肌ってなんでかゆくなるの?

  • 7,776

  • author Daniel Kolitz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
肌ってなんでかゆくなるの?
Image: Benjamin Currie - Gizmodo US

このGIF見るだけでかゆい。

皮膚があることで起こる問題は、傷とか火傷、ただれとかブツブツ、皮膚がんになることだってあります。そういう症状と比べたら一見実害ないかもしれませんが、でも同じくらいツラいのはかゆみです。もちろんかゆみは大した問題じゃないことも多く、すぐにポリポリ掻けるならむしろ気持ちいいこともあります。

それでもあらゆるかゆみは、軽いものでも激しいものでも、同じ問いを投げかけてきます。なぜ、なんでかゆいのか? かゆみがあることは、長い進化の上でどういう意味があったのか? そしてこの「かゆい」という感覚はどこから来るのか? 専門家に聞いてみました。

かゆみと免疫の密接な関係

マサチューセッツ総合病院のアソシエイト・バイオロジスト(皮膚科担当)で、ハーバードメディカルスクールの皮膚科准教授でもあるEthan Lerner氏は、かゆみのメカニズムを理解し有効な治療を開発することを目指しています。Lerner氏いわく「掻くことで免疫系が活性化する」とのことで、つまりかゆみには人間・動物を守る働きがあるそうです。

伝統的な理解では、かゆみとは、虫でも何でも「皮膚に影響する環境中の刺激を除去するために起こる」とされています。この考え方には多くの裏付けがありますが、私はやや問題があると考えています。一番よくあるかゆみの原因は虫刺されですが、かゆみを感じて蚊の存在に気づくころには、蚊はもういなくなってますよね。

我々の多くは、かゆみがある理由を、免疫系を刺激し活性化させ、その環境にあるべきでない何かを認識するためだと思っています。つまりかゆみは、ダメージと戦うための免疫系の立ち上げを助けるのです。それは神経系の働きであり、神経系と免疫系、そして皮膚のバリアの緊密な関係が外のものを排除し、人間を守っていることを示す例のひとつです。

そしてもうひとつ、かゆい部分を掻くとなぜ多くの場合気持ちが良いのかという問題があります。もちろんすべてのかゆみが快感ではありませんが、心地良いことも多いです。乾燥肌の人がシャワーに飛び込んで体を掻きむしるのは、最高の快感になり得るのです。なぜ快感かというと、掻くことで免疫系をさらに活性化し、免疫系が確実に正しい信号を受け取れるようにしているのだと考えています。

かゆみの原因は体の内側にも

マサチューセッツ総合病院の皮膚科准教授、Sarina Elmariah氏は、かゆみの原因は体の内側と外側の2種類に大別できるとして、以下のように解説しています。

人は100%、人生のどこかで強いかゆみを経験するものですが、驚くほど多くの人が慢性的なかゆみで苦しんでいます。慢性的なかゆみとは、6週間以上にわたりほぼ毎日かゆみを感じているということです。人口全体の5〜10%、一部の集団では最大40%の人が慢性的なかゆみを感じていて、これは本当に問題です。

「なぜかゆみを感じるのか」は興味深い問題で、皮膚または粘膜にある複数種類の細胞と神経系との伝達が関わってきます。ハイレベルでいうと、我々がかゆみを感じるのは、皮膚の細胞が周りの神経線維を活性化させる信号の物質を出すときです。神経線維はその信号を脊椎に連絡し、脳へと伝えます。そして脳が、この化学物質の信号は「かゆみ」だ、と変換するのです。かゆみ信号を出せる皮膚の細胞はいくつかあり、皮膚そのものを構成する「ケラチノサイト」という細胞や、皮膚に生息し皮膚を保護する免疫細胞などがあります。細胞が信号を出す要因は、化学物質や刺激物、植物や昆虫といった外部の異物であったり、炎症性の皮膚疾患(湿疹や乾癬など)、真菌感染症、他の臓器(肝臓や血液)の異常といった内部の要素であったり、飲んでいる薬であったりします。

