アートは苦手だったわたしが、なぜメディアアートならおもしろいのか。Media Ambition Tokyo出展者、西條鉄太郎にきく

  • author トダサチコ
アートは苦手だったわたしが、なぜメディアアートならおもしろいのか。Media Ambition Tokyo出展者、西條鉄太郎にきく
Photo: Victor Nomoto(METACRAFT)

メディアアートってなんなんだ。

ギズモードにゆかりの深いクリエイターチーム「METACRAFT」の西條鉄太郎氏が、Media Ambition Tokyo(以下MAT)に作品を出展していると聞きつけて、お邪魔しました。

MATは、最先端のテクノロジーカルチャーをアートにつなげ、実験的なアプローチで実装するショーケース。過去にもギズモードで取材しています。

西條氏が出展したのは、人の動きに合わせて生成される体験型オーディオビジュアル空間作品「SOCIAL DISTANCERS -VIRAL INFECTION-」。ウイルスの感染と増殖をモチーフにした、まさに今現在が表現された作品です。赤と黒の世界でウイルスが拡散していく映像イメージが投影されるさまはゲームのようで楽しく、かつ興味深く体験できました。

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「SOCIAL DISTANCERS -VIRAL INFECTION-」
ALL DIRECTION : TETSUTARO SAIJO/ METACRAFT PROGRAMMING:JUN INAGAKI TITLE DESIGN : KAZUKI TAKAKURA SOUND DESIGN:LLLL (KAZUTO OKAWA)

ところで、実はわたしはアートがすこし苦手でした。今回、いわゆる「メディアアーティスト」「テクノロジスト」ではない、メディアを使って表現する「メディア作家」である西條氏にあえて話を聞いたことで、「苦手意識の原因は、アートから何を受け取っていいか、そして自分がそれを解釈して、どう反応したらいいかが分からなかったからかも」と気づきます。

「アート?なにそれおいしいの?」から始まった取材。そこには、「アートが得意ではないわたしが、なぜメディアアートならおもしろいと思えたのか」の答えがありました。 以下、西條氏のお話です。

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メディアアートとは

冒頭から概念的な話になりますが、「メディア」とは、情報を蓄積して発信していく装置であり、それそのものを表現として使いましょうという捉え方が「メディアアート」だと俺は思ってます。

メディアアート自体は昔からありますが、すこしシーンが変わってきた時期があるなと感じていて。ちょうど10年前くらいに、インターネット上に自由なソースコードが広がってて、それを使ってマイコンにプログラムを書き、だれでも簡単にIoT的なものがつくれるという、いわゆる「メイカーズムーブメント」が起こったんです。同時に、表現者がマイコンを使ってインタラクティブアートをつくることも流行りはじめて、両者が混じり合ってきたんですね。その頃から徐々に、「メディアアート」や「メディア」という言葉が指すものが、だんだん最先端技術の大喜利大会みたいになってきちゃったんじゃないかなと…。

俺、それは違うんじゃねえのかなってずっと思ってて。大学行って最先端技術の研究して、さらに芸術的な感性をもってそれを表現しないといけない…みたいなことを難しく仰ってるスノッブな人たちもいますけれど、俺はそこに属すことはできないですね。「最先端技術大喜利ですごいテクノロジー使ってれば、アウトプットがかっこ悪くてもOK」とは思えないから。確かに能書きとしては面白いんだろうし、社会的に説得力のある人が言えば「なるほど」ってなるのかもしれないけど、そもそもの「メディア」という概念と、みんなの持ってる印象がズレてきているような感じがしてます。

俺はテクノロジストではないけれども、大学でメディアデザインをやって、「SILLY」「EVELA」といったウェブマガジンの編集長もやって、それを発信するMETACRAFTもメタメディアだし、今やっているアートもメディアそのもの。だから、最先端技術からのアプローチだけじゃなくて、俺みたいにウェブメディアとかをやっていた文脈とかサブカルチャーとかが参入していったら、新しい風が吹かせられるんじゃないのかなって思ってます。

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メディアアートのインタラクティブ性について

空間作品で「メディア」と言うには、インタラクティブであることが重要だと思っていて。「メディア」というものは、状況に対して、自分で情報を取り込んで発信する。「取り込む」と「発信する」の両方の機能を持ってないと、メディアじゃないんですよ。

例えばあなた(編集者)が、自分自身をメディアだと考えたとき。取材した人の話を聞いて、自分の中で解釈して、アウトプットする。そしてそれを読んでくれる人がいて、その反応によって世の中が変わり、それが戻ってきてまた新しい情報を出して…というのが、ミニマルなメディアとしての流れ。メディアアートはそれを自動化する空間です。だから、その空間を訪れた人に対して、メディア側も影響を受けて動的に変わっていかないといけない。そういう意味では、実際メディアアートと技術は切り離せないです。今回出展した俺の作品も、メディア的なものを実装しています(が、じつはぜんぜん最先端技術ではないです。赤外線で空間をマッピングして、人が入ってきたらその位置に映像を当てる、それだけ)。

