMicrosoft SurfaceやApple iPad Pro、Lenovo Yogaなどなどといったコンバーチブルマシンが市民権を得て、多様な使い方のできるコンピューターへのニーズが満たされてきました。一方スマホの世界では、Samsung Galaxy Z FoldやZ Fold 2といった折り畳みディスプレイ搭載デバイスが新たな道を切り拓いています。この文脈で2020年に投入されたのが、Lenovo ThinkPad X1 Fold(以下X1 Fold)です。

X1 Foldは、曲がる有機ELディスプレイを搭載した初めてのノートPCです。これによってLenovoは、未来に向けたあるビジョンを示しています(それが本当に実現するかどうかは別として)。その長所も短所も、考え方もひっくるめて、X1 Foldが体現しているのは、クラムシェル型とかコンバーチブルといった従来型ノートPCの形態からの分岐点にほかなりません。X1 Foldは良くも悪くもその分岐点に立ち、新たな方向へと一歩踏み出そうとしています。

Lenovo ThinkPad X1 Fold

201210_thinkpadx1foldrev2

これは何?:曲がる有機ELディスプレイを搭載した初のコンシューマー向けノートPC

価格:レビュー時点で2,500ドル(日本国内価格32万7426円)から

好きなところ:すごく革新的、内蔵キックスタンド、マルチモードのデザイン、スタイラスサポート、リッチでフレキシブルな有機ELディスプレイ、マグネット固定式のスマートなキーボード、驚くほど頑丈なこと

好きじゃないところ:OSの組み込み方がすっきりしない、厚い、すごく高い、ややバギー、Bluetoothキーボード接続がたまにうまくいかない、画面がやや暗い、ヘッドホンジャックがない


スクリーン中心のデザイン

X1 Foldに関して面白いのは、ノートPCというのは基本的にスマホと違って「折りたたみ式」が普通ってことです。ただ「折りたたみ」の仕方が、X1 Foldはちょっと違うだけです。ほとんどのノートPCは、上が画面で下はキーボードとタッチパッド、その間にヒンジある構成になっています。しかしX1 Foldの場合はすべてが画面です。

13.3インチのX1 Foldの画面はピーク輝度が278ニトで、一般的なノートPCより暗めです。でも明るさがない分、有機ELらしい深い黒とリッチな色で補っていて、この特性は折りたたみでも変わらないことがわかります。でもX1 Foldが他と違うのは、それがスクリーンを中心にデザインされることで、様々な機能を実現していることです。

20201214_185531_s
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US
巨大画面マシンから普通のノートPCへ早変わり。

ディスプレイの外側では分厚いベゼルがX1 Foldの堅牢性を支えつつ、500万画素のWebカメラ(プラスおまけの赤外線カメラ)の穴と、ヒンジを覆うふたつのプラスチックパーツがあります。パッと見はややもっさりしてるんですが、ちゃんとすごいエンジニアリングが隠されています。曲がる画面が開閉とともに微妙にずれることで、強い力をかけずに開閉でき、かつSamsungの折り畳みスマホみたいな折り目もできないようになってるんです。

さまざまなセッティングの可能性

背面はレザーの素材が本体を包み込んで保護しつつ、柔軟さは失われません。キックスタンドが内蔵されていて、ポータブルなオールインワンPCみたいに配置することもできます。小さめながらちゃんと使えるBluetoothキーボードもついてきて、画面中央部分に磁石でくっつきつつ、そこからワイヤレス充電できる仕組みです。ちなみにこのBluetoothキーボードには充電用micro USBポートもありますが、X1 Fold本体はUSB-C搭載で、ちょっとちぐはぐな感じはします。でも僕が使っている間X1 Fold本体より先にキーボードの充電が切れることはなかったので、micro USBがついててもまあいいかって感じです。

