今回はApple(アップル)のApple Store、いわゆるアップル税が訴訟のまとになっているもよう。
近況としては、欧州連合(EU)が音楽配信サービス業界の利益を独占しているとしてAppleを告発しています。元となったのは、2019年のSportify(スポティファイ)の申し立てで、問題とされたのはAppleの公平性を欠いたビジネス手法。この手法で、顧客を自社の音楽配信サービスに集中させていたようです。
欧州連合はSportifyに賛同
連合はこんなツイートもしていますね。
欧州連合のツイッターより
We have informed Apple of our preliminary view that it is in breach of EU competition law.
— European Commission 🇪🇺 (@EU_Commission) April 30, 2021
By setting strict rules on the App store that disadvantage competing music streaming services, Apple deprives users of cheaper music streaming choices and distorts competition.
日本語訳:Apple Storeの規制により他の音楽配信サービスは不利になり、彼らの顧客はAppleに奪われた。
詳しい情報はiOSエコシステムの問題点に関するプレスリリースで明らかにされています。
AppleはiOSエコシステムの門番であり、アプリ開発者はApple Storeを経由しないとiOSユーザーにリーチできません。つまりこの仕組み上、Appleが音楽配信サービスで独占的地位を確立することはほぼ避けられないわけです。
特に、アプリ内課金に30%の手数料がかかること、他の課金方法をユーザーに提示できないことはアプリ開発者にとって大きなネックになっています。なぜなら、手数料などを含めると、Appleのサービスよりも料金が必然的に高くなってしまうから。一方、利用者と開発者の仲介をするAppleの手数料はもちろんゼロ。
AppleとSportify、それぞれの主張は食い違い気味
今回の件に関する、それぞれの主張を見てみましょう。
SportifyのCEO、Daniel Ekのツイートより
今日はとても大切な日だ。公平性があってこその競争であり、今回の告発で公平な競争の実現に一歩近づいた。ヨーロッパ中の開発者にとって大きな前進となっただろう。
Sportifyの世界情勢担当Horatio Gutierrezから米GIZMODOへの文書より
iOSを公平なプラットフォームに保つことは重要である。自らの公平性を無視した行動の責任をAppleが忘れないためにも今回の告発は大切だった。これで、ユーザーは幅広い選択肢を持ち、開発者は公平な競争に参加できるようになる。
これに対してApple側は米GIZMODOへの文書で欧州連合の主張を完全否定しています。
欧州連合の発表によると、SportifyはiOS用アプリで他の課金方法の導入を促したいそうですが、そんなことは認めるはずがないです。それはApple Storeだけでなくどこでも同じだと思いますよ。
再度になりますが、アプリの開発者はApple Storeの恩恵を受けています。それをタダで受け取ろうとは無理な話じゃないでしょうか。そう意味で、発表内容は「公平」なものではないかと。
加えてAppleは、Sportifyの有料会員のうち99%分は手数料が未払いで、最初の1年が過ぎると手数料が15%に減らされる、無料会員の手数料は無料、広告も多数のメディアに掲載しているためユーザーがアプリ外のサービスを知る機会はある、とも主張しています。ちなみに、内容は2019年の公式声明とほぼ同じです。
この論争、お互いがそれぞれの主張を否定することは明らか。ただ、支払う手数料や規制を痛手に感じている企業は多く、来週にはEpic Gamesも連邦裁判所にAppleの権利濫用を訴えるとのことです。
内容はフォートナイトをApple Storeから削除した件について。この削除騒動はSportify、Tile(タイル)などの大手企業、開発者にも影響を与え、最終的には「the Coalition for App Fairness (CAF)」というアプリ市場の公平性を求める非営利団体が結成されたほど。
告発はまだ最終決定ではない
話を戻しますね。今回の告発ですが、実はまだ準備段階。最終決定の前に、Appleが訴訟内容に反論する可能性もあります。また、アメリカのニュースメディア・The Verge(ザ・ヴァージ)によると、連合は音楽配信サービスに限らずゲームアプリの販売ポリシーにも注目しているようで、今後の動きにも注目です。
何はともあれ、Apple側が有罪となれば年間売り上げの10%が罰金として課せられます。一方で、連合は必要な限り調査を続けるとしており、終了の目処は全く立っていません。つまり、今回の告発はアプリ市場をめぐる争いの大きな局面とはなったものの、決着はまだまだ先ということですね。