脱初心者。
ギズモード編集部員の茂木(もぎ)が、最近悩みを抱えているようです。ちょっと話を聞いてみましょうか。
もぎ:実は、もっと動画編集を学びたいなと思っていまして。簡単な動画編集はやったことがあるんですが、もっとクオリティの高い映像を作りたいと思っているんですよ。でも、どんなソフトを使えばいいのかわからなくて…。
最近のギズモードは、通常の記事はもちろん、動画にも力を入れていますからね。編集者も動画編集ができたほうがいいという気持ち、わかります。
動画編集は、ビデオカメラやマイクといった機材も大切ですが、編集ソフトも重要です。でも最近は、高性能な動画編集ソフトが多数登場していることもあり、動画初心者はどれを使えばいいのか迷ってしまいます。
そこで茂木はひらめきました! そう、ギズモード編集部には動画チームがあるんです。日夜動画を撮影しては編集している彼らは、いわば動画のエキスパート。彼らに聞けば、僕ら動画初心者の悩みが解決できるはず! ということで、さっそくギズモード動画編集チームの山本に話を聞いてみることにしました。

山本勇磨
編集者、動画ディレクター。2019年のチャンネル立ち上げより、ギズモード・ジャパンの動画企画/制作を手がける。好きなフォントは、「見出ゴMB31」と「DNP 秀英四号太かな」
Adobe「Premiere Pro」は動画初心者にもオススメ!
もぎ:山本さん、ちょっといいですか?
山本:はい、なんでしょう?

もぎ:僕も本格的に動画編集を始めたいと思っているんですが、編集ソフトは何がいいと思います? 調べてみたらけっこう種類が多くて、どれがいいのかわからなくなってしまって。
山本:ああ、なるほど。一口に動画編集ソフトといっても、無料のものから高額なものまでいろいろありますからね。まず、もぎさんがどんな動画を作りたいかによりますかね。
もぎ:うーん、テロップや音楽がちゃんと入っている、YouTuberのような動画を作りたいです。できれば、いろんな人に見てもらえるようなクオリティの高い動画を。まあ、どんな動画がクオリティが高いのかは自分でもよくわからないんですけどね。
山本:まず大前提ですが、YouTubeやSNSに動画を公開する場合、見ている人が動画を最後まで見てくれるように工夫するのがもっとも大事です。そのために重要なのが、間延びしている部分やセリフを噛んだところを「カット編集」すること。短い動画に情報量を詰め込むことで、視聴者が長く見続けてくれるんです。SNSの世界では、それが「クオリティの高い動画」といえます。
もぎ:なるほど…。撮った動画をそのまま上げるだけじゃ、人からは見てもらえないってことか。だから編集が必要なんですね。画質が良ければクオリティが高いぐらいの認識でした。
山本:今は機材の性能がアップしているから、高画質の動画を撮影するのはそれほど大変なことではありません。ただ、高画質=高品質というわけではなくて、高いクオリティの動画を目指すなら撮影した素材を編集することが大切です。大量の動画クリエイターがいる今の世の中で、自分の動画を見てもらうにはクリエイターの個性が重要です。映像のテンポ感、色、テロップのフォントや大きさにこだわることで、世界観を表現していく必要があります。ギズモードも昔、「1分レビュー」という企画をやっていたんです。30分くらい撮ったデータをわざわざ1分にカット編集して、1本の動画にしてたんですよ。そんな変な編集をしていたおかげで、今でも覚えてくれている方がかなり多くて、当時は「ホントなにやってんだ…」って思ってたんですけど、編集ってすごい大事だと思いました(笑)。
もぎ:30分の素材を1分に! すごい大変そうじゃないですか(笑)。色の調整、テロップ、音、それがクリエイターの個性にもつながっていくんですね。でも、そんな高度な編集を初心者の僕がいきなりやったら、膨大な時間がかかりそうで不安です…。