201210_thinkpadx1foldrev3
キックスタンドを立て、キーボードを分離してると、X1 Foldはミニオールインワンになります。X1 Foldはいろんなセッティングで使えますが、これが多分一番パワフルです。
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

X1 Foldの使い方は複数あり、USB3.2 Type-Cポートはふたつ搭載しています。なのでX1 Foldをどういう置き方にしても、テーブルに置いていても、少なくともひとつか、たいていはふたつのポートに簡単にアクセスできます。でもX1 Foldに関して一番すごいのは、繊細な花みたいだったSamsung Galaxy Z FoldとかZ Fold 2と違って、他のThinkPadと同じ米軍基準の12項目の堅牢性テストにパスしていることです。付属のスタイラスによる手書き入力もサポートし、Wi-Fi 6にも対応、Dolby Atmosオーディオも驚くほどしっかりしていて、オプションで5G通信も可能になります。そんなわけでX1 Foldは本当に全部盛りのノートPCです。

折りたたむと1インチ(約25.4mm)以上の厚みがあり、しかも一般的な13インチノートPCより重いので、数字以上に重さを感じます。レザーの背面は弁護士とかが使うような革張りの大型手帳みたいな印象ですが、X1 Foldの中に詰まってるのは紙ではなくコンピューター部品です。いろんな意味で今までのノートPCとは全く違うことがわかります。

201210_thinkpadx1foldrev4
X1 Foldは普通のノートPCのようにも使えます。その場合はBluetoothキーボードをディスプレイの半分に置いてもいいし、大きな画面のまま使ってもいいです。
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

納得いかない部分も

厚くてもっさりしたレイアウトはまだ許容できるんですが、ハードウェアに関してほんとに納得できない部分がいくつかあります。ひとつはヘッドホンジャックがないこと。今はスマホでは3.5mmポートをなくしてるものが多いですが、ノートPCにヘッドホンジャックがないのは悲しいものです。

もうひとつは、しかたなく搭載された感のある冷却ファンです。こういうシステムならファンレスデザインにすればデザインがもっとすっきりして、動くパーツが減ることで耐久性も上がったのではないかと思います。ファンが鳴り出すたびに苦笑してしまいます。ただ少なくともWindowsに関しては、2,500ドル(日本国内価格32万7426円)以上するノートPCに期待されるパフォーマンスを出しつつファンは要らないなんてCPUはないので、残念ながら仕方ないのかもしれません。

使用感

デザインはそんな感じですが、実際使ってみるとまた違います。X1 Foldは今まで使った中で一番未来感あふれるコンピューターみたいに感じられることもあれば、ソフトウェア面で全然未来っぽくないこともありました。

201210_thinkpadx1foldrev5
もちろんタブレットとしても、キーボードやスタイラスと一緒に使えます。
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

ノートPCモード」を初めて使ったとき、上から下まで一画面になっているのを見てびっくりしました。ディスプレイをどう使いたいかは、Lenovoのモードスイッチャーで指定でき、フル画面と分割画面を2タップくらいで切り替えられます。上の画面で動画を流しつつ、下の画面でソーシャルメディアをスクロールすることもできます。何かタイプしたいときは、オンスクリーンのキーボードを使ってもいいし、Bluetoothキーボードを画面の上に置いてX1 Foldに検知させ、普通のノートPCみたいに使うこともできます。

画面にBluetoothキーボードを置いてノートPC風にするとちょっと小さくて、ものすごく高価な10インチノートPCのように見えます。が、狭いスペースで使うモードと考えると良さそうです。

201210_thinkpadx1foldrev6
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev7
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev8
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev9
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev10
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev11
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev12
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

気が向いたら手にとって画面を開けば、すぐにタブレットになります。またはキックスタンドを立てて、その前にBluetoothキーボードを置けば、ポータブルなオールインワン・ワークステーションの出来上がりです。X1 Foldを動物にたとえるなら、それは多分…ブリッツウィングとかアストロトレインといったトランスフォーマーです。X1 Foldは単なる2-in-1、3-in-1ではありません。それはノートPCとタブレットとミニオールインワン、さらにそれ以上のものが、ひとつに合体したものなのです。

