石油産業のエコっぽい言葉を使ったグリーンウォッシュにご用心

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  • author Molly Taft - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
石油産業のエコっぽい言葉を使ったグリーンウォッシュにご用心
Image: Shutterstock

あるもの(地球温暖化)をないと言ってきた石油産業が、今度はないもの(温暖化を解決する技術)をあるかのように言いはじめるっていったい…。

石油産業にとって、ここ1年はあまり良い時間ではありませんでした。パンデミックで経済的に散々だったことに加えて、投資家や一般市民からの「地球を台無しにしているのをなんとかしろ」というプレッシャーが強まってきたものだから、すっかりお尻に火がついちゃってます。

石油産業が繰り出す魔法の言葉「ネットゼロ」

巨大な石油産業は、ただ商売繁盛を目指すだけではもうダメっぽくなってきたので、脱炭素革命の推進力になっていることを世間に納得してもらおうとしているようです。彼らが「カーボンニュートラルに力を入れてるよー」とアピールするために使うニューワードには、「ネットゼロ(日本のニュースでは『実質ゼロ』もよく使われます)」など、化石燃料を掘り続ける本当のリスクをごまかすような言葉が含まれています。

3月に開催された石油産業界最大級のカンファレンス「CERAWeek」のパネルディスカッションでは、業界が自ら掘った墓穴から抜け出すために、「グリーンウォッシュ(うわべだけ環境保護に熱心そうにみせかけて消費者を勘違いさせること)」を駆使した、装いも新たに健全なイメージを売り込むための言葉づかいに焦点が当てられたようですよ。

オクシデンタル・ペトロリウムのCEO、Vicki Hollub氏は、ネットゼロを達成するためのディスカッションで、「私たちのステークホルダーが地球であることを考えると、これまでとは違う方法をとることになります」と話したとのこと。オクシデンタルみたいな企業の考える違う方法って、一般の人たちに化石燃料産業が地球を壊し続けることはないという誤った安心感を与えるために、新しい用語を使うことらしいです。

とりあえず、業界の大物たちは、自分たちがただの悪者ではないと思ってほしいみたいですね。エクソンモービルのダレン・ウッズCEOは、石油産業の将来についてのパネルで、低炭素エネルギーへの「進化に取り組んでいる」と強調していました。ウッズ氏は、エクソンが単に化石燃料を生産するだけの会社ではなく、何十年にもわたってさまざまな方法でエネルギーを供給してきたテクノロジー企業であることをアピールしようと、同社のルーツについて語っていました。

「世間は私たちを石油ガス企業だと思っていますが、私たちのルーツをさかのぼると、鯨油の代わりに灯油を作ったことに端を発しています。その後、エジソンが電球を発明したことで電気が普及したんです」とウッズ氏 。エクソンの公式サイトには、ウッズ氏の言葉に呼応するように、「(当社の)科学者とエンジニアは、排出ガスを削減し、より効率的な燃料を作るために、新しい研究と技術を追求する先駆者となっています」という真っ赤なバナーが貼られています。真っ赤といえば、真っ赤なう……いや、なんでもありません。

化石燃料の生産量を減らさずに生産時の排出量を減らしてごまかすテクニック

その一方で、オクシデンタルのHollub氏はパネルディスカッションで、「(当社は)今後15〜20年で、石油会社から炭素管理会社に変貌を遂げるでしょう」と発表しちゃったらしいです。

ところで「炭素管理会社」って、いったい何をする会社なんでしょうね?Hollub氏によると、化石燃料をよりビューティフルにパッケージングするのが主な仕事みたいですよ。オクシデンタルは今年1月、「炭素ニュートラルな石油(carbon-neutral oil)」と呼んでいる商品を初出荷しました。それに続いて、「ネットゼロ石油(net-zero oil)」の生産まではじめそうな気配です。これは、二酸化炭素の回収・隔離技術を使えば石油の生産時の排出量を実質ゼロにできるじゃんというもの。でも、いくら生産時の排出量が実質ゼロになっても、石油は最終的にどこかで燃やされますし、それこそが最大の排出源っていう事実は、派手なラベルを貼っても隠しきれないわけなんですが…。

