VRの楽しさと新作とオンラインフェスについて、ポーター・ロビンソンに聞いてみた

  • author Jun Fukunaga
VRの楽しさと新作とオンラインフェスについて、ポーター・ロビンソンに聞いてみた
GIF:ギズモード・ジャパン

VRについて話すポーター、楽しそう。

日本をこよなく愛する音楽プロデューサー、ポーター・ロビンソンが、4月23日(金)に7年ぶりとなる最新アルバム『ナーチャー』をリリースしました。

収録曲「ミラー」のMVでは、オンラインで出会った日本のイラストレーターのHotaらをフィーチャー。そして、ポーター自身が大ファンだったという水曜日のカンパネラを迎えた楽曲「フルムーン・ララバイ」を日本盤のボーナストラックとして収録するなど、ボーダレスにつながった才能ある仲間たちとの関係を大切にしながら作り上げられた1枚でもあります。

また、最近彼が傾倒するVRを始め、さまざまな最新テクノロジーの影響を表現に取り入れたことで、これまで以上にそのクリエイティブが進化。かつて日本のアニメやゲームの影響を感じさせたその世界観は、本作をきっかけに圧倒的にオリジナルなものへと変貌を遂げています。

先日、今年もポーター主催のフェス「Secret Sky」がバーチャルフェスとして開催されることが発表されました。昨年はオーディエンス同士がオンライン上で交流を深めるためのデジタルオーディトリアム導入も大きな注目を集めましたが、今年はそんなフェスのアイデンティティたる部分も、さらに進化することになるといいます。

ギズモードでは、アルバムリリースと主催フェスの開催の話を聞くべく、彼にオンラインでのインタビューを依頼。最新アルバムで取り入れられたテクノロジーを始め、VRの世界からの影響、さらには今年の「Secret Sky」の注目ポイントまで、話を聞きました。

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Photo:ギズモード・ジャパン

クリエイティブとテクノロジーの関係

──『ナーチャー』のリリースおめでとうございます。前回取材させてもらった2020年5月にはすでにリリースの発表をされていましたが、ここまでの間にどんな心境の変化がありましたか?

ポーター・ロビンソン(以下、ポーター):1年分長く時間を得られたのは、実はラッキーだったんじゃないかと思うんだ。僕の創作活動でよく起こることなんだけど、〆切直前になってたくさんのアイデアが生まれてしまう…みたいなことがあるから。ベストな曲はだいたい、最後の瞬間に生まれたものが多いよ。「サッド・マシーン」はアルバム『ワールズ』の〆切直前になって書き上げたし、『ヴァーチャル・セルフEP』の「ゴースト・ヴォイセズ」もそう。今作『ナーチャー』の場合も「ミュージシャン」とその他数曲が、最後の最後のインスピレーションの爆発をもとに作り上げたものなんだ。

──アルバムからの先行シングル「ミラー」では、Live2DとAR技術を駆使したMVが印象的でした。このようなテクノロジーを表現方法として使った理由を教えてください。

ポーター:もともと主観的なものにしたかったのとVRの影響もあって、ARを取り入れたんだ。でも1番大きな理由は、コロナ禍の影響で大きな舞台セットを使うようなハイプロダクションなものを作るのが難しい状況だったということだね。

Video: Porter Robinson/YouTube

──MVでは日本のクリエイターを起用していますが、どのようにして彼らを見つけ出したのですか?

ポーター:日本のイラストレーターのHotaさんは、Twitterで見つけて知り合いになったんだ。僕はたまに自分のフォロワーがどんな人か知りたくてランダムにみんなのプロフィールを見ることがあるんだけど、その時にHotaさんのプロフィールがたまたま目に止まった。

『ナーチャー』では、子どもが書いたようなウニョウニョした線のデザインを取り入れることが多いんだけど、彼の描くあどけないタッチのイラストがその世界観とマッチしているなと思ったし、ほかにも彼の作品の中には2Dでキャラクターが動くGIFもあって、それがすごく印象的だったんだ。ただ、そのGIF自体は動いているといってもMVのようにリップシンクするような高度なものではなく、イラストの表情が変わるくらいの簡単なもの。でも、その映像にすごくインスパイされたことががきっかけになってMVのアイデアが生まれたんだよ。

