AppleがどのプロダクトにもM1チップを搭載するのは、自分から見ると本当に奇妙だ

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  • author Joanna Nelius - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
AppleがどのプロダクトにもM1チップを搭載するのは、自分から見ると本当に奇妙だ
Screenshot: Apple via Gizmodo US

いろんな意味で、ゲームチェンジャーかも。

昨日のAppleイベントでお披露目された新しいiMacは、どれも綺麗な色ばかりで目を奪われました。プロセッサがM1になった以外にも、給電用のケーブルが磁石でくっつくようになったり、ACアダプターにイーサネットポートが付いたりいろいろ小ワザが効いていて、しかもわずか11.5mmの薄さにまでサイズダウン。刷新されたデザインは派手すぎず地味すぎず、長年アップルを使っている人にもそうでない人にもアピールしつつ、歴代iMacの流れの中でひときわ際立つ存在に仕上がっていました。

中身はすべてM1チップ

しかしながら、中身のハードウェアに関していえば、Appleに攻めの姿勢は見えませんでした。M1チップがデビューしてからまだ一年と経っていない今、新しい自社製チップを世に送り出す必要性を感じていなかったのかもしれません。なので、以前から噂されていたようなM1チップのモンスター版はお目見えしませんでした。

結局新しいiMacに搭載されていたのは、8つの高性能コアと4つの高効率コアから成る12コアCPU…、はたまた256 EU(Execution Unit:実行ユニット)を備えた16コアGPU…、とあれこれ妄想されていたモンスター級プロセッサではなく、おなじみのM1チップでした。そう、MacBook ProMacBook Air、Mac Mini、そしてあの新しいiPad Proにも搭載されているのと同じやつです。

奇妙ですよね。長年のAppleファンはそういうもんだろうって思ってるかもしれませんけど、PCユーザーの自分からしてみたら、全部同じチップが入っているなんてとても奇妙に思えます。というのは、MacユーザーにしろPCユーザーにしろ、今まではどのパソコン製品も中身=プロセッサ構成が多種多様でした。そして、ハイエンドな(そして高価格な)パソコンほどハイエンドなプロセッサが搭載されているものと誰もが当たり前に思っていました。ところが、AppleのM1チップの展開ぶりを見ていると、今まで当たり前だと思われていたアプローチがくつがえされたことに気付かされるのです

ハードウェアのシームレス化

順を追って説明させてください。まず、インテルを搭載した27インチiMacを例に取ってみましょう。プロセッサは6コア、8コア、または10コアのいずれかを選べます。オプションとして、Turbo Boost使用時のクロック数を5.0GHzに変更できます。それぞれのモデルに違うGPUが搭載されていて、それぞれクロック速度とVRAM数値が異なります。私みたいなPC好きは、こういう細かいスペックをつぶさに吟味するのに慣れきっているので、コア周波数を100とか200MHz上げてみたらどれぐらいのフレームレートを叩き出せるか分析したりするわけです。その上で、10コアのプロセッサを搭載したマシンを選んだら、それだけ値段が上がることも知っているわけです。

ところが、この考え方はもはやmacOSとiOSデバイスには通用しなくなってきています。M1チップ搭載デバイスの価格を考える時、ストレージやDRAMに関する選択肢を除いたら、中身に何が入っているかだけじゃなくてそのデバイスの大きさに比例して価格が上がっていくようなので。これまでの常識では、ラップトップでもデスクトップでも大小問わず(ゲーム用PCの場合はより顕著)、中身によって価格がほぼ同じだったりすることもあったというのに。

Macユーザー、特に所持しているデバイスすべてをAppleのエコシステムで統一している人にとってみたら、それぞれのデバイスに同一のプロセッサが内蔵されるとパフォーマンスに一貫性が生まれます。Appleはデバイス間をシームレスに行き来することを重要視しているので、これまでもソフトウェアの一貫性を見事に実現してきました(最近ではアイコンに至るまでmacOSをiOSの見た目に近づけてきているぐらいです)。さらに、ソフトウェア面で実現していたシームレスな環境が、今度はハードウェアにまで広げられようとしているのです

PCとの差別化

今一度、発表されたばかりのiMacとiPadを見てみましょう。どちらも同じ8コアのM1プロセッサが搭載されており、機種によっては7コアか8コアのGPUが備わっています(価格が低いほうが7コアです)。MacBook Pro、MacBook Air、そしてMac Miniもすべて同じ仕様となっています。これにより、直感的で操作しやすいデバイスを作ることに関してはすでに評判の高かったAppleは、さらにWindowsやその他のPC市場と差別化を図ることに成功しました。自社製チップを手に入れたAppleにとって、もはやインテルCore i5とインテルCore i7のパフォーマンスの違いを機種ごとに反映したり、「コア」と「スレッド」の差異について説明したりする必要がなくなったのです。M1はM1です。Apple製品を使う人は、それだけ知ってさえいればよくなったのです

インテルやAMDだと、ひとつのデバイス内に様々なプロセッサが入っています。Appleだと、ひとつのプロセッサが様々なデバイスに入っています。ですから、これからAppleデバイスを買おうとしている人にとってみたら、もうプロセッサの種類が多すぎて悩む必要がないんです。どのデバイスを選んだとしても、内蔵されているプロセッサが同じなので、パフォーマンスもそこそこに同じだと期待できますから。

一方で、PCに搭載されているプロセッサは千差万別で、価格もピンからキリまで。CPUにGPUが統合されたものも、されていないものもありますし、特定のマザーボードやチップとしか連携できないCPUもあります。ここまではデスクトップのみに関して言えることで、さらにラップトップともなればまったく別のエコシステムが存在しています。もともとハードウェアに詳しくない人や、ここ数年PC市場の動向を追えていなかった人にとってみたら、まるで資格試験のために勉強するかのような情報量の多さです。

今はM1だけでいい

今回のAppleイベントに際して、Appleが12コアのモンスター級プロセッサを新しいiMacに搭載しなかったのは、もしかしたら単に時間が足りなかったからかもしれません。または、コロナ禍において世界的な半導体不足が叫ばれている中、新しいチップを展開していくのに慎重にならざるを得なかったのかもしれません。たしかに新しいiMacを世界に向けて発表したところで、いきなり部品調達が困難なせいでサプライチェーンが破綻してしまったらみっともないですからね。そういう事情もあって、今のところはM1チップに的を絞って数量を確保したいのかもしれません。また、もしかしたらですが、12コアのM1チップは未来の27インチiMacのために温存しているのかもしれません。

いずれにせよ、今のAppleにはM1以外の自社製チップは必要ないでしょう。しばらくは現状維持で、半導体不足の難を乗り切りつつも、さらにたくさんのプログラムやアプリがM1プロセッサにネイティブ対応してくれるのを待っていられる余裕があると思います。

そして、いずれ12コアのモンスター級プロセッサをデビューさせてくれたら、その時こそは全PCユーザーがAppleの偉大さをリスペクトせずにはいられなくなるでしょう。

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