【ネタバレあり】全ては灰と化す。人類絶滅48時間前を描く『グリーンランド』レビュー

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  • author 中川真知子
【ネタバレあり】全ては灰と化す。人類絶滅48時間前を描く『グリーンランド』レビュー
Image: ponycanyon / YouTube

2021年3月6日、地球に小惑星アポフィスが接近しました。

この時は地球から1690万km離れたところを通過しただけでしたが、万が一軌道が変わらなければ、47年後の2068年に地球と衝突する可能性があると言われていました。

その後、NASAが改めて調査して、今後100年は衝突の恐れなしと判明したそうですが、これがわかる前は、NASAが管理している「潜在的に危険な小惑星リスト」の3位にランクインしていたのです。次に接近するのは2029年で、肉眼でも確認できるみたいですね。

しかし、肉眼で見えると浮かれてはいられません。もしも彗星が軌道を変えて、地球に衝突したらどうなるでしょう?

リック・ローマン・ウォー監督の『グリーンランドー地球最後の2日間ー』は、まさにそんな映画です。しかも、えらい科学者や宇宙飛行士や石油掘削員が自己犠牲で地球を救ってくれるわけでなく、主役は単なる一般人。一般人のふりをした隠れエリートではなく、私生活でも問題を抱えた単なるガタイの良い中年男性なんです。

おそらく、今あるディザスタームービーの中で、もっとも役立つ情報を与えてくれる作品だと思いますよ。試写会での先行レビューをお届けします。

天変地異が起こったら一般人はどうなるのか

『グリーンランドー地球最後の2日間ー』は、巨大な彗星が地球にぶつかるまでの48時間を、一般人目線で描いたディザスタームービーです。他のディザスター系でいうところの、逃げ惑いながら死んでいくモブにフォーカスした物語です。

ジェラルド・バトラー演じる主人公ジョン・ギャリティは、建築技師というスキルを認められ、政府が準備したシェルターに避難する権利が与えられました。ところが、あくまで一般人なので、政府が家までお迎えに来てくれるわけでもなく、スマホに届く情報を頼りに、指定された場所まで車を走らせるしかありません。

渋滞をくぐり抜け、混乱して押しかける人々をおしのけ、やっとのことで軍用機に乗れるところでアクシデントが発生。軍用機に乗ることはできず、なんとか自力でサバイブしないといけないことになってしまいます。

情報はテレビやラジオ、善意ある人からの伝聞からしか得られません。

『2012』のように大金持ちと知り合いだったり、中枢の人たちと知り合うチャンスもありません。『インポッシブル』のように保険会社が颯爽と現れることもありません。

天変地異を目前に、人々の本能や理性が複雑に交差する「地に足ついた」一般人だどのように立ち回るのか。それが『グリーンランドー地球最後の2日間ー』なんです。

エメリッヒ仕込みのド派手なVFX

こう説明すると、なんだかこじんまりしたヒューマニティー重視の作品かと思われるかもしれませんが、心配ご無用。VFXはド派手です。

猛烈なスピードで地球を目指す彗星群や、空を覆う禍々しい雲、地上に衝突した時の爆風と衝撃、地獄の業火に焼かれるように消滅する街と、原型を止めることがやっとなほどに破壊された観光名所の数々は、エメリッヒ監督作品を彷彿させる派手さ。主役が一般人ということで、彗星衝突の規模とのコントラストが強調され、余計に絶望的に感じます。

ローランド・エメリッヒ監督の『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)や『2012』(2009年)に近いでしょうか。スケール的には『ダンテズ・ピーク』や『パーフェクト・ストーム』よりも確実に上です。

VFXを担当したのは、PXOMONDO。『2012』のVFXを一任され、2012年に『ヒューゴの不思議な発明』でアカデミー視覚効果賞を受賞したスタジオです。

『2012』以降、「破壊王」の異名を持つローランド・エメリッヒ監督からの信頼が熱く『インデペンデンス・デイ: リサージェンス 』(2016年)や、ミッドウェイ海戦を描いた『ミッドウェイ』、新作『Moonfall』のビジュアルも担当している、いわば、エメリッヒ監督仕込みの破壊マスターと言えるでしょう。

そうそう、ディザスター表現に限らず、彗星やモニター映像にも強いのは、Apple TV+の『For All Mankind』のVFXも任されているからかもしれませんね。

どんなディザスター物よりも参考になる

環境問題の深刻化に比例するように、ディザスタームービーの数は増えていきました。地球温暖化や自然破壊に対する問題提起が主で、ストーリーはヒロイズムとエンターテイメント性の比重が高かったように思います。

『グリーンランドー地球最後の2日間ー』が一般人にフォーカスしたのは、彗星が地球に衝突するという、とても現実的なテーマだからではないでしょうか。

2020年6月には、直径約122mの小惑星が月までの距離の80%という至近距離まで地球に接近していたものの、観測体制の不慮が原因で存在を知ったのが2日後になったということがありました。

同年11月には、5〜10mの小惑星が、地球上空約386kmを通過し、過去もっとも接近した記録を大幅に更新しています。

National Geographicによると、「1つの都市に大ダメージを及ぼせるサイズの小惑星は、地球から800万km圏内を毎年数十個もかすめている」そうです。潜在的に危険な小惑星2078個に上り、今年7月には、NASAは地球に接近してくる小惑星に重さ500kgの宇宙船を衝突させる実験をおこなうとのこと。

本作を作るにあたり、ウォー監督は、リサーチをたくさんしたそうです。そして、「彗星の速度や、別の太陽系からいきなりやってきて数時間で地球のレーダーに感知されたエピソードなどを知った」と言います。つまり、映画で起こったように、彗星が突然軌道を変えて地球に衝突することだって100%は否定できないはず。

コロナが始まった直後、『コンテイジョン』という映画が「コロナを予知している! 」と大きく話題になりましたが、『グリーンランドー地球最後の2日間ー』もいつの日か、予言映画の1本として繰り返し見られるようになるかも。

迫力満点の『グリーンランドー地球最後の2日間ー』は6月4日(金)公開予定。ぜひ劇場でご覧ください。

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