先週の日曜、火星のヘリコプター「インジェニュイティ」がまたもや快挙を遂げました。 NASAはインジェニュイティが同日に実施された3度目のテスト飛行に成功して、地球で行なったテストよりも速くそして遠くまで飛べたと発表しています。
今後の火星ミッションに欠かせない能力を実証
インジェニュイティが3度目のフライトを行なったのはアメリカ東部時間4月25日午前4時31分でしたが、NASAがデータを受信し始めたのは10時16分でした。インジェニュイティは2回目のフライトと同じ5メートルの高さまで上昇し、予定経路に沿って50メートルの距離を飛行。フライトは80秒間に及び、その間に最高速度は2メートル/秒に達しました。
金曜日にはNASAのジェット推進研究所でインジェニュイティの主任パイロットを務めるHåvard Gripさんが、同ヘリコプターのチームのやり方は初めから、準備して飛ばしてデータを分析したら「次のフライトにはもっと大胆なテストを計画する」ものだったとステータスアップデートで語っていました。
今回のフライトと先週木曜に行なわれた2度目のフライトを比べれば、Gripさんの発言が冗談ではなかっと分かるでしょう。ほんの数日前、インジェニュイティは51.9秒間のフライトで東に2メートルに飛んでから戻ってきました。それからわずか数日後には、80秒間のフライトでフットボール場の半分近くの距離を飛行したのです。
NASA本部でインジェニュイティ火星ヘリコプタープログラムの高官を務めるDave Laveryさんは日曜にNASAが出したニュースリリースの中で、「今日のフライトは計画どおりだったが、素晴らしいというほかない」と語っていました。「このフライトで我々は、今後の火星ミッションに空からの切り口を加えるうえで欠かせない能力を実証している」とのこと。
撮影した画像にはパーサヴィアランスの轍も
今回のフライトでは、モノクロのナビゲーションカメラが撮影した画像の処理能力もテストされました。これはインジェニュイティの真下で火星の地形をトラッキングするデバイスになります。インジェニュイティのフライトコンピュータも「カメラ類と同じリソースを利用」していて、自律飛行を行なうにあたり前もってNASAからの指示を受信しています。
インジェニュイティのカメラは距離が長いほど多くの画像を撮れるとNASAは説明していますが、飛行速度が速すぎると飛行アルゴリズムが地形を追えなくなってしまいます。地上ではどの方向にも0.5メートルほどしか動けないような狭い真空室でしかインジェニュイティを試せませんでした。地球の1%しかない火星の希薄な大気を再現するため、真空室は二酸化炭素を主とした薄い大気で満たされていたのです。
3回目のテスト飛行にはこれまでの記録を超える速度と範囲が計画されたので、インジェニュイティのカメラが設計どおりに地面をトラッキングできるか確信がありませんでした。
ジェット推進研究所でインジェニュイティのプロジェクトマネジャーを務めるMiMi Sungさんはニュースリリースで「カメラ用のアルゴリズムが長い距離で機能するのを見たのは今回が初めて」であって、「これは真空室の中じゃできないこと」だと感想を述べています。
さらに同チームは、カラーカメラなどでもっと写真を撮るよう指示を出してインジェニュイティの限界を押し広げました。NASAは2回目のフライトで撮影されたカラー写真を公開したばかりで、下記の画像からは探査車パーサヴィアランスの跡も見て取れます。

インジェニュイティは現在、火星の30日間(地球だと31日間)にわたって薄い大気内で飛行をテストする技術デモンストレーションを遂行中。この期間中には5回のテスト飛行が行なわれる予定で、NASAによれば近いうちに4度目のフライトが計画されるとのこと。
Source: mars.nasa.gov (1, 2), jpl.nasa.gov, YouTube,