アップルのWWDCは、5分間の「オープニング映像」にすべて詰まっている。その深さと歴史を紹介 #WWDC21

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  • author 山本勇磨
アップルのWWDCは、5分間の「オープニング映像」にすべて詰まっている。その深さと歴史を紹介 #WWDC21
Image: Apple

オープニング映像始まったときのドキドキ感が好き。

いよいよ今夜からApple(アップル)の開発者イベント「WWDC(Worldwide Developers Conference)」が始まりますね。みなさん、キーノートはリアルタイムで見る感じですか?(日本時間6/8 2:00開始)

WWDCは、キーノート本編ももちろん注目ですが、僕はその冒頭3〜5分で流れるオープニング映像が、本編と同じくらい大好きなんです。「ついにキーノートが始まる」という高揚感を煽ってくれるし、その年に発表される内容を示唆していることが多い。それに、後から見返したとき「こういう意味があったんだ」と思うことが多々あるのも面白いところです。

そんなAppleファンを魅了してきた過去のWWDCのオープニング映像を、順を追ってまとめます。ひとつでも良いので、ぜひ気になったものを見てみてください。きっと今年のWWDCがより一層楽しめますよ。


2012年:ジョブズ退任後、初のWWDC。Siriが辛辣ジョークでAndroidをイジる

WWDCのオープニング芸は、ジョブズCEO退任後初のWWDCとなった2012年から始まります。ジョブズに比べて淡白だと評されたティム・クックCEOのキーノートは、オープニング映像でクールなジョーク全開

「ねえ、誰かIce Cream SandwichJelly Beanの仕事してる人いる? 誰があんな名前つけたん?」「Ben & Jellyじゃね?」

「これはマジな話、Samsungの新製品にワクワクしてる」「いや、スマホじゃないよ。冷蔵庫な」

とSiriが他社のことを煽りまくり。(今となってはGoogle アシスタントに…ゴホン)

ちなみにWWDC 2012は、Retinaディスプレイ搭載の初のMacBook Proが発表された年でした。近年のWWDCで一番ハードウェアの発表が楽しかった回だと記憶しています。

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>>WWDC 2012を見る(Apple Podcast)


2013年:デザインの年。「ジョブズならこうしなかった」と言われすぎたAppleからのアンサー

2013年は、アップルにとって「デザインの年」でした。WWDC 2013で発表された「iOS 7」は、当時Appleのプロダクト(製品)デザイナーだったジョニー・アイブの手によって直接デザインされたOSと言われており、「ハードウェアとソフトウェアを分け隔てなくデザインする」というAppleらしい采配が目立ったOSでした。発表当時は「ジョブズならこうしなかった」と批判されたiOS 7のフラットデザインも、今では世界標準のスタイルになりました。

そんなWWDC2013のオープニング映像は、前年とは打って変わって真面目路線に変更されます。映像はTBWAとデレク・シアンフランス監督が作った、線と点をモチーフにしたシンプルなアニメーション。「私たちは勘違いし始めている。便利さこそが楽しさだと。種類の多さこそが選択肢の多さだと」というメッセージのもと、Appleの本質を訴えかけた映像になっています。

当時は故ジョブズの退任後ということもあり、何を作っても「ジョブズならこうしてなかった」と一部のユーザーから批判されていた時期でした。Apple=ジョブズのイメージに引っ張られていたAppleがWWDCで打ち出したメッセージが、「Appleの本質はデザインである」でした。

(ちなみに当時高校生だった僕はこの映像に衝撃を受け、高校の文化祭でこれをオマージュした作品を作ったという思い出深いものでもあります)。

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>>WWDC 2013を見る(Apple Podcast)


2014年:デベロッパーのイメージって?

