エイリアンは銀河全体を征服するためにワープドライブを必要としないだろう

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
エイリアンは銀河全体を征服するためにワープドライブを必要としないだろう
GIF: J. T. Wright et al., 2021/The American Astronomical Society/Gizmodo US

宇宙は広い。そしてとてつもなく古い

広いのと古いのとでは、どちらかというと古いほうが度合いが大きいんじゃないか、と米GizmodoのGeorge Dvorsky記者は書いています。そして、宇宙が誕生してからこんなにも長い時間が経っているんだから、どこかで宇宙人が誕生し、その文明が栄え、やがてまわりの星や銀河を征服し始めていてもおかしくないんじゃないか? と想像力の翼を思いっきり羽ばたかせています。

いくら星と星、銀河と銀河との間に広大な空間が広がっていようと、宇宙の広さ自体はフェルミのパラドックスを解く重要な要素だとは考えにくい、ともDvorsky記者は書いています。ちなみに「フェルミのパラドックス」とは、こんなにも広い宇宙なのだから、人間以外の知的生命体が存在する星がひとつやふたつあったっていいはずなのにも関わらず、今まで一度もそんな生命体に遭遇したことがない矛盾を指摘している理論です。

でも、本当に遭遇したことないんでしょうか? ペンタゴンによるUFOレポートを読んでいると、宇宙人はすでに地球にうじゃうじゃ潜伏してるんじゃなかろうかって疑いたくもなるものです。

そこで、もしもこの広くて古い宇宙に宇宙人がいたとして、まるでSF小説『三体』みたいに宇宙船を送りこんでほかの星を侵略しようものなら、そこから銀河をまるっと一個征服するまでにどれだけ時間がかかるのか、コンピューターシミュレーションで試算してみた研究がこの度発表されました。

はじき出された答えは10億年。我らが宇宙の歴史は、それをはるかに凌ぐ138億年です。


銀河征服のシナリオ

アメリカ天文学会が発行している『Research Notes of the American Astronomical Society』誌上で今年の6月に発表されたばかりの論文で、共著者のライト(Jason Wright、ペンシルバニア州立大学)とシャーフ(Caleb Scharf、コロンビア大学)は、科学技術が発展している文明ならば、現時点で人類が保持している技術レベルで作れる程度の宇宙船を使ってでも、天の川銀河ぐらいのサイズの銀河をおよそ10億年で完全制覇できることをコンピューターモデルで示しました。モデルのコーディングおよび数学的分析を担当したのはキャロル=ネレンバック(Jonathan Carroll-Nellenback、ロチェスター大学)。フランク(Adam Frank、ロチェスター大学)もこの研究に携わっています。

このモデルから学べることはふたつあります。星間移住のあり方と、宇宙のどこらへんを探せば宇宙人が見つかりそうかというヒントです。

実際のシミュレーションはこちら。

GIF: J. T. Wright et al., 2021/The American Astronomical Society

舞台は天の川銀河ととてもよく似た架空の銀河です。渦巻く無数のグレーの点はそれぞれが星で、ここに科学的に発展した文明が入植を果たすとその星はマゼンタ色に変わります。白くチラチラと光って見える立方体は星間移動中の宇宙船です。

シミュレーションは最初こそは非常にゆっくりですが、指数関数的な成長フェーズを迎えると一気に侵略の速度を早め、銀河をみるみるうちにマゼンタ色に染めていきます。この飛躍的な侵略スピードは、銀河の中心に向かえば向かうほど星の密度が高いことと、じっと待ってさえいれば銀河の回転により星がこちらに向かってきてくれるのでわざわざ宇宙船を遠くまで送り出さなくてもいいこととも関係しているそうです。

この架空の銀河の場合、外側の星を除いての大部分が植民地化されるまでにかかった時間はおよそ10億年でした。それってけっこう長いじゃない? と思いますけど、銀河の寿命から考えるとたったの7〜9%に満たないのです。すなわち、宇宙時間で言ったら大したことないんですね。

最低限に設けられたパラメーター

このモデルは同じ研究者チームが2019年に発表した別の論文がベースとなっています。チームの一員であるライト氏いわく、

2019年に発表したモデルは、現時点で人類が有する科学技術を駆使して作った程度の低速飛行しかできない宇宙船をもってでも、その宇宙船が地球からもっとも近距離にある星に到達できさえすれば、銀河の寿命よりも格段と短い時間内に銀河全体を制覇できることを示しています。

この数理モデルをもとにコンピューターグラフィックで征服のペースと分布の一例を表したのが今回の研究でした。ポイントは、銀河の回転に伴う星そのものの動きです。

星そのものが動いているので、ひとつの星へ移住を果たせば、その星がやがて銀河内の別の場所に連れて行ってくれるんですね。そこで新たなフロンティアで新たな星が近づいてきたときに、移住のチャンスも巡ってくるというわけです

