あれさえなければ最高なのになあ。キヤノンEOS R5レビュー

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あれさえなければ最高なのになあ。キヤノンEOS R5レビュー
Photo: Brent Rose/Gizmodo

ギリシャ最強の戦士アキレスみたいなカメラ。

…と言ってしまうと語弊があるけど、Canon最強のカメラEOS R5にも意外なアキレス鍵が潜んでいました。

Canon EOS R5

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これは何?:4500万画素で理想を極めたキヤノン最新フルサイズミラーレス

価格:$3,900(日本はボディのみで46万円

好きなところ:スティル写真はゴージャスそのもの。AFよし、ボディ内手ブレ補正よし。8Kと高画質4K 10bit動画も撮影できる

好きじゃないところ:動画内部記録でオーバーヒートしてリカバリに延々時間がかかる。動画の設定がしづらい。ダイナミックレンジも今一歩

キヤノン初のフルフレームミラーレスカメラ・ EOS Rが2018年に出たときには、期待のあまり酷評になってしまいました(大手3社でフルフレームミラーレス参入が一番最後になって、とりあえずあるものまとめて出した感が否めなかった)が、EOS R5ではRの問題が全部片付いています。電子シャッターで20fps、メカシャッターで12fpsの高速連写が可能。ボディ内手ブレ補正がついて、AFトラッキング性能も申し分なしです。

ハードも大躍進です。グリップが大きくて、DSLR使いが喜びそうなフォルム。EOS Rで不評だったタッチバーは消えて(やった!)、ジョイスティック採用で操作性がアップ(うっかり押しちゃうこともままあるけどね)。背面下部には親指で操作できるスクロールホイールも登場しました。個人的には4方向のDパッドとしても使えるSONYのほうが好みだけど、これもうれしい改善です。ほかのボタンとホイールもみな適度なクリック感です。ちゃんと間隔が空いているので、冬の分厚い手袋のままでも設定を調整できました。

レビューで使ったレンズは、CANONフルサイズミラーレス用F4標準ズーム24-105mmと、息呑む美しさのEF50mm f/1.2プライム(単焦点)レンズです。どっちも重くてゴツイけど、段違いの描写性能なので、少しぐらい重くてもまったく苦になりませんでした(特に50mmレンズ)。

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Photo: Brent Rose/Gizmodo

電子ビューファインダーは約576万ドットでフレッシュレート120Hzです。Sony α7S IIIのEVFの944万ドットには届かないながらに表示はスムーズかつシャープ。メモリースロットはCFexpressSD(UHS-Ⅱ)とCF Express Type Bのデュアルスロット採用ですよ。最新のCF Expressは高いけど高速転送が可能。4Kや8K動画の大容量データはSDカードに書き込めない場合もあるので必要になります。レビュー用に128GBの Hoodman Steel CF Expressカードを買ったら「動画の保存が自動停止しました。カードの書き込み速度が遅すぎます」というエラーが出っ放しで、大失敗でした。いちおう対応しているカードなのですが、ほかの人たちもこのカメラとカードの組み合わせだと同じ問題が起こるよーと言ってたので、ここは20ドルくらい余分にかかるけどソニー製カードにするのが正解のようです。

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Photo: Brent Rose/Gizmodo

EOS R5はキヤノン最新AFシステム「デュアルピクセルCMOS AF II」を搭載した初のカメラです。AFエリアはセンサの縦横100%に拡大しました。これがすごくて瞳AFの精度は圧巻! 動物も人物も瞳をしっかり捉えて離しません。やっとSonyの瞳AFに追いついた…というか、写真も動画も瞳がよく見えない角度になると自動的に顔検出に切り替わるので追い越したと言っても過言ではありません。AF感度は好みで調整できるし、 f/1.2のレンズだと適正露出の-6Evでもピントが合う…つまり、肉眼でモヤッとなる暗所でもクッキリ写るんですね。被写体が多いとひとつに絞れなくて困ることもあるけど、AFタップで追尾できます。

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1/8秒・f/1.2・ISO12800
Photo: Brent Rose/Gizmodo

初代EOS Rにはボディ内手ブレ補正がなくて残念だったんですが、R5は5軸の手ブレ補正が入っていて、自分がこれまで試したほかの機種並み性能です。レンズによって最大8段、7段、6.5段と補正段数は変わります。実測したわけじゃないけど、物撮りもブレがゼロ。上の写真では氷の先端、背景の星までシャッタースピード1/8秒できれいに撮れています。じっと手を固定するのは苦手なほうなのに!

写真はどれもきれいで、明るい写真はほぼ無修正でOKです。鮮明で生き生きしてて、リアルなのに映画みたいな空気感があって惚れますねー。

普段使いのSony A7R iiiより唯一残念なのはダイナミックレンジ、つまり1枚の写真で表現できる一番明るいところと暗いところの明暗差ですね。白トビからのリカバリもよくないし、影の表現も平坦です(より重要)。ディテールを出そうとするとノイズが入って紫がかっちゃうんです。Lightroomでノイズリダクションをキツくしなきゃならなくて、そうすると粗も隠せないし、輪郭もぼけてしまうしで、R5のダイナミックレンジはまあまあいいけど、飛びぬけていいってほどでもないです。

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1/1600秒・f/4.0・ISO125
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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3.2秒・f/22・ISO100
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/250 秒・f/4.0・ISO3200(RAWデータ編集前)
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/250秒・f/4.0・ISO3200(Lightroomで編集してみた。これ以上やると影に紫のノイズが入る)
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/8000秒・f/1.2・ISO100
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/100秒・f/1.2・ISO10000(暗くても動物瞳AFでいける。ただしノイズ除去はかなり必要)
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/125秒・f/5.6・ISO100(めちゃキレイ)
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/80秒・f/1.2・ISO12800(これもお気に入りの1枚だけど、これもノイズ除去はだいぶかけた)
Photo: Brent Rose/Gizmodo


いいこと尽くめじゃん。何がアキレス腱なの?

