スケルトンボディで僕らを魅了。話題のイヤフォンを手掛けたDJ DARUMAが語る、モノの価値観とは

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  • author 大久保貴央
スケルトンボディで僕らを魅了。話題のイヤフォンを手掛けたDJ DARUMAが語る、モノの価値観とは
Photo: Victor Nomoto(METACRAFT)

昨年、オンキヨーとアパレルブランド「FULL-BK」との共同開発による完全ワイヤレスイヤフォンIE-FBK」が発売。発表時には、ギズモードでも紹介しましたが、その際にひとつの疑問が生まれました。

どうして“透明”は僕たちを魅了するのか?

さまざまな完全ワイヤレスイヤフォンが市場にあふれる今日。まさに群雄割拠とも言えるこの市場で、今までになかったスケルトンボディは、ひときわ存在感を放ち遊び心を刺激します。

今回は、このイケイケなイヤフォンを生み出したブランド「FULL-BK」を手掛けるDJ DARUMAにインタビュー。なぜ僕らはスケルトンボディに惹かれてしまうのかについて話していたら、モノの価値観の話にまで発展してしまいました。

アクセサリー感覚で楽しめるイヤフォンにしたい

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──スケルトンボディの完全ワイヤレスイヤフォンって見ないですよね。このデザインにした経緯を教えてください。

DJ DARUMA:正直、みんなもうイヤフォンって絶対1台は持ってるじゃないですか。だから、2台目のイヤホンが欲しいってなるとしたら重要なのは、アクセサリー感覚で使えて、気軽に買えるようなイメージかな、と市場を見渡すと蛍光色を使ったデザインは多かったんですが、スケルトンのイヤフォンはまったくなかったんです。女の子が「可愛い」と思えるような、スケルトンでオシャレなイヤフォンであれば、まさにアクセサリー感覚で使ってもらえそうだなと思ったのが、このデザインに至った経緯ですね。

──特にこだわった部分はどこですか?

DJ DARUMA:この透明感ある色味と価格です。透明にしていくと強度が弱くなってしまうんです。だからといって強度のある真っ透明な素材を使うと高くなってしまう。アクセサリー感覚で買えることや、2台目のイヤフォンとして迎えてほしいという立ち位置が重要だったため、価格は絶対に1万円以下にしたかったんです。そのバランスのために試行錯誤して何度もやり直しながら作っていきましたね。もちろん安かろう悪かろうにはしたくなくて、そこはオンキヨーさんがもともと老舗なんで、信頼感はありました。

──市場を見渡したときに、まず蛍光色を意識したり、そのあとにスケルトンという発想が出てきたりするのが面白いですよね。

DJ DARUMA:90年代にスケルトンブームがあったんですけど、それがとにかくカッコよくて影響されたことを覚えています。 ポケベルゲームボーイにドリームキャストなど。そして決め手はiMacのキャンディーカラーシリーズでした。やっぱり僕にとって90年代って1番多感な青春時代でもあるし、音楽やファッションをはじめ、当時あったすべてのモノが、インスピレーションソースになっているんですよ。僕は、90年代の呪縛からは逃れられないっていうくらい影響を受けていますね。

──スケルトンもの以外で、90年代の印象的なプロダクトはありますか?

DJ DARUMA:パナソニックのカセットプレイヤー『ショックウェーブ』は印象的でした。その後登場したCDウォークマンは、何台も買いましたね。当時、全然ポータブルじゃないじゃんって言いたくなるくらい音飛びがひどかったんですよ(笑)。あとはラジカセブームの時に買ったソニーの『ドデカホーン』などのラジカセ

少し話が前後しますが、ダウンタウンさんが司会をやっていた『ダンスダンスダンス』という番組で、DJがレコードを2枚使いしてるのを観たのが僕のヒップホップの入り口だったんですけど、そのあと同じ曲を先輩の家のコンポで聴かせてもらったら、そのコンポも音飛びがひどくて2枚使いを観てたからこういう曲なのかな?みたいな(笑)。

もっと古い話だと、幼稚園の時に『歌うパンダ レコードプレーヤー(HITACHI MQ-22)』を買ってもらって『およげ! たいやきくん』や『ドリフの早口ことば』などを聴いてましたね。音を遅くしたり早くしたりできることが、面白いと思ったことを覚えています。

──ご自身がイヤフォンに求める条件は?

