NAQUYOに京都、そしてアートの未来をみた
ブルース・スプリングスティーンの名物マネジャーじゃないが「僕はフェスティバルの未来を観た」というようなパフォーマンスを体験しました。
なぜ感動したのかということを自動書記のように書きますと、音楽とビジュアルにリンクするアート、サウンドスケープ、都市空間。テクノロジーが交差し、千二百年という都市としての歴史を持つ京都の過去と未来が一つに繋がり、コロナで身体性と精神を失った自分がまた世界と繋がる希望を持てました。
「お前は何を言っているのか」と思ったかもしれませんが、このパフォーマンスをドミューンでストリーミング体験した人も多いのではないでしょうか。現場、ドミューンで体験した方は僕の言っていること分かりますよね。
NAQUYO#3、#4の映像はこちら
NAQUYO#1と#2の映像はこちら
僕が言っているフェスというのは、京都で開催されたアート×サイエンス・テクノロジーの祭典「KYOTO STEAM -世界文化交流-」の一環として行われた MUTEK.JPのコラボレーションによるアートプロジェクトNAQUYOなのです。
「KYOTOSTEAM−世界文化交流祭−」は、アート×サイエンス・テクノロジーをテーマに文化芸術の新たな可能性と価値を世界に問う新しい形態の国際的な文化・芸術の祭典。そして、MUTEKというのはカナダのモントリオールを拠点に世界中にネットワークを広げながら、テクノロジーによって進化した音楽の突然変異をギリギリの線で追い続け、コンテンツについて対話する世界を発信し続けるフェスをやっている人たちです。世界に誇る文化都市・京都で、このコラボレーションが実現したんです。

平安京の音宇宙を想像し、創造するイベント
京都という街が風水によって守られていた(今も守られていると思うけど)ということはたくさんの人が知っていると思います。陰陽師ですね!
実は京都が音によっても守られていたということも発見されているのです。やばくないすか、音でも守られているなんて。詳しいことは、この発見をされた大阪市立大学都市研究プラザ特任教授中川真先生の名著『平安京 音の宇宙-サウンドスケープへの旅』を読んでもらいたいです。
簡単に書きますと、南のあるお寺の鐘の音はA音(ラですね)をかなで、東の鐘はG音(ソ)という感じで東西南北中心で5音の音で調律されていたというのです。街を歩けば音と音が交差して、ハーモニーが奏でられていた可能性があるのです。マッサージを受ける時に癒しの音楽かけられたりするじゃないですか、あんな感じで街全体を癒していたというのです。画期的! 癒されたいわ。
サウンド・アーティストのKazuya Nagayaとトルコ出身のビジュアルアーティストAli M.Demirelのコラボレーション。オーディオビジュアルアーティストJunichi Akagawaと京都拠点のダンスチームnousesの片割れ、山本晃ことnouseskouとのコラボレーション。そしてエレクトロニック・ミュージックアーティストのYuri UranoとビジュアルアーティストManami Sakamotoの3組がそういった歴史を踏まえ、「京都の音」をサウンドスケープし、演奏とかパフォーマスなんて言葉が陳腐に感じるような、都市と時間を感じさせる作品を体験させてくれました。
Ali M.Demirelの新しいサイケデリックのような映像とリチャード・ロングのインスタレーションのように配置されたたくさんの鐘の中で、アンビエントでチルな演奏をされたKazuya Nagaya。

iPhoneなどの身近なテクノロジーを使ったJunichi Akagawaと山本晃ことnouseskouが天井桟敷(寺山修司ね)のハプニングとコンテンポラリー・ダンスを混ぜながらもヒップホップやテクノのストリート感を失っていないパフォーマンス。

Yuri Uranoのアンビエントからハードなテクノにグラデュエーションするサウンドとたぶんタッチデザイナーで作られたであろうManami Sakamotoの映像が見事にシンクロしたセットは、これから世界中でもっと話題になっていくのではないでしょうか。

パフォーマンスのリバースエンジニアリング=ワークショップ
こうして楽しんだわけですけど、僕が一番楽しかったのは、次の日に、今回参加したアーティストたちがワークショップをしてくれたことでした。舞台裏を見せてもらえるような、今回のイベントの趣旨を直接アーティストから聴けるような貴重な体験をさせてもらえました。欲を言えばワークショップの後にもう一度、パフォーマンスがあったらもっと面白かったのかなと思いました。





今回は京都というキーワードで作られた文化フェスティバルでしたが、このパッケージで世界中の都市を巡って行けば、その都市での新しいコラボが出来るんじゃないかと妄想しました。それは彼らの表現がエンターティメントからアートの領域に入っていっているからかなと、そしてそのインタラクティヴさに僕は新しいフェスの姿と、過去の都市に生きる人々の息遣いと現在の僕らの世界と、未来の都市を観たのです。
Source : NAQUYO-平安京の幻視宇宙- , MUTEK JP | 電子音楽とデジタルアートの祭典
取材協力・KYOTO STEAM-世界文化交流委祭-実行委員会 、MUTEK.JP