ふつくしさに溢れた一台。
2017年9月に発売された富士フイルムのミラーレスカメラ「X-E3」。当時のXシリーズではもっとも小型なボディで、フジならではの「X-Trans CMOS III」や「X-Processor Pro」を搭載し、小さくともしっかりフジの色が出せる名機でした。編集部の綱藤さんいわく「棺桶に一緒に入れて欲しい」ほどお気に入りのカメラなんだとか。
時は流れて2021年。ついに後継機である「X-E4」が登場します。3年以上を経てのモデルチェンジですから、注目している人も多いでしょう。手ブレ補正はないものの、「X-E3」より小柄になったこの一台。その所感を一言二言でまとめるなら「小粋で小柄、かつ撮れる」カメラでした。

「カメラッ」なシャッター音が最高!

まずもって伝えたいのは、シャッター音最高だぜってこと。「X-E4」のメカシャッター音は、機械式カメラを思わせる甲高い「カシャッ」という音がします。音量もかなりで、BGM抑えめな喫茶店で鳴らすには憚られるほど(そんな時は電子シャッター)。
クラシックなルックスと、まるでいにしえのカメラを思わせる「カシャッ」という呼吸音の妙は、撮影していてとにっかく心地良い。シャッターをきりたくなる音、なのです。2021年にあえてデジカメを持つ意味として「撮影していて楽しいから」を意識するなら、シャッター音が与える楽しさデザインは侮れません。手に伝わるシャッターの振動も相まって、シャッターをきるたびにニヤニヤしちゃうカメラですな。
洗練されたフラットシルエット

フラットな軍艦部や背面デザインも、惚れ込むに値する要素です。そのフラットさは「X100V」にかなり近く、プロダクトとしての美しさを目や指先から楽しめます。「X100Vのフラットデザインが好きだけど、レンズ交換できないのがなぁ」と、固定レンズにもにょっとした人たちのハートを狙い撃つカメラともいえる。

チルト式とは思えないほどすっぽりおさまったチルト式モニターも健在。このモニターは上側までぐるっとまわして、セルフィーにも使えます。

こういうところは現代的。でも、一見それを感じさせないクラシックデザインが素敵じゃあないですか。
撮り続けたくなるシンプルさ
一応、Eシリーズはエントリー〜ミドル向けというポジションなので、Tシリーズなどに比べるとボタン類は少ないです。ISOダイヤルはありませんし(前ダイヤルはある)、操作を割り当てられる場所はタッチ含めてたった7項目! QボタンをQメニューに使う場合、実質カスタマイズできる物理ボタンは2つ(FnとAEL-AFL)だけです。

普段「X-T4」で撮影している僕からすると、相当に物足りないボタン数。ところがいざカメラを持って撮影に出てみたら、なんのこっちゃない十分撮れちゃうっていうね。絞りは開放、SSとISOはオートにして、カシャッ。むしろボタンが少ないから設定などで頭や指先を悩ませる必要がなくなって、構図や被写体探しに注力できます。介入できる余地が少ないってことは、デメリットとも言い切れませんよね、カメラの場合は。
例えばフィルムシミュレーションをよく使う人はフィルムシミュレーションをFnに割り当てたり、ISOをいじりたい人はISOを、という具合に、自分にとってどの要素へのアクセスを重要視しているか、そこを考えるきっかけにもなると思います。自分だけの「X-E4」を作ろうぜ!
手ブレ補正はないけど…?
EVFも見やすく視界良好でしたが、やはりEシリーズの手軽さはモニターを見ながらの撮影。となると、ボディ内手ブレ補正非搭載は気になる点です。結論からいうと「なくても問題はないけど、レンズによりけりかもね」です。