ときには、かゆみを感じる神経が損傷したり病気になったりで、わけもないのにかゆみが起こることもあります。こうした間違った信号は、皮膚から脊髄、脳まで、神経の通り道のどこにでもありえます。発疹もないのにかゆい、ということが起こり得るのです。

見た目は何ともないのにかゆい、のさまざまな原因

カリフォルニア大学アーバイン校の皮膚病理学部門ディレクター兼皮膚科准教授、Linda Doan氏は、神経生物学の視点から解説してくれました。

神経生物学的な意味でのかゆみは複雑で、まだあまり理解が進んでいません。かゆみは不快、または心地よくない刺激であるという意味で、痛みと共通しています。痛みもかゆみも、知覚神経が脊髄を通じて脳のいろいろな部位に伝達しますが、それらに対する我々の行動上の反応は違っています。痛みに対しては、我々はそれまでやっていたことをやめるという反応をします。一方かゆみに対しては、掻くことが反応で、それがかゆみの定義でもあります。つまり、掻きたいという欲求を引き起こすような感覚がかゆみなのです。

では、かゆみを起こすものは何でしょうか? 皮膚から脊髄、脳そのものまで、かゆみの通り道に影響するものは何でも、かゆいという感覚を起こしえます。

より現実的には、皮膚科医は広く、かゆみをふたつのカテゴリで考えています。「発疹を伴うかゆみ」と、「発疹を伴わないかゆみ」です。前者に関しては、認識も治療も容易です。この手のかゆみは、じんま疹や虫刺され、湿疹、乾癬などなどです。「発疹を伴うかゆみ」の主な原因は多くの場合皮膚そのものにあり、我々はその原因に直接対処できるのです。

「発疹を伴わないかゆみ」の場合、原因の特定はより難しくなり、よって治療もしにくくなることがあります。こうしたケースは知覚神経の問題や、中枢神経系そのものの問題である可能性もあり、さらには全身の問題であることもあります。全身性障害、つまり薬の副作用や甲状腺疾患、腎機能障害、胆管閉塞、ある種のがんなどが、かゆみの原因になる場合もあるのです。

神経の異常で起こるかゆみは珍しくありません。多発性硬化症は神経系の病気で、これにかかった人は皮膚には問題がなくても、神経の機能障害のせいでかゆみを感じることがあります。またお年寄りには、「瘙痒症」という現象があります(「掻痒」とは、かゆみを意味する医学用語)。この場合、皮膚にはまったく問題がないのですが、加齢による神経の機能不全でかゆみが起こると考えられています。もうひとつ、脊髄の異常がかゆみにつながることもあります。たとえば交通事故で脊髄を損傷したり、椎間板ヘルニアになったりした場合、脊髄の傷のせいで知覚神経が誤発火することがあり、それが局所的なかゆみを引き起こします。脊髄の異常により神経が誤って発火することで、実際は何も刺激がないにもかかわらず、何らかの部分がかゆいというメッセージを脳に送ってしまうのです。

かゆみはそれに苦しむ人の生活を大きく損ないます。毎晩かゆすぎて眠れない状況を想像できるでしょうか? 最近の研究では、慢性的なかゆみがいかに不眠や気分障害、破壊的な考え方、ストレスや自殺願望までも引き起こすか、そして人間関係にいかに深刻な影響を与えるかが明らかになっています。

最後に興味深い現象、「伝染性のかゆみ」と言われるものについて。つまり、かゆみで体を掻いている人を見ると、自分もかゆみを感じ始めて掻きたくなるというアレです。あの現象が何なのか理解はできていないのですが、非常に興味深いです。かゆみのいろいろな起こり方、そしてかゆみの脳での処理の仕方を理解するには、やるべきことがまだまだたくさんあります。

    あわせて読みたい