とライト氏は説明しています。

なお、このコンピューターモデルにはいくつかの厳密な制限が設けられています。まず、移住に使われる宇宙船は1万年に1度のペースでしか出航できません。さらに、どんなに高度な文明であろうとも1億年で滅びる運命(さだめ)となっています。また、宇宙船は10光年より先へは進めないし、進む速度は秒速10km以内に限られています。ちなみにこの秒速10kmというのは、すでに人類が打ち上げているボイジャー号やニュー・ホライズン号と同等のスピードです。ライト氏はこう語っています。

以上のことから、このモデルが示しているのは特段アグレッシブに侵略を進めている文明ではないとわかります。さらに、ワープドライブなども使っていなくて、現時点で人類が保持している技術で設計できる程度の宇宙船で遂行できます。

もしかしたらソーラーセイル(太陽帆)を使っているかもしれませんし、巨大なレーザーを用いて推進力を得ているのかもしれません。または、10万年かかる星間旅行にも耐えうるほど強固で、ロケットの燃料と近距離の星の重力から得られる推進力で進み続けられる宇宙船なのかもしれません。

宇宙人を探すなら銀河中心がいいみたい

これらの制限下でも、天の川銀河規模の銀河が外側の星を除いてほぼ完全に征服されるまでにかかる時間は10億年。そしてライト氏曰く、銀河の寿命は100億年を優に超えるので、このような征服劇が複数回起こりうる時間は充分にあるのです。

おもしろいことに、このシミュレーションで顕著だったのはいかに銀河の中心部においての侵略スピードが速まるか。銀河の中心にある「バルジ」と呼ばれている部分は星の密度が高いので星間距離も短く、星から星へと渡り歩くのが容易であることからも納得がいく結果なんですが、これを実際シミュレーションで見てみるとマゼンタの点が増殖していくスピードに「うわっ」ってなりますよね。ライト氏はじめ研究者チームの皆さんにとっても印象的だったみたいです。

この観測から、銀河の中心部にこそSETI(地球外生命体)が存在する可能性が高いのではないか、と研究チームは結論づけています。天の川銀河の中心をターゲットとした宇宙人探しは以前にも行なわれていて、残念ながらまだ有力な手がかりは見つかっていないのですが、今後の探索に期待が高まります。

もちろん、今回のシミュレーションはかなりシンプルな予測の上に成り立っているモデルに過ぎません。ですから研究チームのさらなる目標としては、パラメーターをより複雑化させ、より現実的なシミュレーションを行なうことだそうです。

ワープドライブは必要なし

今回の研究は、フェルミのパラドックスについての理解を深める結果となりました。ライトさんは、「もし宇宙飛行できるような宇宙人がこの銀河に存在しているのであれば、彼らには天の川銀河全体を征服するのに充分すぎる時間があったはず。ワープドライブのようなSFトリック抜きでもね」と話しています。ただ、彼はフェルミのパラドックスを特に疑問視していないそうで、「これまで私たちが宇宙人と遭遇してこなかった理由はたくさんある」と考えているそうです。

「逆にこれまで宇宙人に遭遇していたらびっくりしますよ!」とライトさん。「ただ、この研究はSETIの存在を信じている人、信じたい人たちにとってはいいニュースだと思います。銀河内にまだ宇宙人が潜んでいる場所はあるかもしれませんから」。

銀河征服は自明の理?

SETIの存在を信じたい人。米GizmodoのDvorsky記者もそのひとりです。

今回のシミュレーションでDvorsky記者にとって印象的だったのは、科学的技術を有する文明が恒星系全体をコントロール下に置き、そのエネルギーを余すことなく駆使できる「カルダシェフ・スケール タイプII」から銀河系全体をコントロールする「カルダシェフ・スケール タイプIII」へとスケールアップしていく様子だったそうです。

でも、なぜ高度な文明を持つ地球外生命体が恒星系、果てには銀河系へと野心的な征服劇を繰り広げる必要があるのでしょうか? この点について、Dvorsky記者が引用しているのはディック(Steven J. Dick)の「Intelligence Principle(直訳:知能原理)」です。

文化的進化の主な推進力は知識と知能の持続、向上、そして永続化であるからにして、知能に向上できる余地があるならば、必ず向上されるだろう。


Cultural Evolution, the Postbiological Universe and SETIより抜粋

文明というものは常に不可能を可能にしていきたいと欲し、その欲求が途絶えることは今後もないだろう、とDvorsky記者は書いています。だからこそ、科学的に発展した文明がその影響力を銀河の隅々にまで広げ、恒星のような貴重なエネルギー源をダイソン球などを構築して最大限に活用していきたがるのが道理でしょう、とも。

Dvorsky記者が「個人的なヒーロー」と崇めるセーガン(Carl Sagan)は、もし地球外生命体が存在していたら他の星を征服するために波のように押し寄せるだろう、と言っていたそうです。ですが、文明がカルダシェフのタイプIIIに到達するまでには気の遠くなるような長い時間がかかる、とも言っていました。

今回のシミュレーションを見るかぎりでは、実際にはそんなに長い時間はかからないのかもしれません。ということは…、地球人が宇宙人に遭遇する確率もけっこう高いのかもしれませんね。もしくは、もう遭遇してたりして?

Reference: Research Notes of the American Astronomical Society

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