この年以降、WWDCのオープニング映像は、「開発者」という職業にフォーカスしたものが多くなります。2014年で5周年を迎えたApp Storeは、当時毎週3億人が訪れる巨大なプラットフォームになっていました。昔はアプリ=ゲーム・娯楽だったものが、生きるためにすら必要なものになっていきました。

WWDC 2014のオープニング映像は、「オタクっぽい」「髭を剃っていなくて、メガネで…」「部屋に閉じこもっていて…」といったステレオタイプな開発者のイメージが語られるところからスタート。「だけど、彼らの作るアプリは我々の生活を素晴らしいものにしてくれています」という意見をきっかけに、「Airbnb(民泊アプリ)が私の生活を救ってくれた」と語る女性や、「Alipay(QR決済アプリ)がないと今の生活がない」と語る屋台店員風の男性など、仕事にアプリが欠かせないさまざまなプロが登場します。

開発者が社会的に欠かせない職業であることを、リスペクトをもって広めたのでした。

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>>WWDC 2014を見る(Apple Podcast)

(2015年と2016年は映像が残っていないため飛ばします。2016年はそもそもオープニング映像がなかった記憶)


2017年:APPOCALYPSE(WWDC 2017)

WWDC 2017のオープニング映像のテーマは、「世界からすべてのアプリが消えたらどうなるだろう?」。

Appleへ入社してきたひとりの男性が、業務デスクとしてデータセンター(App Storeのサーバールーム)に通されるところからスタートします。「大移動を前に、ごたついてて…」と説明する担当の女性(2017年は新社屋Apple Parkが完成し、移動する必要があったことから、こういったストーリーになったと予想)。男性は、電源を使うためにサーバールームのコンセントを抜いてしまいます。

すると全世界のスマホから、アプリが消滅。マップアプリが消え、町中で交通事故が多発するなど、世界的な緊急事態に陥ってしまいます。町にはアプリがアナログ化した現象が蔓延。自撮りを配る女性(Instagram)、CDを売るおじさん(iTunes)、飴をハンマーでぶっ叩くゲーム(キャンディクラッシュ)、ムキムキマッチョが並ぶお店(Tinder)、顔を交換する手術を受けるカップル(当時流行ったFace Swapフィルター)…。アプリがない世界はカオスになりました。

おおげさだけど、アプリがなくなるとこういう世の中になる。だから、世界はあなた(開発者)にかかっている(The world is depending on you.)という、開発者への感謝を贈る粋な映像となっています。

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>>WWDC 2017を見る(Apple Podcast)


2018年:愛のあるデベロッパーいじり「開発者の生態」

おバカなオープニング映像はWWDC 2018でも継続。世界各地からWWDCの会場に集まってくる開発者を、冗談まじりに紹介する内容となっています。

「毎年、世界でもっとも神秘に包まれた種による大移動が行なわれている」「11ヶ月半の冬眠が終わり、夜行性の洞窟に住む彼らには厳しい日差しが降り注ぎます」「開発者は自分たちを差別化するために、互いにシンボルを見せ合います(昔のWWDCのパスをつけている人の画) 」などと、ギリギリなジョークです(笑)。

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>>WWDC 2018を見る(YouTube)


2019年:世界が眠りについている間、あなたは夢を見ている

WWDC 2019のオープニング映像は、開発者がはたらく様子にフォーカスした内容となっています。一室だけ明かりの灯るマンション。子どもやパートナーが寝静まった深夜、ひとりで黙々とスクリーンに向かってプロジェクトを進める開発者の姿。

書いたコードが実行できない…イライラ、デリートデリートデリート…。そんな開発者の苦悩が描かれた映像になっています。映像の最後には「世界が眠りについている間、あなたは夢を見ている(While the world sleeps, you dream)」。“夢”の2つの意味をかけたメッセージを、開発者に贈りました。

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>>WWDC 2019を見る(YouTube)


2020年:WWDCの会場はインターネットのなかへ(本当のアポカリプス)

WWDC 2020は世界的に感染症が広まっている影響で、初のリモート開催となります。サンノゼに集まれなくともWWDC参加者の心はひとつ。そんな様子を表した、簡潔でありながら深いオープニング映像でした。

WWDCのキーノートは通常ステージ上で喋りながら行なうのですが、2020年は事前に収録した映像を中継。Apple Parkのいろいろなところにカメラが移動する、事前収録だからこそできるスタイルが採用されました。発表内容もコンパクトにまとまって非常に見やすかった記憶もあります。

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>>WWDC 2020を見る(YouTube)

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