ロケット開発、着陸はできたけどまだ課題はあるみたい…。
スペースX社は5月5日にロケット「SN15」の垂直着陸を成功させ、実験は次の段階である「宇宙」へ移行。同社はテキサス州ボカ・チカの発射場で打ち上げられたスターシップ(同社が開発中のロケット)試験機の軌道実験と回復実験のための通信許可を5月13日に連邦通信委員会に申請中です。
どんな実験が行われるの?
ここで、実験の説明を少し。実験では、ロケットの2段目を「スーパーヘビー」と呼ばれる1段目のブースターに取り付け、合体した状態で打ち上げます。(2段目部分のみでの着陸実験は成功済みですが、「スーパーヘビー」は開発途中)「今後の改良に活かすために、コンピュータで予測困難な飛行中の機体に関するデータを可能な限り集める」ことが今回の目的。
1段目のブースター「スーパーヘビー」は飛行の約169秒後に機能停止し、発射場のあるボカ・チカではなく、メキシコ湾の海岸から約20マイル(32 km)離れた地点に着陸する予定。帰還は「部分的」ですね。着陸方法はスプラッシュダウン(パラシュートでロケットを着水させる方法)と予測されています。
さらに、2段目は1段目との分離から5秒後にエンジンが点火されフロリダ海峡上空を飛行後に、軌道に乗ってハワイ・カウアイ島の海岸から北西に約62マイル(100 km)地点に「着地点を絞って」着陸予定。着陸方法は海面着陸で、所要時間は90分に満たないとのことです。
軌道試験と回復試験のより詳しい説明を見たい方はこちらから。
CEOのイーロン・マスク氏は着水に関してこんなツイートも。
We need to make sure ship won’t break up on reentry, hence deorbit over Pacific
— Elon Musk (@elonmusk) May 14, 2021
日本語訳:大気圏再突入による機体の破壊を防ぐために、ロケットは太平洋上空で軌道から外れる必要がある
ロケット開発、最大の課題は耐熱システム
ツイートにもあった機体保護はロケット開発における最大の課題のようで、同社は「熱保護システム」ならぬ耐熱シートの開発に尽力している様子。
2019年にマスク氏は動画とともに、機体に付けるタイルの耐熱性テストの様子をツイートしています。
Testing Starship heatshield hex tiles pic.twitter.com/PycE9VthxQ
— Elon Musk (@elonmusk) March 17, 2019
日本語訳:スターシップに取り付けるタイルをテスト中
今年3月には、タイルが実際にスターシップ試験機に取り付けられた様子も公開されています。軌道試験でタイルが大気圏の熱に耐えられず破壊されてしまった場合は、全てやり直しになりますが。
また、同社は6月20日発効の許可を連邦通信委員会へ申請中です。ただし、試験に必要な許可を発行しているのは米国連邦航空局の商用支部。
米雑誌・スペースニュースによると、許可が降りるかはボカ・チカでのロケット打ち上げに関する環境調査の結果次第とのこと。また、ファルコン9(同社が開発し打ち上げたロケット)の際に提出された環境影響の書類は特に考慮されないそうです。
調査は今も継続中で、これから同社はより詳細に環境影響を示した書類の提出が求められる可能性も。一方で、スターシップ計画はNASAのアルテミス計画(最初の女性、新たな男性を月面に着陸させる計画)に統合されると発表され、ますます大きな注目を浴びていますね。