Appleの新画像フォーマット・ProRAWとは? どう使うの?

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  • author David Nield - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
Appleの新画像フォーマット・ProRAWとは? どう使うの?
Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US

ProなRAW、でもRAWよりむしろ敷居が低い、それがProRAW。

先日リリースされたiOS 14.3では、Apple(アップル)独自の画像フォーマット・ProRAWが使えるようになりました。ProRAWはiPhoneでの写真の撮り方を、iPhone 12 Pro・Pro Maxだけじゃなく次世代以降までも大きく変える可能性を秘めています。…なんて言ってますが、ProRAWって何ができるの? と思っている方、多いかもしれません。そこで、ProRAWの使い方について以下で解説していきます。

RAW+αなフォーマット

ProRAWはiPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxで、iOS 14.3以降をインストールすると、写真撮影時に使えるようになる画像フォーマットです。iPhoneならなんでもOKなわけじゃなく、ProRAWを使うにはメモリ処理能力がより多く必要になるため、最新フラッグシップのiPhone 12 Pro・Pro Maxじゃないと使えません。ProRAWを有効にするには、iOSの設定から「カメラ>フォーマット」と開き、「Apple ProRAW」のスイッチをオンにします。

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iOS 14.3でのProRAW設定画面。
Image: Apple

これでiPhoneのカメラアプリの中でRAWボタンが表示され、このボタンを使ってProRAWのオンオフを切り替えられるようになります。ProRAWで撮った写真は、写真アプリではRAWのバッジ付きで表示されます。ではそもそもProRAWとはどういう目的で使うもので、逆に使わないとしたらどういう理由があるんでしょうか?

ProRAWの前に、RAWとは何か

と、本題に入る前にその前段を説明しますね。ハイエンドなデジカメで撮れるRAWファイルフォーマットは、「RAW=生(なま)の」という名の通り、レンズから入ってくる生データです。圧縮も、加工もされてません。プロまたはプロっぽいカメラマンがRAWを使うのは、カメラのアルゴリズムを通さない生データを自ら加工するためです。

スマホとそのカメラ性能が高まるにつれ、撮れる写真にはよりいろんな加工が施されるようになりました。Google PixelのNight Sightなどはいい例で、レンズを通った光のデータがGoogleのアルゴリズムにより拡張・加工されて、(少なくとも理論上は)ベストな画像へと変換されています。

写真にそこまでこだわりのないたいていの人は、デジカメやスマホがベストとして提示する画像を問題なく受け入れています。でも一部のユーザーは、RAWデータを使って明るさやコントラスト、色、彩度、圧縮率などなどを自分で調整して好みの写真を作りたいと望んでいます。

RAW画像にはたくさんの情報、カメラのレンズが捉えたものすべてが詰まっているので、その後の編集を柔軟にできます。色や明るさなどたくさんのデータが入っているし、圧縮もされてないので、標準的なJPEGとかよりファイルサイズは巨大になります。そういう意味で、RAWを求める人もいればそうじゃない人もいますが、最近ではハイエンドなデジカメだけじゃなく一部のスマホでもRAWが選べるようになっています。

RAW画像に対応するのはAppleが初めてではなく、最近のスマホはほとんどがこのオプションを備えています。RAWで撮った写真は多くの場合、Adobeが開発したDNGファイルとして保存されます。ちなみにデジカメの場合は、たいていそれぞれのカメラメーカー独自のRAWフォーマットがあります。

じつはこれまでのiPhoneでもすでにRAWをサポートしてたのですが、そのデータはiOSのデフォルトのカメラアプリでは取得できず、使えるのもメインのレンズだけでした。ProRAWが使えるようになる前は、iPhoneにサードパーティのカメラアプリを入れなきゃいけませんでしたが、とにかくRAWで撮ること自体はできていました。

で、ProRAWとは

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ProRAWを使うにはProモデルのパワーが必要です。
Image: Apple