ソフトウェアがネックに

いろんなモードに変形できるのはすごいんですが、それを支えるソフトウェアには、残念ながらぎこちなくバギーな部分もちょこちょこ見えました。なので全体としては、素晴らしいというにはちょっと足りない仕上がりになっています。

201210_thinkpadx1foldrev13
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

たとえばディスプレイを回転させても画面表示の方向が変わらず、タテで使いたいのにヨコのままだったり、その逆だったりすることが何回もありました。なのでコンテンツの周りには、巨大なバーが表示されっぱなしになります。ゲーム『League of Legends』の『Teamfight Tactics』をプレイしたときは、画面の回転で完全にクラッシュしたことがありました。モバイルでプレイする想定のゲームなので、これはとくにがっかりです。

他の場面でもモードスイッチャーはとにかくちゃんと機能しないか、そのときの設定で固まってしまったり、フル画面モードに戻そうとするとやっと反応したりします。 またBluetoothキーボードを最初にペアリングするときにうまくいかず、何回もやり直す必要がありました。

キーボードとOSの問題

でも最大の問題は、キーボードがソフトウェア3つ(下ギャラリー参照)と物理キーボードで計4種類あるのですが、どれもベストだとは感じられないことです。ちなみに僕は、タッチスクリーンでタイプするのは別に嫌いじゃありません。

201210_thinkpadx1foldrev14
キーボードはほんとに、画面幅全体を使ってくれてたほうがよかったと思うんですが…。(Image:Sam Rutherford - Gizmodo US)

201210_thinkpadx1foldrev15
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev16
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

201210_thinkpadx1foldrev17
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

たとえば圧縮版のソフトウェアキーボードは、キーを全体に大きくし、スマホのような大文字切り替えキーを載せるために、EscやShift、Tabといったキーをなくしています。タッチベースのソフトウェアキーボードはキーが大きいことで若干打ちやすくなりますが、よく使う@とか$を打つには「&123」ボタンからのメニューを使わなきゃいけないので、普通のノートPCほど早くは打てません

一方圧縮されてないソフトウェアキーボードは、ノートPCモードではディスプレイ全体の幅に広がらず、キーが小さすぎるので正確にタッチタイピングできません。X1 Foldを本当に効率良く使えるようになるには、ディスプレイをフル活用する必要があります。

そしてスペース不足つながりでいうと、バーチャルキーボードとモードスイッチャーボタンそれぞれにショートカットが必要なので、Windows 10のシステムトレイにある通常のアイコンと合わせると、タスクバーにはアプリを表示するスペースがほとんどありません。すごくイライラします。本来の理想としては、モードスイッチャー自体がアプリじゃなくOSに組み込まれていて、ジェスチャーで操作できてしかるべきだと思います。

201210_thinkpadx1foldrev18
システムトレイのアイコンが増えてることと、ノートPCモードで画面幅が限られてることで、アプリアイコンのスペースがほとんどありません。
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

Lenovoはいろいろな意味で、物理キーボードがあることでタッチキーボードにフルコミットできてないように見えます。でもこういうデバイスをフルに生かすには、タッチキーボードこそ重視すべきです。物理キーボードにこだわる人は、そもそもX1 Foldみたいなデバイスに魅力を感じないはずで、X1 Foldはそういう人たちのために作られたわけじゃないからです。それ以上に、Windows 10がこういうハードウェアをサポートするようにできていませんしね