DJ DARUMA:最低限の音質とフィット感ですね。AirPodsのイヤーキャップがついてないタイプだと自分の耳にフィットしなくて、実は左右逆につけて使用してるんですよ。それでも、以前は新幹線や飛行機で移動が多くて、寝て起きるとなくなってる…なんてこともよくありました。せっかくのワイヤレスなのに首に引っ掛けるようにわざと紐を付けたりなんかして。なのでオンキヨーさんと作ったイヤフォンも、イヤーキャップはマストでしたね。

モノに対する“価値観の変化”と、モノづくりへの疑問

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──今でも、思わず買ってしまうプロダクトなどはありますか?

DJ DARUMA:思わず買ってしまうというのはあまりないですが、“カメラの性能が良い”というのには弱いです。RICOHのGRも毎回買ってましたし、最近だとiPhone12にしようか迷っているんですが、カメラの性能が良いというのでGoogle Pixelにも興味があったりして…。

あぁ、でも最近はちょっと、モノを買う・所有するという感覚が変わってきているなと感じてます。自分でもモノを買わなくなったり手放すことが多くなったりしたし、物理的な意味でも抱えてるものという意味でも、なるべくシンプルにして荷物を減らしていきたいっていうモードになってますね。

それこそ90年代って、モノを集めることが美徳とされてた時代だと思うので、その感覚の切り離しは大変でしたけど(笑)。僕はTシャツを集めることにずっと取り憑かれちゃってたんですけど、それもやっと全部処分できました。自分の中でとても重要だった『アキラ』のTシャツも、しかるべき場所で、きちんと価値を見出してくれる次の手にわたりました。

なので、果たしてそんな時代に、今まで通りのセオリーや考え方で「モノ作り」をすることが正しいのかなというのは、よく考えるところです。まだまだ、この先すごいスピードで価値観が変わっていくと思うんです。価値観が変わればモノへの感覚も変わるし、それは暮らしすら変えていくので、そこは慎重に答えを探し続けてますね。

モノづくりのすべては「集めて・時代感を考え・編集していく」こと

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──今回のイヤフォンコラボやアパレル制作など、FULL-BKでもさまざまな活動をしていますが、音楽活動においては、やはりコロナ禍の影響は大きかったでしょうか?

DJ DARUMA:そうですね、気持ちは「DJと音楽制作」に向いてはいますが、コロナ禍で2月以降現場でのDJ活動ができなかったこともあり、少しずつ裏方に向かっている感じもありますね。かれこれ30年ぐらい毎週のようにクラブなどの現場に行っていたので、2020年4月の緊急事態宣言が出た頃は「耐えらないかも」と思ったのですが、意外と平気な自分がいたんです。

「なぜ自分はパーティをしたいのか?」と考える時間があって、気づいたんです。自分がいいと思っている音楽をいろんな人に共有したいだけなんだなってことだったんです。今、仕事でプレイリストを作っているんですけど、ダンスポップ、インディ、ロック、ヒップホップ、ハウス、テクノなど、オールジャンルでPKCZのリストとして公開しているんです。新しい音楽を選曲して誰かに共有するだけで結構満たされてるんですよね。

──パーティでDJをやっている感覚に近いんですね。

DJ DARUMA:そうそう、オンラインかオフラインかの違いで。中学生の頃からテープでミックスを作って、友達に教えてたんです。これがDJのはじまりみたいな感じもあって。もちろん、聞いてくれている人の顔が見えないっていうところは寂しいですけどね。でも、自分で集めて、選曲して、編集して、人におすすめするっていうのは変わらない。

僕にとっては、DJもそうなんですが、ファッションなども含めてモノづくりのすべてにおいて、新しいモノを作っているという感覚はなくて、好きなモノを集めて、タイミングとか時代感を考えながら、また新たなひとつのモノへ繋いでいくイメージなんですよ。

Photo: Victor Nomoto(METACRAFT)

Edit: Sachiko Toda

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