豪邸はもう禁止にしないとね

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豪邸はもう禁止にしないとね

自分の金で何を買おうと自由でしょ!

それで片付くほど気象変動は甘くはないんだから!

…と言われたらそれまでだけど、富裕層はエコじゃない贅沢をある程度我慢すべき潮どきです。

特に我慢しなきゃならないのが豪邸でしょう。あんなもの建てるから上位1%のカーボンフットプリントが底辺10%の175倍なんてことになるんです。脱炭素を平等にやるなら、まずここから×にしないとね。

豪邸とは?

明確な定義はありませんが、いう「豪邸」は通常5,000平方フィート(465平方m)以上の広さの住宅を指します。まあ、これには異論もあって、HomeLightブログ創設者兼建築評論家のKate Wagnerさんが好むのは次の定義。

「豪邸かどうかを見分ける要素は、建てる意図でしょうね。一定の生活レベル以上なことを伝える道具として建築が利用される場合、それを豪邸と呼ぶんだと思います」

要するに見栄で建てるものが豪邸って理解ですね、はい。

豪邸のフットプリント

2020年のある調査報告によると、高級住宅街の豪邸に住むアメリカ人が排出する温室効果ガスは貧困街の家のアメリカ人より25%も多いんだとか。デカいというだけで冷房も暖房も電気も水道も、とにかく無駄にエネルギーかかりますからね。

建材・資材だって無駄にかかります。25,000平方フィート(2,323平方m)を超える「スーパー豪邸」は、木を380本切り倒さないと建てられないという2019年の報告も。アメリカの平均的な住宅は20本で間に合うのに、温室効果ガス抑えてくれる木が380本もかかるんです。さらにコンクリートとガラスも余分にかかります。どちらも製造で炭素ガンガン使いまくる建材で、フットプリントは増すばかり。

あと用地も要りますよね。これは荒地を整地したり、家をたて壊して用意するわけですが、「高級住宅街開発でちいさな山が消えることもあって、マクマンションと呼ばれる大邸宅街はそのいい例です。木は炭素循環から消え、野生動物の生息域も消えてしまうのです」とWagnerさん。解体工事だって、言うなれば建てるのにかかった全エネルギーを無に帰する行為であって、短期ではわからないけど最終収支が負荷になる「具現化した炭素(embodied carbon)」ってやつですしね。

しかも豪邸は1軒1軒デザインが違います。トロントのドレイク邸(5万平方フィート=4,645平方m)はNBA公式サイズの屋内バスケットボールコート付き。ビバリーヒルズ最高ランクのベルサイユ宮殿ジェフ・ベゾス邸(1億6500万ドル=約182億円、 建坪1万3600平方フィート=1,208平方m、敷地面積3万6000平方m)なんてゴルフコースと、アマゾンの密林みたいなシダ類の植物園が7つもあります。最近離婚したキム・カンダーシアン&カニエ・ウエストの豪邸(6000万ドル=約66億円)は、わび・さびのミニマリストデザインで、浴槽はキッズ全員が入れる巨大なストーン。無駄を削るリノベに6年近くかかりました。どれもこれも資源の無駄遣いと言われればそれまでです。

ミニマリストの豪邸。無駄を削ぎ落とすのに6年かかった
Video: Luxury Zone/YouTube

それじゃなくても炭素予算は先細りでお先真っ暗なのにね。お先真っ暗というか、もう北米からパキスタンまで50℃超えが当たり前で、デスバレーは54.4℃の記録更新中。カナダのブリティッシュコロンビア州では熱波で貧困層を中心に486名が突然死して、ムール貝も蒸し焼きになりました。去年のオーストラリア森林火災で死んだり棲み処を失った動物は30億匹。豪邸は空調で快適だろうけど、無駄な排出のツケが回るのは非力な貧困層と野生動物です。

まあ、豪邸だけが排出源じゃないと言えばそうですけど。2019年には建築物の電気・冷暖房が世界の温室効果ガス排出量の約38%を占めたそうですが、「家が大きいほどエネルギーはかかるよ。広さが平均の4倍、6倍、10倍だと、エネルギー消費も広さに正比例する」とペンシルバニア大学のDaniel Aldana Cohen社会学助教授は言ってますよ。特にアメリカの家はセントラルヒーティングだから広さ=消費量ですもんね…。

環境の危機的状況を回避するためには、経済全体で2030年までに実質排出ゼロにするカーボンニュートラルの実現が欠かせません。ふつうに考えて、一番浪費するところ(建築物では豪邸)からカットするほうが早いですよね。使うエネルギーが減れば、それだけ再生可能エネルギーへの切り替えも不要になりますし。

ある日を境に「豪邸撤廃!」というのも無理があるので、やるなら豪邸(建坪5,000平方フィート=約465平方mを超える家)は固定資産税率100%にして建造意欲を削いでから、2025年くらいに豪邸のひとり暮らしを全面禁止にするなどの段階的アプローチが現実的かもしれません。そもそも金余りだから豪邸なんて建てるわけなので、富裕層の税率を上げるのでもいいし(これはどっちみち必要)、そもそもこれだけ貧富の差が出ること自体おかしいので資本主義経済やめちゃうのでもいいけど、そっちは時間がかかりそう。とりあえず豪邸禁止が第一歩…ですかね。

意識高い系の豪邸オーナーはどうなるの?