地球を破壊するものの生産と、「良いことしてるでしょ」「排出量を削減してますよ」というアピールを両立しつつ、排出を止める、もしくはもっと大物狙いで大気から二酸化炭素を回収するのが石油会社にとっては理想的。化石燃料の生産・輸送・燃焼すべての過程で排出される炭素をどうにかしてなくすために、企業が使いたい手段はふたつあるそうです。ひとつめは、化石燃料の精製時に炭素を回収して永久に貯蔵するか、後で別の方法で何かに使う。ふたつめは、どうせなら夢はデッカく、空気中の炭素を回収しちゃえというもの。残念ながら、前者は技術的に難しいうえにコストも高く、実現は困難そう。後者は、まだ大規模な実証例がひとつもなかったりします。

読者のみなさんには想像もつかないかもしれませんが、いくつか開催されたいろんな種類の炭素回収に関するパネルディスカッションで、化石燃料産業は、たとえ今はまだなかろうと、実用レベルになかろうと、とにかく生き延びるための手助けになりそうなありとあらゆる技術に全力で取り組んでいます。ちょこっと炭素排出量を減らしたり、オフセットを使ったりして、排出量を減らしたように見せかける「ネットゼロ」という様々な定義がある言葉を利用しながら、すこしでも早く技術開発を進めたそうな感じ。でも、化石燃料の生産量を減らすことで炭素排出量を削減するつもりがなさそうなのはハッキリしていますね…。

アブダビ国営石油会社のCEOであるSultan Ahmed Al Jaber氏は、ネットゼロに関するパネルで、「二酸化炭素回収・貯留技術の普及なくして、世界の削減目標を達成することはできません」と述べました。一方、Hollub氏は、オクシデンタルがユナイテッド航空と共同で、テキサス州とニューメキシコ州に広がる米最大のシェールオイル層であるパーミアン盆地に、炭素回収プロジェクトの拠点を建設中と誇らしげに発表していたとのこと。

再生可能エネルギーの間違った使い方を模索

また、今すぐに大規模な導入が可能な対策である再生可能エネルギーについても言及はあったようですが、化石燃料の生産を完全にやめてしまうのではなく、生産時の排出量を削減するために再生可能エネルギーを取り入れる必要があるというトンチンカンなことを、経営陣のほとんどが真剣に語りあっていたみたいです。「炭素ニュートラルな石油」の二番煎じですよね、これ。また、パネリストのひとりは、二酸化炭素フリーの「ブルー水素」という「クリーンな天然ガス」を生み出す、初期段階にある非常に高コストな技術の可能性を挙げていましたが、再生可能なバッテリーやエネルギー貯蔵の可能性については、まったく触れなかったようです。

Hollub氏はパネルディスカッションで「私たちは脱化石燃料ではなく、脱排出物の話をするべきです」と話していたとのこと。ちょっともう意味がわかりません。

どうにかして、化石燃料を燃やしても無害または毒にも薬にもならないっていう仮想世界をつくろうとしても、無理なもんは無理なわけで。計算上、現在消費している化石燃料が排出している二酸化炭素を相殺するための技術がないことは明らかです。

また、もしも明日にでも炭素回収技術の規模を魔法のように拡大して普及させることができたとして、大気汚染や水質汚染などの気候危機以外の影響をまったく考慮することなく、化石燃料を燃やし続けるための免罪符としてその技術を使ってはいけません。まだまだ箸にも棒にもかからない、炭素排出量を大幅に減らすことができない技術に、多額の資金や関心、時間を費やすのは、石油ガス産業が善人の皮をかぶって汚染を続けるための時間稼ぎにしかならないんじゃないでしょうか。


ところで、アースデイにあわせて開催されたアメリカ主催の気候サミットでは、参加国の首脳たちが2030年までの削減目標を発表していましたよね。あれって、2050年に排出量「ネットゼロ」を果たすための中間目標ですよね。あれ?ネットゼロ?石油産業の魔法の言葉と同じ。ということは、もしかして気候サミットもグリンウォ…いや、なんでもありません……。

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