山本:編集って微調整の繰り返しなので、たしかに手間がかかるんですよ。でも、そういう細かい調整を効率よく行なって質の高い動画を作りたいのなら、Adobe(アドビ)の「Premiere Pro」がいいと思います。僕も使っていますよ。
もぎ:ほほう、Premiere Proですか。名前は聞いたことあるんですが、なんだか難しそうで実際に使ったことはないんですよね。
山本:Premiere Proは動画編集を一からスタートする人にもおすすめのソフトです。特に緻密なカット編集が高速で行なえることや、テロップが入れやすいことが優れている点です。あとユーザー数が多いので、分からないときにチュートリアルを探しやすいメリットもあります。ちょうど今使っていたところなので、見てみますか?
もぎ:ぜひぜひ!
色の調整は写真編集ソフトライクな使い心地
山本:ちょうど編集中の動画あるので、実際に作業しながら使い方を説明しますね。
もぎ:ぜひお願いします!

山本:動画のキモとなるのは色味です。撮影したままの状態の素材はちょっと暗かったり、色温度が高すぎたり低すぎたりすることがあるので、そのあたりを調整することで印象が大きく変わりますよ。
もぎ:「カラー」というメニューを選ぶとパネルが表示されますね。ああ、これRAW現像ソフトのLightroomと同じ感じですね。これならわかりやすい!
山本:普段Lightroomを使っているのなら、インターフェイスが共通しているところが多いのでわかりやすいと思いますよ。色温度や露出、ハイライトや黒つぶれの補正とか、トーンカーブとか画像編集と同じ感覚でできます。
もぎ:動画の色補正って難しそうかなと思っていたんですけど、思ったよりも簡単そうですね。これなら大丈夫だ!
「Adobe Fonts」で効果的なテロップ用フォントが選べる
もぎ:YouTubeを見ていると、テロップが入ってますよね。でもパソコンに最初から入っているフォントを使うと、「こいつ初心者だな」って思われちゃうんじゃないかなぁ。

山本:フォントに関しては、「Adobe Fonts」を使うといいですよ。アドビのCreative Cloudプランに加入すれば使えるようになります。Premiere Pro単体の契約でも使えます。
もぎ:ほー、いろんなフォントあるんですねー。
山本:自分の好きな文字列を入れて雰囲気を見ることができるので、フォント選びに重宝しますよ。動画のテーマに合わせて複数のフォントがパッケージになっている「フォントパック」というのもあるので、迷ったらそのパックから選ぶのもアリだと思います。
もぎ:フォント選びって難しいですよね。プレゼン資料を作るときにも迷いますもん。
山本:それと、「エッセンシャルグラフィックス」というツールが、使いやすくてクオリティも高いんです。たとえば、同じ書式で中央に揃えたまま違うテロップを入れたい場合は、そのまま文字を修正するだけでOK。あとからフォントや文字の色を変えたくなった場合も、一括で修正できて便利なんです。
もぎ:種類が豊富なだけではなく、手間も省けるってことなんですね。
「Adobe Sensei」が動画編集をサポート
もぎ:僕、Premiere Proはまったくの初心者なんでわからないんですけど、動画編集って結構時間かかりますよね。できればあまり手間をかけずにやりたいな、なんて虫のいいこと考えてるんですが。
山本:それは虫がよすぎますね(笑)。でも、以前に比べたら楽になってきていますよ。Premiere Proでは、アドビのAI&機械学習「Adobe Sensei」を活用して編集作業を効率化する機能が搭載されているんです。たとえば、動画を分析してシーンの切り替わりごとに自動的にマーカーを付けてくれます。
もぎ:マーカーってなんですか? それって便利なんですか?
山本:マーカーは、動画を分割するポイントのことです。動画の不要な部分を削除したり、一部分だけ切り取りたいときに便利です。動画編集をやるときの最初の作業といってもいいですね。普通だったら、動画を見ながらシーンごとに自分でマーカーを打っていく必要があります。短い動画だったらいいですけど、1時間2時間の動画を見つつマーカーを打っていくって、かなり時間かかりますよね。その作業をAIでやってくれるんですよ。
もぎ:それは大幅に作業時間を短縮できそうですね。
山本:そのほかにも、自動的に動画のアスペクト比を変更してくれる「オートリフレーム」なんかも便利ですね。16:9で作った動画を、スマホ用に縦長の動画にしたいときオートリフレームを使うと、メインの被写体が画面内に収まるように自動的にアスペクト比を変えてくれるんですよ。