MVは最初、自分が自然の中を散歩中に背景の映像が切り替わり、それにあわせてアバターが歌いだすよ うなものをイメージしていたんだ。でも、それをどうやったら再現できるかわからなくて再現方法をリサーチしていたところ、VTuberが使うLive2Dを使ってアバター動かすアイデアを思いついたんだよね。

その時にアバターアニメーターのBrian Tsuiを見つけて、彼に自分のアイデアが実現可能か相談したところ「そういったスケッチぽいものでもアニメーションにすることは可能だ」と言ってくれたんだ。だから、実際に自分が歌っている動画をまず撮影して、その中から抜粋したいくつかの自分の動きを組み合わせながら、アニメーションを作っていった。

──MVには他にもクリエイターが参加していますが、あなたがチームをまとめる形で制作したのですか?

ポーター:僕は全体を監修する立場だったけど、キャラクターイラストはHotaさん、Live2DはBrian Tsui、それと映像に出てくる手書きの花や星などのデザインはLA在住の日本人クリエイターShun Kinoshitaさん、VFXはサンフランシスコ在住のAdam Petke、実写映像はSteve Milliganというように、各地に住むクリエイターがそれぞれ担当してくれた。僕自身はノースカロライナに住んでいるんだけど、それぞれ違う場所に住むクリエイターがオンライン上で集まってひとつのものを作り上げていく制作スタイルは、コロナ禍の今だからこそのやり方だったなと思うよ。

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──日本盤のボーナストラックでは、水曜日のカンパネラをフィーチャーしています。彼らの日本的な情緒ある歌と歌詞があなたの作品にすばらしいケミストリーを生み出していますね。

ポーター:もともと、僕自身が彼女たちのファンだったこともあってコラボをオファーしたんだ。

コラボを思いついたころの僕は、制作が思い通りにいかず煮詰まっていた部分があって。水曜日のカンパネラのコムアイは、何事にも縛られない“フリーマインド”な人だから、それがその時の僕とは対照的で、コラボすることで刺激になると思った。

ただ、実際作業を進めるなかでお互いの話をしていると、共通する部分が多いこともわかったんだけどね。例えば、僕が住むノースカロライナとコムアイが住む東京の緯度がほぼ同じだったのも、おもしろいよね。

──ウェブサイトでは、ユーザーが自由にコミュニケーションしたり、アート活動を楽しめたりするようになっています。ここに込められた思いは?

ポーター:『ナーチャー』のアイデアのひとつに、「窓から自然を眺めているような感覚」というものがあるんだ。見る人に文字情報や意味といったことを離れて自然の美しさや、郷愁といった感覚を感じてほしかった。だから、このウェブサイトはテクノロジーを使って現実を美しく切り取ったものだと言えると思う。

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『Nurture』仕様となったポーターの公式サイト

──今年もオンラインフェスティバルとしてSecret Sky.を開催するそうですね(アメリカ時間2021年4月24日)。今回は、昨年このフェスのアイデンティティにもなったアバターシステムに加えて、オキュラスなどのVRデバイスを使うことでVRでも楽しめると聞きました。

ポーター:前回もバーチャルフェスとして開催して、YouTubeやTwitchからでも視聴できる形になっていたんだけど、それとは別にオーディエンスがアバターを使って交流するためのデジタルオーディトリアムを作ったんだ。ただ、それは最後の最後に出てきたアイデアだったから、個人的にはちょっと詰め切れなかったなって思いもあって。

だから、今回はそのデジタルオーディトリアムをアップデートして進化させることで、よりリアルなフェス体験ができるものにしたいと思っているんだよ。今回も前回同様、『ナーチャー』のウェブサイトを制作してくれたActive Theoryに協力してもらいながら、今、そのための作業をしている真っ最中だね。それと、今回はVRにも対応するからVRヘッドセットを持っている人は、より没入感のあるバーチャルフェス体験ができるはずだよ。

──今回のご自身のセットはどんな内容で準備していますか?

