月で使える通信ネットを作ろう。 その名も「ムーンライト計画」

月で使える通信ネットを作ろう。 その名も「ムーンライト計画」
Illustration: ESA/ATG Medialab|2020年代後半に月に向かう予定の月着陸船「Heracles」のコンセプト図

欧州宇宙機関(ESA)は先月、月面での有人宇宙活動を支える月衛星の通信ネットワークを作る計画を発表しました。「Moonlight」と呼ばれるこの計画は、月を深宇宙探査の出発点に仕立てるものです。

Moonlight計画は通信だけでなくナビゲーション機能も提供するので、向上した精度が宇宙船の月面への着陸をサポートするようになります。かつて月と地球との結びつきは万有引力のみでしたが、強力な衛星網があれば淡く青い点から隣にいる小さき灰色の点へとすぐさまメッセージを飛ばせるようになります。

ESAの通信と統合アプリ部門のElodie Viau主任は、先月行なわれた記者会見の中で「このプロジェクトは、月衛星のコンステレーションを介して通信とナビゲーションネットワークを構築することで、月面での効率的な探査を可能にします」と語っていました。「これはほんの始まりにすぎず、火星やその先へのミッションへの道を開いてくれます」とのこと。

民間企業と話し合って具体的な方法を模索

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Image: NASA Goddard

今後はまず、同プログラムのための12〜18カ月の研究期間に入ります。ESAは、そのような通信網が月で具体的にはどんな形になり得るか、民間企業と話し合って理解を深めていくとか。この計画が発表された今は、まさに宇宙探査におけるブームの初期段階。NASAのアルテミス計画は2024年までに人間を月面に送る予定で、その月着陸船を建設する契約はジェフ・ベゾスのBlue Origin(ブルーオリジン)社ではなくSpaceX社が勝ち取っています。中国は独自で開発を進めている宇宙ステーションの最初のモジュールを打ち上げるという偉業を達成したものの、制御されていないロケットの残骸が落下したことが影を落としています。

今回のESAの計画は、そういった動きより話題性が低いかもしれませんが、持続可能な人間の輸送と地球以外での居住に向けての素晴らしい試みです。ESAの有人とロボティクス部門のDavid Parker主任の言葉によれば「8つ目の大陸、月への体系的な探査」であって、「月は太陽系の歴史45億年分の宝庫ですが、我々はその秘密をほとんど解き明かし始めてもいない」とのこと。

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月面で居住施設のコンセプト図
Illustration: ESA - P. Carril

ESAは記者会見に合わせて出したプレスリリースで、このプログラムがもたらすメリットを列挙しています。宇宙船が月面のどこへでも着陸できるようになり、電波天文学者らは月の裏側に観測所を設置できるようになり探査車は月面を速く移動できるようになり月面車は遠隔操縦できるようになります。しかし、恐らく最も重要なのは月と月周回軌道に科学機器を置いておけるようになることで、将来的な地球外ミッションのペイロードの場所とコストを節約できる点でしょう。

ESAはこのネットワークの構築のため、同機関のLunar Pathfinderに取り組む契約を得たSurrey Satellite Technology(サリー・サテライト・テクノロジー)社を含む衛星メーカー数社を選定。12〜18カ月の研究期間で計画の実行可能性を調べた後、2022年までにESAの閣僚会議に計画を提案して、2020年代後半までには最初の衛星の運用を目指します。

Source: ESA(1, 2, 3

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