AppleはProRAWを、RAWと標準の写真のハイブリッドだと言ってます。つまりiPhoneのコンピュテーショナル・フォトグラフィー技術を使いつつ、後処理の多くはハイスキルなユーザーのために残してある、というわけです。Deep FusionやSmart HDRといったアルゴリズム経由のデータも、ProRAWデータには含まれてきます

Deep FusionもSmart HDRも、複数フレームから得られる情報をまとめてよりよい画像を作るための技術です。Deep Fusionは画像を最適化し、ディテールを拡張してノイズを減らします。Smart HDRは明るい部分も暗い部分もディテールを維持するHDR(ハイダイナミックレンジ)処理です。クラシックなRAW写真にはこういったコンピュータ処理由来のデータは付いてきませんでしたが、ProRAWには入ってます。ファイル形式は、AppleがAdobeと共同開発した、DNG形式をほんの少しアレンジしたものです。

撮影時の処理は一瞬で行なわれ(少なくてもユーザー側には)、シャッター速度には影響しません。またProRAW撮影は、iPhone 12 Pro・Pro Maxの4つのカメラ(背面3つ+前面)で使えます。シャープネスやバランス、トーンマッピングといった設定は写真に埋め込まれてはいませんが、画像編集ソフトウェアに対する「指示」として機能します。

ProRAWはいいとこどり

Appleの写真アプリは当然ProRAWを扱えるし、APIもあるのでサードパーティツールも使えるようになっています。LightroomSnapseedといったアプリでもRAWを便利に扱えるし、人気のRAW撮影カメラアプリ・Halideも同様です。ちなみにHalideを開発したBen Sandofsky氏は、ProRAWについて非常にディープな解説をしてくれてます。

Sandofsky氏は、ProRAWとは「両方のいいとこどり」なのだと強調しています。つまりプロなカメラマンを満足させつつ、初心者にもRAWへの道を開いてくれるのだと。シリアスなカメラマンがたいていは端折ってしまう編集ステップは自動処理されますが、それでも通常のiPhoneカメラで撮った写真よりははるかに多くの情報量が残っています。

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Deep Fusionを使ったサンプル画像
Image: Apple

「JPEGのような処理された画像の処理を元に戻そうとするのは、焼けたケーキを焼く前の状態に戻そうとするようなものだ」Sandofsky氏は書いています。

カメラがJPEGを作ったら、ユーザーはカメラの判断を肯定したほうがいい。戻しようがないからだ。

ではカメラがJPEGを保存するのではなく、センサーが捉えた大元のデータを保存するとしたらどうだろう。そうすればユーザー自身が、ホワイトバランスなどの処理に関してカメラとはまったく違う判断ができる。生のデータを得られるのだ。

AppleがProRAWを開発できた理由のひとつは、彼らがiPhoneのすべてをコントロールしているからです。ハードウェアもソフトウェアもカメラも、すべてです。デフォルトの写真アプリでも、ProRAWファイルをシームレスに開けます。すべてコントロールしているからこそ、多くのAndroidスマホではできないような決断が可能になり、RAWファイル初心者の編集を多少楽にしてくれています。またProRAWは、ファイルサイズを小さくするのにも役立ちます。

iPhone 12 Pro持ってたら、ProRAWで撮るべき?

「RAWについて何もわからないけどもっと柔軟に編集したい、そんな人はProRAWで撮ってみよう」Sandofsky氏は書いています。「真のプロフェッショナルにとっては、判断にはより細かいニュアンスが伴う。通常のRAWに切り替えたほうがいいこともあるだろう」

というわけで、ProRAWとは初心者にとってRAWよりとっつきやすく写真編集の入り口をちょっと入りやすくしてくれます。でもピクセル単位で細かい調整をしたい場合は、サードパーティアプリを使えば、iPhoneでも引き続きクラシックなRAW撮影ができます。一方デフォルトでは、iPhone 12 Proであっても写真はJPEGまたはHEICで保存されています。でも両方をブレンドしたものとして、ProRAWを試してみる価値はあるかもしれません。

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