夢の世界と交信できるかも、という研究

夢の世界と交信できるかも、という研究
Image: K Konkoly

夢と現実の境って実はそこまで大きなものではないかも…?

夢の中にいる人と交信するってSF映画に出てきそうな設定ですが、映画だけの話じゃなくなるみたいです。

明晰夢を見ている人とのコミュニケーションが可能であることが新たな研究で明らかにされました。発表によると、夢を見ながらでも顔や目の動きを使って、「はい」か「いいえ」の簡単な質問に答えたりちょっとした計算ができたとのこと。驚きですよね。さらに起きた後に質問を覚えている人までいるんだそう。

どうして夢の研究を?

睡眠にはその日の出来事を整理し記憶する役割があるのですが、このプロセスの大部分がいまだに分かって いません。そこで、今回の発表を行った認識科学者Ken Paller率いるノースウェスタン大学の科学者たちは、睡眠中に見る夢を研究することで、この謎を解明しようとしているわけです。彼らの主な研究テーマは“どうして人は夢を見るのか・夢と心の関係”の2つ。加えて、“睡眠の認知と記憶の質の関係”も調査中とのことです。

この夢の研究、やっかいなことのひとつが多くの人が夢の内容を覚えていないこと。覚えていないものを研究するってすごく無茶な話ですから。

そこでPallerたちは、夢を思い出してもらうのではなく、眠っている人と直接コミュニケーションを取ることで研究を進めようとしてきました。こうして彼らは睡眠中でも人が外部の音の影響を受けると証明することに成功。さらに、明晰夢を見ながらでも目の動きで外部に信号を送ることができることも明らかにしました。(2018年の研究によると、目の動きは明晰夢を見始めた時の合図として使われたようです。)

会話とまではいかなくても、睡眠中に夢遊病や寝言などを経験したことがある人は多いですよね。しかし、Pallerたちが研究している「会話」はこれらとは全く別物のコミュニケーション。だからこそ経験者がとても少なく、研究が難しいのです。

と、ここまでPallerたちにのみ視点を当ててきましたが、フランスやドイツ、オランダの研究チームも実は同じようなことを試みていました。これを受けてPallerは“それぞれのチームはバラバラで研究を進めていたが、内容が似ているため、この機会に協力して研究結果を発表する”と決断し、 今回の発表にいたりました。

夢を見ている人と会話できたかも

ここからは研究の内容をさらっと。まず、研究に参加したボランティアは全部で36人。明晰夢の経験は参加者によりまちまちです。例えば、ナルコレプシー(居眠り病)を持つ少年は明晰夢をよく見るそうで、彼がレム睡眠(もっとも夢を見るとされている状態)に入るまでかかった時間は約20分。一方で経験がゼロの人々は、睡眠中に一定のサウンドを聞くと明晰夢に入るようにトレーニングを受ける必要がありました。コミュニケーションの取り方は光や言葉などはそれぞれのチームで違い、脳を活動を記録する脳波計も使用されたとのこと。

結果として、57回のセッションのうち、被験者が明晰夢に入ったことを伝えるのに成功したのは全体の26%。さらにそこから、質問に正確に答えることができたものは2分の1ほど。最終的に、全158回の質問のうち、正確な回答が得られたものは全体の18%でした(大半が回答なし)。

実験後には、夢を見る直前に聞いた指示や夢を見ている間の質問を覚えていたと話す被験者もいたとのこと。これ以外だと、ラジオや夢の外から声が聞こえくる感覚を覚えた人もいたようですね。もちろん何も覚えていない人もいましたが。

このように結果自体はとても興味深いですが、被験者の数の少なさは忘れてはいけない点です。これに対しPallerは“今回の研究で相互的なコミュニケーションが可能だと立証できた。同じような研究結果がいくつかの国で得られたことが何よりの証拠だ”と言っていますが。

現在Pallerは、より信頼性の高いデータを求めて“普段と環境の違う実験室ではなく、自宅での実験を試みている”とのことです。その方法の一つがアプリを使って明晰夢に入る指示を出すというもので、すでに使用できるので気になる方はこちらから。

アプリの導入で研究が進めば、夢の謎が解けるとともに、起きている間にどんな影響を受けているのかも分かります。さらに研究結果を応用して睡眠の質を改善できれば、人生全体にたくさんの良い影響があるはずです。睡眠は人生の時間の約3分の1を占めていますからね。Pallerは“この研究は、様々な精神病の治療などに役立てることができる”とも言っていますし、研究がこれからどのように進んでいくのかがとても楽しみです。

あわせて読みたい