セリーヌ・ディオンを真似る不気味なロボットを見るに、不気味の谷越えはもう少し先のこと

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • たもり
セリーヌ・ディオンを真似る不気味なロボットを見るに、不気味の谷越えはもう少し先のこと
Image: YouTube - Engineered Arts

別の意味で涙してしまいそうなmy heart will go on。

セリーヌ・ディオンの名曲を歌いあげるヒューマノイドの動画を、とあるアミューズメント施設用のロボットメーカーが公開。それを見た米GizmodoのLiszewski記者が、人型ロボットの課題について述べています。


Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)などの企業のおかげで、今では階段を上り、パルクールやバク転さえも披露するロボットが存在します。ですが、エンタメ用の精巧なロボットCleo」を見るに、ロボットを「不気味の谷」から引きずり出して人間と見分けがつかないほどのヒューマノイドを開発するというのは、やはり極めて難しい芸当になりそうです。

Cleoは人工皮膚の外層をはがせば実はかなり高度なロボットで、アミューズメント施設のアトラクション向けヒューマノイドを設計・製造するEngineered Arts社が開発したプラットフォームMesmerを下地に組み立てられています。確かにボストン・ダイナミクス社のAtlasの方が驚異的ですが、Engineered Arts社が同ロボットに値段を付けていないのには理由があります。

Cleoに値段がない理由

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Image: YouTube - Engineered Arts

Cleoは腕や手首、首と両肩に複数のモーターが搭載されているため、肩をすくめるといったさりげないボディランゲージのジェスチャーを容易に行なえます。数十年前にディズニーがパーク用に開発したオーディオ・アニマトロニクスのキャラクターに比べると、そのスムーズな動作は驚くほど人間に近づいています。

ところがCleoにフェイクの肌を再装着し、声に加えて手の動きも交えて熱唱する歌手セリーヌ・ディオンの表現豊かなパフォーマンスを再現するようプログラミングすると、問題が生じてしまうのです。

Video: Engineered Arts/YouTube

問題の大部分はCleoの顔と、なんとか恐怖以外の感情を伝えようともっともらしく動いて収縮する人工皮膚にあります。昨年、ディズニーの研究者たちが披露していたように、人間そっくりなロボの開発は口と目を動かす以上にはるかに難しいことです。

恐怖の谷になる理由

人間の顔をリアルに見せているのは、意識しても気づくことのないような何層にも重なったわずかな動きと挙動。それらがCleoのようなロボットに欠けているのです。呼吸や、両足でバランスを保っている際の胴体が行なう微調整、さらには人と話す際の視線を変えたり表情を伺ったりする絶え間ない目の挙動など微細な動きの数々。人間の脳を欺けるかすかな動作のシンフォニーを再現できるほど複雑なロボットを開発するまでにはあと数年はかかります。

それこそが、ディズニーのような世界中にテーマパークを持つ企業が、人間のキャラクター(『カリブの海賊』など)の顔をベースにしたアニマトロニクスから離れて、アニメのキャラクターをロボティクス経由で現実世界にもたらすことに注力している大きな理由です。

東京ディズニーランドの「美女と野獣“魔法のものがたり”」アトラクションがすばらしいのは、元々リアルな人間っぽさのない2Dのキャラクターに息を吹き込んだから。ディズニーのアニメーターたちは、微細な動きではなく大げさな表情や感情に集中しています。私たちはロボットのベルに完全に人間らしく見えることを期待していないからこそ、実際に動いている姿を見るのは感動的なんです。Cleoが目指している基準はさらにもっと高いもので、技術的にはすばらしくてもその成果は不穏なもの。ロボットがセリーヌ・ディオンの仕事をするのはしばらく先のことでしょう。

Source: IEEE Spectrum, Engineered Arts, YouTube,

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