吃音症の人から見たクラブハウス

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  • author satomi
吃音症の人から見たクラブハウス
Image: Clubouse

何秒か言葉に詰まっただけで退室される恐怖。

そんなクラブハウス(Clubhouse)などの音声SNSと、吃音症の人はどう付き合っているのか?

疑問に答える素敵な記事がSlateに出ていました。書いたのは小さなころから吃音症のハーバード大医学部の学生Lawrence Weruさんです。大人になってだいぶ人前で話すことには慣れましたが、それでも完全には抜けてはいません。

本読みが恐怖

吃音症は「見えない障害」と言われるように、傍目には普通の人と全然変わらないので、吃音症ではない人の物差しで「コイツわかってないな」と決めつけられたり、「腹に一物ありそうだな」と勘ぐられてしまったりするのが悩み。

Revuさんも小学校の本読みの時間はとても苦痛で、当てられる順番を数えるのに忙しくて、授業なんてまったく頭に入っていなかったといいます。

「とにかく人数を数えるんだ。で、自分が当たる段落を、目を皿にして探す。どうせ死ぬのに。文章の意味はわかる。発音も一字一句全部頭に入っている。なのに話すと、認識しているように話せない。そんな地雷がどの段落のどの行にも埋まっているのだ。ほかの子は器用によけていく。それがどんなに恵まれてることかも意識していない。それに引き換えこっちはどうだ。だれかが段落読み終えるたびに自爆のカウントダウンで、心臓はバクバクだった」

文字なら普通に言いたいことが言える

転機が訪れたのは中学のときです。図書館で女子の友だちに「自分で作ったWebサイト」を見せられて「Webサイトって自分で作れるんだ!」と目の前に世界が開ける気がしました。それからはネットの文字入力で、思ってることを思ってるままに発信できるようになり、TEDの大舞台で話す機会も得ることができました。文字で対等に渡り合えるインターネットは、吃音のない世界。「話し方」で差別されることもありません。

ただ、生活するなかでは苦手分野もあります。たとえば…

・電話の自動音声:言葉に詰まって前に進めない。

・SiriやAlexaなどの音声コマンド:黙ってると用がないものと判断され、終了になっちゃう。

そういう怖さが身に染みているから、音声SNSも聞き専です。それしかないと思っていたんですね。こういう理不尽なことを「自分が人と違うのだから仕方ない」と受け入れて、自分の中だけで処理してしまうことを英語で「internalize(内在化)」と言いますが(最近アジア系に対する人種差別を語るときにもよく出るキーワード。我慢すればすべて丸く収まる…と思って黙っていたら、逆にエスカレートしたため、声を挙げる勇気が叫ばれている)、まさにその状態でした。

吃音症の同志がステージに上がって起きた奇跡

ところが少し考えが変わる出来事が最近ありました。それはアトランタでマッサージショップ3店が乱射犯に襲われて、アジア系の女性6人を含む8人が殺された数日後のこと。Clubhouseでアジア系差別を話し合う#StopAsianHateのルームには、世界中から1,000人以上もの人たちが集まっていて、Revuさんも早起きして会計処理の雑務をこなしながら聞いていたんですが、途中で吃音症の人がステージに上がるという、それまで経験したことのない「異変」が起こったのです!

たちまち会場はゾワゾワしはじめた。普通のルームならそれで終わりだろうけど、ここは差別を話し合うセーフゾーン。みなインクルーシブだ。こんなところに、吃音症の仲間がほかにもいたのか!やっと出会えたな。思わず身を乗り出して聞き入った。

ステージに上がったJozeさんという男性は「マイクの不具合じゃないです」と前置きして(言い慣れてる気がした)、おもむろに話しはじめた。それにしてもひどい訛りだ。ひとこと、ひとこと絞り出すようにして、こんなルームを立ち上げて、声を上げてくれたことに感謝します、と彼は続けた。自分も「訛りがあるから」生まれてこのかたずっと人前で話すことを避けてきた。でも、歌うと不思議と訛りは出ないのだという。ルーム全体が歌っていいよと言うので、ひとつ歌ってみせた。その歌には僕らが直面する苦しみと、声を挙げることの大切さが込められている気がした。

会場は言葉を失ってシーンと静まり返っている。そして、割れんばかりの拍手。男性はいつもの声に戻って「ありがとう。これでやっと吃音とおさらばできそうです」と少し冗談を言っていた。

以上がClubhouseを毎週数時間聞いて、49日目にしてやっと出会えた吃音の人@オンステージの瞬間でした。

吃音の人は意外と多い

声帯や音声言語機能の障害(はなしことばの障害) を抱えるアメリカ人は推定1900万人以上いて、大人になっても吃音に悩むイギリス人は約150万人もいます。有名どころでは世界一の富豪イーロン・マスク、ジョー・バイデン大統領も昔、吃音症だったことで知られます(大統領選では吃音症が攻撃材料に使われたけど、めげずに戦う姿が吃音の人たちに勇気を与えた)。

ルームで挙手するときは普通の人だって心臓バクバクです。ましてや、吃音の不安があったら、トロいと思われて馬鹿にされるのも嫌だし、ほかの人の迷惑になるのも気が退けるしで、挙手アイコンは遠のくばかりですよね…。

Clubhouse誕生から4月で1年。エクスクルーシブなSNSもいいけど、もっとインクルーシブな仕掛けがあったらもっと楽しいのに、と思わずにいられません。2年目に期待かな。

Sources: Slate

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