もぎ:それめちゃくちゃ便利じゃないですか!
動画のクオリティを上げる音楽や画像は「Adobe Stock」で入手
もぎ:うーん、なんだかPremiere Proを使えば、僕みたいな初心者でもすいすい動画編集できるような気がしてきました。あとはタイトルとかエンディングに使う写真や動画、音の素材を揃えればいいんですかね。
山本:自分でそういう素材を撮ってきて作るのもいいんですけど、時間も手間もかかりますよね。ちょっとした素材なら、Adobe Stockを使えばいいと思います。

もぎ:Adobe Stockって、アドビが提供している素材サービスですよね。それが使えるんですか?
山本:Adobe IDがあれば豊富な無料素材を利用できます。まずは無料素材を使ってみて、もし良い素材を使いたいと思ったら別途サブスクリプション契約か、クレジットパックで契約するというのがいいかもしれないですね。オーディオ素材があるのが特にいいですね。動画や静止画は自分でもなんとか作れますが、音楽は専門の知識がないと作れないですからね。

もぎ:業務でがっつりってわけでもないので、1カ月10ファイルでも充分かも。
山本:そうそう、Adobe Stockはほかにもすごいメリットがあるんですよ。
もぎ:なんです? すごいメリットって。Adobe Stockを使うと給料上がったりしますか?
山本:給料は上がらないですけど、使い勝手は上がるんじゃないですかね。Premiere Proと連携できるんですよ。
もぎ:へえ。それがどう便利になるんですか?
山本:Adobe Stockのサイトから使いたいファイルをライブラリに保存すると、そのライブラリがPremiere Proから参照できるんです。参照しているファイルはドラッグ&ドロップでPremiere Pro上に取り込むことができるし、必要なら素材の購入もできるんですよ。また、オーディオ素材はライブラリに保存不要で直接使えるんですよ。購入前にもタイムライン上で音を試すことができるので、作業効率が上がります。

もぎ:使いたい素材ファイルをわざわざダウンロードしなくていいのは効率よさそうですね。
山本:そのほかにも、After Effectsと連携すると映像内に映り込んでいる不要なオブジェクトを簡単に削除できるし、Premiere Rushと連携させるとスマホで動画編集ができるようにもなります。
もぎ:ほかのツールとシームレスに連携させると、かなり使い勝手が上がりますね。
山本:僕もいろいろ動画編集ソフトは使い分けているんですが、一番利用頻度が多いのがPremiere Proですね。やっぱり使い勝手がいいし、直感的に作業ができるんで。
もぎ:そうなんですね。よし、じゃあ僕も早速Premiere Pro使ってみますね!
Adobe「Premiere Pro」で簡単ハイクオリティ動画制作はじめませんか?

山本に話を聞いたもぎは、さっそく自分のノートPCにPremiere Proをインストールして、動画編集に取りかかった模様。Premiere Proは初心者向けのチュートリアルが充実しているので、自分で学習しながら動画編集を学べるのもいいですね。
他のAdobe製品に準拠したインターフェイスで操作性がよく、初心者でも簡単に使えます。それだけではなく、テロップが豊富で色味を直感的に調整できるためクオリティの高い動画を効率的に作ることができるPremiere Pro。これから本格的に動画編集をしようという人に最適です。
もしかしたら、もぎが作った動画が、近々YouTubeで公開されるかもしれませんよ!
Photo: 三浦一紀
Source: Adobe(1, 2, 3), Adobe Fonts, Adobe Blog, Adobe Stock