ポーター:今年はライブで多くの曲を歌うつもり。僕には今、ステージに立って自分自身を表現しなければならないという強い思いがあるんだ。ライブパフォーマンスの無防備さと存在感を感じたいんだ。昨年はDJセットでのパフォーマンスだったけど、今年はライブになる予定だよ。

シークレット・スカイ_フライヤー写真
Image:Porter Robinson's Secret Sky.

今、もっとも興味のある世界はVR

──事前にお送りした「今、興味のあるキーワードは?」との質問のお答えは「VR」でした。普段、VRコンテンツを楽しむ時はどんなプロダクトを使っているんですか?

ポーター:よく使うのはPCに繋ぐタイプのVALVE INDEX(バルブ・インデックス)か、ワイヤレスで使えるOculus Quest(オキュラス・クエスト)のどちらかで、大体半々の割合で使っているよ。

僕は音楽を作っているからか、人からは、自分が使うプロダクトには人並み以上のこだわりを持っていると思われがちなんだけど、普段音楽を作るときもわりと安いモニタースピーカーを使ってたり、今も貰いもののヘッドフォンをしていたりして、実はあまりプロダクト自体にはこだわりがないんだ(笑)。それよりもソフトウェアの方が重要だと思っているから、どちらかといえばそっちにこだわるタイプなんだよね。

──昨年の取材時も、VRChatでの出来事の話をしてくれましたし、いまもTwitchでVRゲームの配信をするなどその興味は続いているようですね。ゲームやライブパフォーマンス、ソーシャルコミュニケーションなどさまざまな楽しみ方があると思いますが、あなたにとってVRの世界の魅力とは?

ポーター:僕にとってのVRは、長い間ずっと待ち焦がれていたものなんだ。例えば、VR空間の中に入ってゲームの世界観を体験することは、その世界観に自分が包まれている感覚にさせてくれるから、ある種の夢のようなものだと思っている。ゲームでいえば、ちょっと前から実際に自分が動いて楽しむWiiなどのゲーム機があるけど、VRにはタッチモードやモーションモードも搭載されているから、モノに触ったり、自分が動くような、より現実に忠実でリアルな体験ができるところがすごくおもしろいんだ。

コロナ禍以降、実際にVRchatの中で行われるクラブイベントに友達に誘われて遊びに行くことがあるんだけど、VRchatの中のクラブはシステムの容量の問題で一度に入場できる人数の制限があるし、ようやく入場できたとしても今度は容量オーバーで退出させられることだってある。そういう体験はまるで現実の有名クラブの招待制イベントのようだったよ。

VRChatのクラブイベントには「Shelter」や「LONER Online」と呼ばれるイベントがあって、大体週一くらいのペースで開催されているんだけど、VR空間内に作られたクラブにはちゃんとDJもいるし、ステージ演出の照明も忠実に再現されているからクラブ空間としての仕上がりも素晴らしいんだよ。それにリアルのクラブと同じように友人に誘われて、VRのクラブに遊びに行って、その中で出会った人と交流を楽しめるんだ。そういう現実の追体験みたいなことができるのもVRの魅力だと思う。だから、VRchat自体は世間的にはまだ目新しいものかもしれないけど、個人的にはリアルのコミュニケーションの延長線上にあるものだと思っているよ。

それと今、まさに『ナーチャー』のライブビジュアルを作っているんだけど、過去にワールドツアーやヴァーチャル・セルフのライブビジュアルを作っている時は、自宅にVJを呼んで編集も確認作業もすべて小さなPCのモニターでやっていたんだ。ただ、それだと現場の大きなLEDスクリーンで見るとどうしても気になる部分も出てきてしまうんだよね。でも、今回のライブビジュアルは、VRを使ったものなのでVRヘッドセットをつけて自分がVR空間に入りさえすれば、リアルと同じように目の前には大きなLEDスクリーンがあって、そこで実際にどんな風に映るのか確認することができる。その意味でVRは自分にとってただ魅力的なものというだけでなく、自分のクリエイションを助けてくれるものだとも言えるね。

『Nurture | ナーチャー』
Porter Robinson | ポーター・ロビンソン
(2021.4.23 配信版、2021.4.28 国内盤リリース)

日本版『ナーチャー』プレオーダー

Jak


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