脳の治る力をアシスト。脳波で作動するロボットで麻痺した手指が回復する

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  • author ヤマダユウス型
脳の治る力をアシスト。脳波で作動するロボットで麻痺した手指が回復する
Image: Mugendai(無限大)

僕らの頭の中には、実はすごいモノが詰まっている。

脳卒中は世界4大疾病のひとつで、患ってしまうと言語障害や認知症などを招き、介護が必要になるケースが少なくありません。にもかかわらず、25歳以上の4人に1人が一生のうち一度は発症するともいわれています。かなり多いですね。

さらに、脳の障害は身体の麻痺を引き起こすことも。慶應義塾大学理工学部生命情報学科の牛場潤一准教授は、画期的な手指の麻痺治療トレーニング装置「BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)」を開発しました。

元来、麻痺の治療は非常に困難なものでした。しかし、牛場准教授はBMIが脳の治る力をアシストし、麻痺が回復することを実証。IBMのWebメディアMugendai(無限大)にて、その詳細が語られています。

BMIが神経回路の書き換えを促す

手指が麻痺してしまった患者は手指を動かそうと頭の中で念じても、動かすことができません。しかし、念じることで発生する電気信号(脳波)は微弱ながら存在します。BMIはこの信号をキャッチし、脳に残った神経回路が動いているとAIが判断したときだけロボットが動きます

ロボットは前腕の筋肉に電気刺激を流して筋収縮(指を開く動き)を促すと同時に、親指以外の4本の指を開こうとする動きをモーターが物理的にアシストします。

(中略)

こうして脳の反応を確認しながら、適切な念じ方を繰り返し訓練すると、次第に指が動くようになります。その「動いた」という感覚情報は脳にフィードバックされ、脳の中の神経回路が少しずつ書き換えられていきます。訓練後は、個人差はありますが、装置を外したままでも、指を動かすことが可能になります。

動かそうと念ずる→ロボットが指を動かす。この反復を脳が学習することで、いずれロボットなしでも指を動かせるようになる、ということですね。脳の誤学習を防ぐため、電気信号が正しく生じていない場合はロボットは動かないとのこと。

臨床研究のケースでは、麻痺発症後6ヶ月以上が経過した患者の7割に効果がみられたそうです。通常、6ヶ月も経つと脳の機能回復は起きないといわれているので、BMIの効果の高さが伺えます。

脳の機能はスゴイ

どうしてこんな回復が可能なのか。脳内の神経細胞は網目状のネットワークを構成していますが、脳卒中などの病気・障害にかかると、このネットワークに傷ができます。傷ついたネットワーク、すなわち電気信号の道は通れなくなるため、今までできた信号のやり取りができなくなるのです。

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Image: Mugendai(無限大)

しかし、通れなくなった道を迂回して、新たな進行ルートを脳自らが構築することがあります。こうした再構築する力は「可塑性」と呼ばれ、BMIは可塑性を誘導することで麻痺の治療を促しているとのこと。

牛場准教授は、脳の半分を失った少女が、一般の人と変わらないほどに回復した話を例に上げています。脳には機能を柔軟に書き換える力があり、これを利用することで失った機能を回復するだけでなく、新たな機能を生み出すこともできるとしています。

スペック主義ではなく、人に寄り添えるものづくりを

最後に、牛場准教授は「人に寄り添って伴走してくれる技術がもっとあってもいい」と述べ、性能や大きさなどのスペックによらない製品について思いを語っています。

データ単位もメガ、ギガ、テラと大きくなり、それが新しい価値を作り出して、市場で受け入れられていくゲームだったと思います。それが飽和に達してしまい、これ以上、大きさや速さだけを売り物にする製品はもう要らないという人が増えているように見えます。

そういうものではなくて、人との関わり合いとか自然との共生とか、ささやかだけれども大切にしたい豊かさにタッチできるテクノロジーがもっとあっても良いのではないでしょうか。

まさにこれは、テクノロジー界隈で叫ばれ続けていることですね。性能の優秀さを喧伝するだけではいけない。大事なのはその製品がどんな風に僕らの暮らしを豊かにしてくれるか、そこにあると思います。

患者さんにとっては、指が1cm開くことは、人の手を借りずに服を着たり、食事をしたりできるという、残り10年間の人生を大きく変える1歩なのです。

牛場准教授のインタビューの全貌は、Mugendai(無限大)へ。

Source: Mugendai(無限大)

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