世の中には環境保護運動してるのに豪邸に住んでる人もいますよね。その人たちにも同じルールが適用になるのかどうか? これに関してはアシュトン・カッチャー&ミラ・クニス夫妻が参考になるかもしれません。

二人が住むのはLAの壮大な小屋で、「建材はすべて再生材、電力はすべてソーラー」のサスティナブルなファームハウスってことになってますが、先の建築評論家のWagnerさんに言わせると「3,000、5,000、1万平方フィートも建坪がありながらエコなんてなりようがない」とのこと。いかにも大豪邸なマクマンション(カスタムメイドの住宅より安く、石油精製プラスチック素材多め)とは一線を画しているけど、資源&エネルギーの使用効率はお世辞にもいいとは言えません。

天に届くばかりの天井、オープンフロアプラン。 「みんなシャンデリアに圧倒されるから周りに小屋つくったらいいんじゃない? ってことでつくった家なのよ」とミラ・クニスはTVで屈託なく笑ってたけど、広い廊下や玄関ホール(ホワイエ)は昔ながらの豪邸のたたずまい。冷暖房にかかるエネルギーはバカになりません。

気温が上がると、人がいる下だけじゃなくて、人が誰もいない天井の上のほうまで空調しなきゃならないので、お金もエネルギーもすごくかかります。(Wagnerさん)

いくら再生エネルギーだからって無尽蔵に使えるわけじゃないですもんね。それに、この種のソーラーパネルの製造には(供給不足の)鉱物資源も必要です。そのうち無限に使える代替エネルギーが登場するかもしれませんが、それまでは脱カーボンを念頭にやりくりしないと…。

「30年でクリーン&サスティナブルなエネルギー生産量がどの程度伸びるかはわからないが、この先15年くらいは脱炭素を急がないとゼロサムは望めないことだけははっきりしている」「世界全体でソーラーパネルが大量生産されるまでにはまだ5年から10年かかるので、当座は1KWも無駄にできない」とAldana Cohen社会学助教授は語っていますよ。

富裕層の悪習慣でカーボンフリーな電力が浪費されると、せっかくのクリーンエネルギーが枯渇して世界的な価格上を招きます。

金持ちの贅沢な暮らしのために、グローバルサウス(資本主義で割を喰う南の発展途上国)の低所得層がもっと高い料金を払わないと太陽光発電を利用できないなんてこと、自分はあってはならないと思う。[...]こうした制度の根底にあるのは環境のアパルトヘイトだという事実に目を向けないといけない。何もかも奪われてみじめな暮らしをする層とありえないほどの浪費と贅沢をする層。このふたつは完全にひとつながりのものとして見る必要がある。(Aldana Cohen助教授)

板の間に雑魚寝で暮らせと言ってるんじゃないですよ。居住空間には快適性も必要。だけどドレイクみたいに寝室テラスに1,100平方フィート(102平方m)も要らないんじゃないの?って言ってるだけ。カーラ・デルヴィーニュみたいにワンフロアまるまる大人のプレイルームなんてのもさ、いま何時代よ? フランス革命前かいな。下の動画では「マイ・ヴァジャイナ・トンネル」なるものをくぐって「インスピレーションを得て」反対側のドラム式洗濯機みたいな出口から「生まれ変わってクレンズしたよ!」と喜ぶカーラをボーッと見れます。

「床がものすごく硬いの。カツカツ歩くと足を傷めちゃうから部屋からキッチン行くときはキックボード使うのよ」
Video: Architectural Digest/YouTube

今年、建築界最高栄誉賞が贈られたのはAnne LacatonとJean-Philippe Vassalのフランス人の建築家デュオ。ボルドー中心部から電車で10分のところにある60年代の老朽アパート「Grand Parc」などを取り壊すんではなしに、世にも美しい低炭素の公営住宅にリノベートした功績が評価されました。スーパーリッチが金に飽かせて悪趣味な豪邸建てて住宅相場を爆上げするトレンドもそろそろ限界で、さすがに100億円超えの大邸宅は建てすぎて余ってきています(マイリー・サイラス邸だって山火事で燃えちゃいましたしね…。あのときのマイリーのツイートはクラッシーだった)。そういうのはNOにして、こういう公営住宅を低炭素なデザイン力で贅沢な空間に変えるマジックを全力でプッシュしていきたいな。

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