今回の作例は雨天での撮影で、左手に傘を、右手にカメラ(別売のメタルグリップとサムレストを装備)という不安定な状況で撮影してきました。ある程度はブレてるかなーと思ってたら、F6まで絞ったこの写真も問題なし。むしろカメラ本体の軽さがホールド性の向上に貢献してくれています(使用している新レンズについては後述)。
フジのレンズはOIS(光学手ブレ補正)を搭載したものも多数あり、ボディ本体の手ブレ補正の有無はさほど問題にならないと見て良いでしょう。トップヘビーなレンズで片手撮影する場合はまた違ってきますが、そんな人には手ブレ補正搭載で10万チョイのX-S10という選択肢もあるわけですしね。あれも良いカメラだよなぁ。
ホールド性を大幅向上させる、純正アクセサリー

「薄型軽量のボディも良いけど、もうちょっとホールド性が…」という人は、サムレストとアルカスイスプレートに対応したメタルグリップが別売で用意されています。本機には「X-E3」にはあったグリップすら排されていて、裸の状態だと己の握力のみでのホールドすることに。親指を引っ掛けるところもないほどにフラットなんですよね。M型Leicaっぽい持ち心地です。

サムレストやグリップをつけるだけで、持ち心地はめちゃくちゃ良くなります。純正ならではの統一デザインもいとをかし。とはいえ装備が増えるとボディ重量は重くなるので、そこはお好みですね。三脚を愛用する人はメタルグリップが便利だろうし、軽量さを優先したいならサムレストだけが便利なはず。僕はサムレストだけで充分に感じました。
動画派もフジ、そう思える仕様の数々

もひとつ推せるのが、動画(Long GOPのみ)です。「X-E4」は3.5mmマイク端子を持っていて(X-E3までは2.5mmで不便だった)、さらにType-C→3.5mmヘッドホン端子(メス)の変換アダプターが同梱されています。これはもう、動画もフジで撮っちゃってよと言わんばかりのおもてなしですな?
上述のチルトモニターと合わせて、自撮りVlogに使っても良し。三脚に据えて配信カメラに使っても良し。フジならではのフィルムシミュレーションは動画にも使えるので、クラシックネガやETERNAブリーチバイパスといった魅力的なルックを活用した動画、楽しめそうですよ。
リニューアルした薄型広角単焦点

今回の撮影では、新発売のレンズ「XF27mmF2.8 R WR」を使いました。2013年発売の「XF27mmF2.8」をリニューアルしたレンズで、絞りリングと防塵防滴仕様が追加。電源を入れるとわずかに沈胴します。最短焦点距離は34cmで、構成図を見る限り光学系に変更はありません。
XF27mmF2.8 R WR

XF50mmF2 R WR

XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS

27mm、50mm、18-55mmと付け替えてみました。やはりこのシンプルなボディにはパンケーキのような単焦点を着せてあげたくなりますね。
雨の日の作例コーナー






これはもっとも手軽なフジ。
Eシリーズの魅力は、フジの画を手軽に味わえる点です。「X-E4」もその哲学からはみ出ることなく、手軽さを軸に機能面やデザインが現代向けにアップデートされています。肩肘張らずに持ち出せて、かつステキな画が撮れる。つい触りたくなる愛らしいフォルムも相まって、ユーザーの毎日に寄り添えるカメラになると感じました。今もほら、ついダイヤルに触りたくなっちゃう。
富士フイルム「X-E4」

発売日:2021年2月下旬
価格:ボディ9万9000円、XC15-45mmキット11万円(いずれも税別)
・約2610万画素
・X-Trans CMOS 4センサー、X-Processor 4エンジン
・3.0型チルト式タッチパネル付きTFTカラー液晶モニター
・充電式バッテリーNP-W126S(静止画撮影枚数約460枚)
・重量約364g(バッテリー・SDカード含む)
・幅121.3mm高さ72.9mm奥行き32.7mm
・クラシックネガ、ブリーチバイパスが使える
・DCI4K30p(200Mbps)、FHD24pで240p(10倍)スローモーション撮影
・3.5mmマイク端子搭載
・別売で、純正サムレストとアルカスイス対応メタルグリップがあり
・手ブレ補正なし!
動画で見たい方はこちらも。
Source: 富士フイルム