写真だけなら特に問題はないです。たま~に動画撮る程度でも無問題!なのだけど動画メインでR5を選ぶ人は発熱問題に注意が必要です。

EOS R5は30fpsで8K RAW動画撮れるのがセールスポイントです。これはさすがのSony A7S iiiにもできない技ですよね。まだ8Kなんて要らないって人も多いけど、R5では8Kで撮って超高精密な4K・最大30fpsのHQモードに圧縮できちゃう。しかもEOS Rみたいな1.7倍クロップ もなくて意図するとおりに撮れるし、Canon Log(フラットのカラープロファイル)で撮影する際には10bit 4:2:2動画を内部記録できるので、色補正を加えたり、シネマチックトーンにしたり、表現の自由度が違います。4K HQ C-Logモードは本当にゴージャスで、常時使用をおすすめしたいところですが、EOS R5は過熱問題がひどいので、それができないのが残念でなりません。

野外でスチル写真だけ撮るときや、短い4K HQ動画を撮る程度なら大丈夫なんですが、長めの動画は撮りたくても撮れなくて、試しにHQモードで撮ってみたら24分でオーバーヒートしちゃいました。それも悲しいけど、もっと悲しいのはリカバリが遅いこと。普通に戻るまで長くて1時間もかかるんですね。それでやっと1、2分以上撮れる状態に戻る感じなので、仕事で撮る人や結婚式の記録係はその場でクビかも。僕はインタビューやドキュメンタリーでよく撮るんですが、そういうシーンでも使い物にならないし、Vloggerもこのカメラではちょっとキツイと思います。

Video: Brent Rose/YouTube

標準の4Kモードはどう?

4Kは熱問題なし。見た目もOK…と思ってHQの映像と比べてみたらディテールがかなり落ちていました。ほかにも難点がいろいろあって、8KとHQ 4Kをあれだけ押していたのに録画機能は実は後付けだったのかも…と思ってしまいます。スチル撮影から動画モードに切り替えるのもちょっと大変で、スチル撮影モードで録画ボタンを押すとすぐ動画は撮れるんだけど、前回の設定がデフォじゃなくて、1080p30の設定になちゃうんです。設定は変えられるのかもしれないけど、やり方がわかりませんでした(キヤノンに問い合わせてもお返事はなかったです)。4K・120fpsの高フレームレートモードもあるのにカメラ側で30fpsにスローダウンしちゃうので、残りの動画が24fpsとかだと、すごく困るんですね。動画撮影モードの切り替え(HQ、高速、C-Logなど)もややこしくて、無駄なクリック多過ぎと感じました。

それやこれやでイライラしっ放し。本当はこの製品で、キヤノンの豪華レンズのエコシステムに戻る気満々だったし、仕様を見る限り、その期待に十分応えるカメラなのですが、自分は写真も動画も大量に撮るハイブリッドなんですね。一部の例外を除けば、今はそれがコンテンツクリエイターの間では暗黙のルールになってきています。でもこうした需要に応えたカメラとは言い難いのです。本来はそれに応えられるまでローンチは見合わせるべき。そう思います。SonyだってA7S iii発売に漕ぎ着けるまでには気の遠くなるほどの年月をかけましたが、発売時にもう10bit 4K120が撮れる状態になっていたし、発熱問題もなかったです。

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1/800秒・f/5.6・ISO 100
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/125秒・f/4.0・ISO 640
Photo: Brent Rose/Gizmodo


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1/80秒・f/4.0・ISO 640
Photo: Brent Rose / Gizmodo


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1/20秒・f/4.5・ISO 125。光学手ぶれ補正が機能しているもうひとつの好例
Photo: Brent Rose / Gizmodo


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1/320秒・f/5.6・ISO 100。Lightroomで調整しています
Photo: Brent Rose / Gizmodo


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1/500秒・f/4.0・ISO 12,800。カリカリの写真ですが、ノイズ除去はかなり必要でした
Photo: Brent Rose / Gizmodo


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1/800秒・f/2.8・ISO 100。めっちゃフィルムっぽい
Photo: Brent Rose / Gizmodo


写真がメインで、動画はサブの人には自信をもってオススメできます。特にCanonのレンズを持っているなら絶対買い。撮って楽しく、美しい写真が撮れます。動画を長く撮りたい人にはやや肩透かしと言わざるをえません。8KもHQ 4Kも感動的な美しさだけど撮れる絶対数が少ないんですね。特に高精密な8Kの映像をしょっちゅう撮る人には悲報です。発熱問題ではだいぶ矢面に立たされているキヤノン。きっとMark II向けには解決に全力を挙げていると思います。全競合のパイが減るかと思っていたんですが(そのポテンシャルはあった)、それは今後に期待、ですね。

5秒でまとめると

・4500万画素RAW写真はゴージャスそのもの。非圧縮で最大12fps(圧縮で20fps)

・こんないい瞳&顔トラッキング使ったことないぞ

・光学手振れ補正だから全方位思いのまま

・8KとHQ 4Kはものすごくキレイ。ただし熱問題あり

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