こんなアースデイはもう要らない

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こんなアースデイはもう要らない
デモ参加者(2019年9月20日・コロンビア)

1年に1回の地球を大切にする日。

1970年、ゲイロード・ネルソン上院議員の宣言でスタートした“アースデイ”は、公民権運動の産物でした。これを後押ししたのが、DDT薬害を克明に描いたレイチェル・カールソン、1962年のベストセラー「沈黙の春」、それに1969年に起こったサンタバーバラ沖原油漏れ事故とクヤホガリバー炎上事故。

報道で使われた川の炎上シーンは52年の別の火災の絵だったりするが、50~60年代のアメリカでは原油積載船がよく燃えた
Video: GZERO Media/YouTube

危機感が高まるなか、1970年4月22日に開かれた第1回アースデイでは2000万人が地球代表として行進。同年12月にニクソン大統領は環境保護庁を設立し、大気浄化法、水質浄化法が続々と整備されていき、今では全米ほぼすべての郡でイベントが盛大に催される日になっています。

世界が環境保護に目覚めて汚染規制に乗り出したきっかけを作ったのがアースデイであり、その影響は計り知れず、とてもひとことではまとめ切れないほどなのですが、今のアースデイには初期の熱狂がまったく感じられなくて、今ほどそれが求められているときはないのにって思います。

なんか企業のいい宣伝材料になってしまってて、地球にやさしい企業宣言環境がテーマのミュージカルdeaアースデイ記念セール、今年はNFTなんてのもあります(環境に悪いのに)。どれもこれも「ホットなだけで何の用にも立たないゴミだ」と一刀両断に吐き捨てるのはEmily Atkinさん。アースデイは、環境ジャーナリストから見たら「地球の地獄」だとメルマガ「Heated」 で熱く書いてます。

もともと宣伝要素はあった

まあ、「アースデイ」という言葉自体、考えたのはネルソン議員とアースデイ共同創設者デニス・ヘイズを補佐したコピーライターのジュリアン・ケーニグ(「Serial」のサラ・ケーニグの父)。メインストリームのアメリカ人(都市部の白人)の心に訴えかけるネーミングだったことも、あれだけの広まりを見せたことと無関係ではないですしね。

しかしこれだけPR商材的要素が高まると記者の苦言だけじゃ済みません。何も変わっていないのにあたかも変わっているかのような錯覚が生じてしまうので、地球と人類全体が直面するリスクを高めてしまう危険性さえあります。

環境に悪い企業ほど環境の取り組みをPRする

たとえばアメリカ石油協会は「クリーンな未来に投資する」とツイートしてますが、本当にクリーンな未来を考えるなら存在自体をやめるんだ!という声も

原油ガス関連企業は生き残りをかけてプラスチック(99%が石油)の増産を進めています。2050年までに世界の石油消費の2割がプラスチックになりそうな勢い。で、プラスチック工場が建ってるのは決まって有色人種居住区です。サンフランシスコ対岸の工業地帯リッチモンドもそうだし、ミシシッピー下流域の工業地帯キャンサー・アレー(がん回廊)も黒人居住区で、ここはがん発生率が全米平均の50倍(100万人中1050人)。ヒューストンも、ぜんそく児童の9割は黒人&ヒスパニックです。

こうした環境差別については黒人科学者Wilbur Thomas氏が1970年アースデイの演説でも語っています。なんとかしようとコカ・コーラは第1回アースデイのときから非白人居住区への汚染負荷軽減をPRしてきていて、それはとてもいいことなんですが、ペットボトルの元凶はほかでもない、コカ・コーラ。それを考えると、なんだかなあ…。

かけ声ばかりの半世紀

アースデイ誕生から51年でエコ意識は確実に向上したけど、アクションが伴っていないこともまた確か。結果的に、世界規模のプラごみ危機地球生態系97%の破壊が進み、海氷は解け海面が上がって塩害で立ち枯れのゴーストフォレストが生まれ、永久表土が解けてメタン爆発で奈落の底のような穴ができ水不足や異常気象が起こって、大気中のCO2濃度は420ppmで、1950年代の計測開始時の315ppmから激増し、この300万年で最高の水準に達しています。要するにアースデイで意識が高まって取り組みが進んでも、資本主義の見えざる力にはまったく抗えていないんですね。今も煙や騒音の中で暮らしているのは肌の色が浅黒い人たちで、環境正義はどこ吹く風です。もちろんテントを立てたり、是正の運きもあって、若手と既存保護団体がやっと有色人種居住区にテントを建てたりしてますが、社会変革を中心課題にするには、もっと大規模な展開が必要です。

初心に戻ろう

アースデイも最初は革命だったし、政治、政策、地球を変えるターニングポイントとなりました。でも企業が喜ぶ今のアースデイは形骸化が激しくて、存在理由そのものが問われています。

かけ声で現実から目を背けて、いいことしたみたいな気になるだけなら、こんなアースデイはないほうがよっぽどいいです。気象変動は地球破滅への一本道なのにそうじゃないように感じてダラけるだけじゃないですかね。本気でがんばってる政治家にとっては日頃の地道な努力を報告できる晴れの日で、それはすごくいいことだと思うんですが、そういう本筋から外れた言葉だけのアピールの日になってしまいました。いま一番求められているのは、変化を起こす力なのに。

これから地球はますます大変なことになるというのに、 初心にかえってアースデイ仕切り直すぐらいのことしないと立ち向かっていけないんじゃ…。権力と金のベクトルで動いても破壊が進むだけなので、それに代わる新しい発想が必要。人種平等とクリーンエネルギーをもっと織り込んで第1回アースデイの熱狂を取り戻していかないと。今ならまだアマゾンもグレイトバリアリーフも手遅れじゃないって話もありますし、この大事な局面を乗り切る統率力を備えたリーダーも必要ですよね。失敗したら二度と取り返しがつかないのだから。

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