デジタル資産・NFTのカーボンオフセットって、なんかちょっと違うよね

  • author Brian Kahn - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
デジタル資産・NFTのカーボンオフセットって、なんかちょっと違うよね
Image: Twitter
「二酸化炭素の排出枠を買ったからNFT業界はクリーンになったよ」って、排出される二酸化炭素は1ミリグラムも減ってないんですけどね。

仮想世界で起こっていることだからといって、現実世界に影響がないわけではないんですね。貞子みたい。

NFT界隈では、炭素問題が深刻化しているようですが、真っ向から排出量削減に取り組もうとしないで、カーボンオフセット(炭素を出す権利を買うこと)に頼るのって、よく言っても自己欺瞞、悪く言うとグリーンウォッシュなんじゃないでしょうか。

NFTによるCO2大量排出をごまかす「オフセット」

デジタルアートのプラットフォームであるNifty Gatewayは3月末、気候変動をテーマにした「#CarbonDrop」という名のオークションを開催しました。オークションでは、Beepleの作品が600万ドル(約6億4700万円)で、他のアーティストの作品の中には60万ドル(約6,470万円)で落札されたものがあったそうです。

収益は、気候変動の説明責任と排出量の追跡にブロックチェーンを利用する非営利団体「Open Earth Foundation」に寄付されました。オークションで排出したとされる推定500トンの炭素を帳消しにするために、アーティストたちにはカーボンオフセットが与えられました。このカーボンオフセットは、排出量を削減せずに、植樹などの活動によって排出量を相殺することが問題視されています。

また、調査や報告によると、オフセットそのものが失敗に終わる可能性もあるようです。ProPublicaの調査によると、ブラジルで行なわれた植林プロジェクトのいくつかでは、森林面積が減少したそうです。また、オレゴン州では、オフセットのために確保された森林が火災に見舞われ、そこに隔離貯蔵されるはずだった炭素が大気中に放出される始末。本末スッテンコロリンじゃないですか。

オフセットが気候変動対策を遅らせる原因に

しかし、Nifty Gatewayの双子オーナーのひとりであるタイラー・ウィンクルヴォス氏は、オークションに関するツイートで「The Carbon Dropのおかげで、NFT業界全体の炭素収支がマイナスになりました」と勝ち誇っていました。が、実はこれ、嘘なんです。

彼はまた、Nifty Gatewayは「(排出量の42倍オフセットしているので)炭素収支のマイナスは42倍です」とも述べています。それ自体にはまったくなんの意味もありませんが、確かに響きはいいですよね。でも、カーボンオフセットが本当に意味するところは、NFTプラットフォームの大幅な排出量削減に向けた動きを遅らせるための良い口実になっちゃうということです。

恵まれている裕福な購入者はアートをゲットして、非営利の環境団体はその使命を果たすために重要なコインを手に入れました。ですが、オークションのやり方によっては、クリプトアートを支えるプラットフォームやテクノロジー全般が抱えている大きな問題が見えなくなってしまうという現実的なリスクがあります。

複数の調査によると、Nifty Gatewayによる炭素汚染は、NFTプラットフォームの中で2番目に深刻なんだそうです。アーティストのカイル・マクドナルド氏が分析したところ、今年3月22日までのNifty Gatewayによる炭素排出量は1万3170トンで、Open Seaに次いで2番目の多さだったとのこと。Nifty Gatewayが置かれているイーサリアムのブロックチェーンは、アーティストをはじめ参加者がトークンをつくれるプラットフォームで、デジタルアートを含むほぼすべての出品物に鑑定証みたいなものがつけられるそうです。

イーサリアムでは、ブロックのマイニングに世界中のコンピュータが使われるため、大量のエネルギーを浪費しています。この方法はプルーフ・オブ・ワークと呼ばれています。イーサリアムの開発者たちは、これをプルーフ・オブ・ステークと呼ばれる別の方法に切り替えてエネルギーの消費を減らすという案を準備していると何年も前から主張しているけれど、移行は遅れ続けているみたいです。

脱炭素にはシステムの変化が必要

炭素汚染をオフセットで解決することはできません。脱炭素化が困難なセメント生産や航空などのセクターではオフセットが必要になるかもしれませんが、気候危機による最悪の影響を食い止めるには、NFTを含めて脱炭素化のために本当に必要な行動を今からはじめないといけません。また、アーティスト個人がその影響を相殺するためにベストを尽くすのもいいのですが、現実には個人ではなくシステム的な変化が必要なんですよね。今回の件でその辺に気づくことができたかどうかは今のところわかりませんが……。

非営利団体のCorporate Accountabilityでメディアディレクターを務めるJesse Bragg氏はNifty Gatewayについて、「彼らは、炭素汚染を生まないやり方が他にいくらでもあるのに、従来どおりの方法で得たエネルギーをオフセットでごまかしてイメージを良くすればいいという、化石燃料産業が仕掛けた罠にまんまとはめられているんです」と言います。

参加したアーティストやバイヤー、オフセットを提供している人たちを非難するつもりはありません。

Creol社の最高技術責任者であり、今回のオークションを主催した分散型グラフィックス企業、Render TokenのプロジェクトリーダーでもあるJosh Bijak氏は、「カーボンオフセットは、その透明性とエンド・ツー・エンドの検証について、多くの批判を受けています。私たちはそこで、(ユニークなトークンで検証できるようにNFTをつくって)ひとつ上にレイヤーを追加しようと考えたんです」と語っています。

しかしながら、オフセットでは大規模な問題に対応できません。それにこれは個人やNFTだけの問題というわけでもなさそうなんです。Digiconomistによると、NFTによる排出量は、イーサリアムの推定年間炭素排出量とされる13.89メガトンのほんの一部でしかないそうです。

こういった問題が解決されるまで、アーティストは作品の制作を控えた方がいいんじゃないかという議論もあるんですよね。アーティストであるJoanie Lemercierは、このオークションに出品する予定でしたが、気候変動への影響を軽減するために方法を変更すると言っていたNifty Gatewayがそれを撤回したことを理由に、出品を取りやめました。その後も続行されたオークションでは、知名度の高いアーティストの作品がオフセットを利用するのが一般的になってきているようです。

イーサリアムを使用しているプラットフォームに対し、方針の変更や、よりダメージの少ないクリプトネットワークへの乗り換えを求めて、世論が圧力をかけることができるかもしれませんし、暗号通貨のトレーダーが、生態系へのダメージを軽減するための対策をとらない場合には炭素集約型の通貨から撤退すると脅すこともできるでしょう。しかし、最終的には、気候危機関連のあらゆる問題がそうであるように、個人ではなく集団による行動が必要になってきます。

自由主義者が多いことで知られる暗号通貨業界で集団行動なんてありえなくない?って思うかもしれませんが、みんなで解決策を求めることができなければ、私たちが共有しているたったひとつのものである地球を壊しちゃうことになるかもしれません。

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