単にプロジェクターを使って壁にお花を咲かせても、それは映像作品やテクノロジーアートではあるかもしれないけど、メディアアートかと言われたら、どうなんだろう。触るなどして可変的である、双方向性があることで、メディアとしての最低限の機能を持っているといえるんじゃないかなと、俺は思いますね。静的なもの、例えば絵とかは、メディアというより「コンテンツ」な感じがするんですよ。

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ゲームとナラティブについて

インタラクティブ性でいうと、体験としては、ゲームもある種のメディアアートに近いと思います。

ただ、エンターテインメント(ゲーム)とアートの違いがなにかを考えたときに、エンターテインメントは、マルチエンディングだったとしても、ほぼ起承転結で答えが決まっているストーリーテリング型アートはもっとナラティブで、その人の文脈によって感じ方が変わる。そこですね。

今回出展した俺の作品も、「ゲームクリア」という概念がないんです。それに、入り口で流しているVTRで、設定として「バーチャル・リアリティ・ウイルス」と称した、虚構と現実の区別が付かなくなるウィルスが存在するというテイでやってますけど、真実は人によって違いますからね。今の現実世界もそうですけど、コロナウイルスなんてないっていう人もいれば、ワクチンが違法だっていう人もいる。そんな「真実なんて、もう人それぞれ!」といったナラティブ感が、アートには必要なんじゃないのかな。アートは、特に目的も結論もなく、人によってナラティブに見え方が変わるような余白のあるものじゃないと、と思っています。

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「SOCIAL DISTANCERS -VIRAL INFECTION-」について

今回出展した「SOCIAL DISTANCERS -VIRAL INFECTION-」は、2020年に横浜でウイルスと宇宙をテーマにしたデジタルアート展「VIROSPACE by METACRAFT」 を開催したときに展示していた作品をアップデートしたものです。「ワクチンをとる」というゲーム性は、今回新しく付け加えました。

昔からウイルスって面白えなと思ってて。自分単体じゃ増えられないけど、生物の細胞のシステムをハックして増えていく。それこそコンピューターウイルスとかインターネットミームとか噂とか、そういうのが社会的なウイルスとして増殖していくさま。「バーチャル・リアリティ・ウイルス」という設定は、そういった部分も表現しています。

作品の体験者の様子を観察してて興味深かったのは、「ゲームっぽい=“クリア”があるだろう」と思った人が出てきたことですね。最初からウイルスを避けまくってワクチンを全部とるんです。で、「これでどうなるかな?」って、画面に携帯のカメラを向けるんだけど、何も起きない。これってすごく象徴的なこと。ワクチンをとったからといって何もかも解決する話ではないなか、プレイヤーはウイルスとワクチンに踊らされているんですよ。

「踊らされている」という状況を再現させることに意味があって、ワクチンがいい・悪いが答えではない。人それぞれのナラティブがあり、人それぞれの未来があるから、そこに結論なんかないんですよ。

「令和異端メディア空論」

ウェブメディア「VICE」やバンド「54-71」の川口賢太郎さん&佐藤ビンゴさんを招いてトークセッションします。ふたりこそ、長くウェブマガジンやバンドというメディアをやってきて、今も「ナラティブ」というキーワードの下に新しいメディアをつくり、その枠組みのなかでいろんな活動をしようとしている大先輩。

最先端技術だけじゃない、「メディア」という言葉の意味について話せたらいいなと思ってます。最先端技術だけじゃない、「メディア」という言葉の意味について話せたらいいなと思ってます。

■ 配信日時:2021年5月24日(月)19:00〜20:00(YouTube LIVE)

■ 出演者:西條鉄太郎、佐藤ビンゴ&川口賢太郎

Video; Media Ambition Tokyo/YouTube Live


西條鉄太郎:メディア作家。メタメディアとして「METACRAFT」を主催。法人、WEBマガジン、インタラクティブアートなど、作品としてさまざまな様式の“メディア”をつくりコンテンツを発信している。WEBマガジン「SILLY」創刊編集長。カルチャーメディア「EVELA」現編集長。2020年、横浜にてウイルスと宇宙をテーマに制作したデジタルアート展「VIROSPACE by METACRAFT」 を開催。MAT2021では、VIROSPACEで公開した作品群の中から「SOCIAL DISTANCERS」を出展中。

Media Ambition Tokyo

日程:2021年5月12日(水)〜 6月8日(火)10:00〜20:00(最終入館19:30)

会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

今年で9回目を迎えるMedia Ambition Tokyo [MAT] は、最先端のテクノロジーカルチャーを実験的なアプローチで都市実装するリアルショーケースです。
アートと研究開発の両輪から日本の未来を提言する落合陽一をはじめ、 リアルとバーチャルを横断する新しい体験を創造し続ける水口哲也、 新たな聴覚体験を創出するサウンドアーティストevalaを迎えたシナスタジアラボ、 見えないものを可視化し表現する脇田 玲などMATではおなじみの作家に加え、小野澤 峻会田寅次郎Mayuka Otsukiなどといった、 次世代の日本のテックアートシーンを支えるアーティストたちも集結。
時代のうねりも巻き込み進化を続ける都市複合芸術祭です。

Photo, GIF: Victor Nomoto(METACRAFT)

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