デュアルスクリーンやフレキシブルディスプレイを持つデバイスのために作られたWindows 10Xは、今ごろできているはずだったんですが、COVID-19やらを理由に来年まで延期されてます。なのでX1 Foldが想定していたOSが今は使えないんです。でもLenovoはプロダクト全体をキャンセルするのではなく、なんとかつぎはぎでも対応を考え、とにかく出し切ったように見えます。そんな押し切った感が、X1 Foldには滲みでています。X1 Foldは未来的モバイルデバイスですが、それをフルにサポートしてX1 Foldのデザインや革新性を活かすためのOSを持っていないのです。

201210_thinkpadx1foldrev19
それでもこうやって動画見ながらWebサーフィンできるのはいつまでも飽きません。
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

たたみかけてごめんなさい

もうひとつ直視しなきゃいけないのは、価格なりの価値がどうかということです。Intel Core i5-L16G7プロセッサに8GBのRAM、1TBのPCIe SSDはそれなりにスピーディですが、同等スペックの普通のノートPC(他のThinkPadも含め)と比べると、X1 Foldの価格は1,000〜1,500ドル(約10〜16万円)高価です。新種のデバイスとはいえ、中身のソフトウェアが生煮えのものとしてはかなり大きなプレミアムです。

さらに初代Galaxy Z Foldとは違い、X1 Foldは別にRAMもストレージも他と比べて大きいわけではなく、バッテリーライフに至っては動画再生テストで7時間28分とかなり冴えない感じです。そして一番微妙なのは、Galaxy Z FoldとかZ Fold 2と比べて、マルチタスクをこなすデバイスとしてそんなに優れてないことです。

もちろんX1 Foldのほうが一般的な2-in-1より興味深く、もっとコンパクトでもあります。でも生産性という意味では、Bluetoothキーボードの小さなキーボードやタッチパッドによってスピードが犠牲になっている分、X1 Foldが柔軟性で補えているかというとそうでもありません。僕は1週間使ってみましたが、X1 Foldを手にして使いたいというよりは、それで何ができるか考えていることのほうが多かったです。

201210_thinkpadx1foldrev20
Image:Sam Rutherford - Gizmodo US

まさに第1世代テクノロジー

そんなわけでX1 Foldは、荒削りながらもイノベーティブなデザイン、イマイチなバッテリーライフ、バギーなソフトウェア、そして本来の2倍のお値段のノートPCです。っていうと悪い買い物みたいに見えるし、実際その通りですが、それでも僕的は腹は立ちません。なぜならX1 Foldは、典型的な第1世代テクノロジーだからです。

Lenovoはワイルドで冒険的な何かを試しているんですが、買う側は必ずしも冒険したいわけじゃなく、むしろ失敗したくない人が大半です。予算が限られてる人とか、仕事用のメインマシンを買おうとしてる人には、X1 Foldは全然お勧めできません。X1 Foldは、血の滴るような最先端を自ら体験したいハードコアなテクノロジー愛好家のためのノートPCなんです。X1 Foldの本当の価値は、ノートPC市場がこれから向かっていくかもしれない明日の姿を、今日の分岐点から垣間見せてくれるところにだけ存在するのです。

まとめ

・X1 Foldとその曲がる有機ELディスプレイは、初代Galaxy Foldよりいろんな意味で実験的です。ダイハードなガジェット愛好家でもない限り、パスしていい製品です。

・いろんな情報源からは、X1 FoldはもともとWindows 10X搭載になる予定だったとされていて、そのことは実機からもにじみ出ています。

・他の曲がるスクリーンデバイスと違い、X1 FoldはThinkPadの米軍基準耐久性テストに合格しているので、堅牢ではあるはずです。

・タッチスクリーンでタイプする世界に飛び込めない人のために、小さなBluetoothキーボードも付いてきます。磁石で固定して充電ができ、X1 Foldを閉じたときに内側にぴったり収まります。

・同等スペックの普通のノートPCに比べて1,000〜1,500ドル(約10〜16万円)高いです。

Lenovo ThinkPad X1 Fold ほしい?

  • 0
  • 0
Lenovo

シェアする

    あわせて読みたい