To Venus!
NASAは2030年までに金星に向かう2つの探査ミッションを打ち上げると発表しました。金星を直接探査するのは1994年以来で、1つは金星の軌道に乗って上空からマッピングと観測を行ない、もう1つは地表への降下とともに大気組成を理解するためのサンプルを収集します。この1つはNASAディスカバリー計画の最新ミッションとなります。
NASAのビル・ネルソン長官は記者会見で「この2つの姉妹ミッションの目標は金星がどのようにして表面を溶かすほどの灼熱地獄になったかを理解すること」だと述べました。「それらのミッションは30年以上も向かうことがなかった惑星を調べる機会を科学コミュニティ全体にもたらす」とのこと。
今回発表された2つのミッションはDAVINCI+(Deep Atmosphere Venus Investigation of Noble gases, Chemistry, and Imaging Plus)と、ラテン語で「真実」を意味するVERITAS(Venus Emissivity, Radio Science, InSAR, Topography, and Spectroscopy)。DAVINCI+は金星の大気組成を理解するためにその大気を調べる一方、VERITASの主な目的は金星がどのようにして480℃近くの表面温度と人を押しつぶしてしまうほど高圧な大気を有する地獄へと進化したのかを学びに行きます。
The New York Timesが報じたように、当時のジム・ブライデンスタイン長官はその研究に刺激を受けて「金星を優先すべき時だ」と発言。そして今、NASAは実行に移しているのです。ちなみにNASAでは以前、金星の大気中に検出された気体から微生物が漂っている可能性を提唱し、その発見自体が物議を醸すといった出来事がありましたが、会見では地球外生命体の探索については何も言及せずでした。
ディスカバリー計画の候補にはこの2つのミッション以外にも、海王星最大の衛星へのフライバイ探査を行なうTridentと木星の衛星イオへのフライバイを10回行なうIo Volcanic Observerという2つの提案がありました。DAVINCI+とVERITASが加わるディスカバリー計画の今後のミッションには、現時点で木星のトロヤ群小惑星を探査するルーシーと金属を主体とする小惑星を探査するサイキもあります。NASAが記者会見に合わせて発表したプレスリリースによれば、2つの金星探査機の打ち上げは2028年から2030年にかけての予定。現在、同計画のミッションで活動中なのはルナー・リコネサンス・オービターと火星探査機インサイトです。

これまでに、旧ソビエト連邦のベネラミッションが1961年から1983年にかけて金星の観測と着陸を行ない、NASAのパイオニア探査機が1978年に軌道に入っています。プローブの1つは大気圏突入を耐え抜いて、途絶えるまで1時間以上も地球にデータを送っていたとか。NASAが最後に金星に送ったのは1989年に打ち上げたマゼラン探査機で、1994年に金星の大気に突入して消滅しています。
探査するには好奇心をそそられる場所ばかりの太陽系ですが、火星の極寒で乾燥した荒れ地とは逆に思える暑苦しくて燃えるような世界の金星に投資するというNASAの判断は、地球が生命のオアシスになった一方で最も近い惑星がそうならなかった理由を解明したいという決意を物語っています。
「我々は科学ミッションを通して宇宙探索の限界を押し広げ続ける」とネルソン長官。どんな発見があるのか、今から楽しみですね。
Source:, NASA(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10), The New York Times, Twitter,