Googleの量子コンピュータ解説に感じた「テクノロジーの真髄」

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  • author 西谷茂リチャード
Googleの量子コンピュータ解説に感じた「テクノロジーの真髄」
Image: Google | Sycamore 量子プロセッサ

さまざまな先端テクノロジーがお披露目されたGoogle I/O 2021の基調講演

Google CEO サンダ―は、「これまでの古典コンピューティングでは適当な時間内に解決できないタイプの問題がある」とし、量子コンピューティングの重要性を訴えました。そして実用的な量子コンピュータを2029年までに完成させるロードマップを解説しのち、実際に開発・製造・運用を行なう新キャンパス(Quantum AI Campus)のツアー動画にバトンタッチ(29:28〜33:21)。

Video: Google/YouTube

Michael Peñaが量子のことを「頭がいいけど仕事環境にうるさいヤツ」にたとえるのは秀逸ですよね。で、このツアー中に映るボブ・ロス風の絵が映るんですが(Forest Stearns氏作)、

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Image: Google/YouTube

こうした絵画が量子コンピュータの外壁に描かれている理由を、主任エンジニアのErik氏が以下のように説明したんです。

この壁画は母なる自然へのオマージュです。量子は自然界の言語であり、ここではその言語を学ぼうとしています。話せるようになれば自然界の精密なシミュレーションが可能になって、知りえなかった答えを解き放てるのです。

この視点の持ち方にすごくジーンときました。

あらゆる道具:石器も弓もスマートホンも人間がゼロから造ったわけではなく、自然に存在する石/木/シリコンなどの性質(言語)を理解し、その一部を引き出すように整えたことでガジェットとして機能しているんですよね。

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Image: Shutterstock

石の割れ方が理解できたから矢じりとして使えるようになったし、木材に弾力があることを理解できたから矢を飛ばせるようになりました。シリコンもそうで、添加物と形状の影響を理解できたからこそ電気=情報の流れがコントロールできるようになり、たくさん組み合わさることでスマホなどの古典コンピュータまで昇華されました。

そして人類はいま、自然をよりよく理解&活用するために古典コンピュータを多用しています。お金と時間のかかる実験を繰り返しながら自然に関するデータを集め、ある程度まで性質が理解できたところで数式に落とし込み……。その数式を巨大な古典コンピュータ(スパコン)で走らせることで、自然をシミュレーション環境として再現→実験の肩代わりや設計の最適化などに使われています。

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Image: Google

しかしスパコンといえども計算能力に限りがあります。シミュレーションの精度を高めて自然に近づけていくほど計算にかかる時間が伸びるため、場合によっては数週間計算しっぱなしなんてこともあるくらいです。端的に言うと、0と1じゃない自然世界を0と1でシミュレートするのは非効率……。であれば、自然のシミュレーションをもっと自然な計算方法で行なえればいい→それすなわち確率のせめぎ合いで計算できる量子コンピューティングなんですよね。

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Image: Google
量子ビットの実物。

自然を理解するためにどのどん因数分解していった結果、人類はこの世界が量子力学の積算であることを知りました。人体を構成する分子やそれらに作用する薬まで、小さいスケールでの自然の言語=性質は量子力学なんです。だからこの言語を習得できれば自然に対する理解が深まるのは容易に想像できますし、量子コンピューティングで得た新たな理解を持ってすればもっと高性能なガジェットが作れるのも納得。

こうやって自然の理解→ガジェット開発→理解→開発と繰り返していき、いずれ宇宙のナゾさえ解き明かす……。このメソッドと展望がテクノロジーの真髄なんじゃないかと思いました(その頃にはGoogleも自らのミッション=情報の有用性の最大化を達成しているはず)。

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Image: Google

量子コンピュータの開発・製造・運用を行なっているのはGoogleだけではありませんが、2019年に量子超越性を達成したチームがこれら3つの機能を1つの建物の中に集約した事にワクワクします。

Source: Google (1, 2, 3, 4 )

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