人間のせいで、魚も覚醒剤中毒になる

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  • author Dharna Noor - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岩田リョウコ
人間のせいで、魚も覚醒剤中毒になる
Image: Shutterstock

魚も知らない間にクスリ漬けにされちゃたまったもんじゃない!

ヒトが覚醒剤などの違法ドラッグを摂取する際、体内でそれを新陳代謝するわけですが、代謝されなかった分はおしっことして排出されます。でも下水にはおしっことして出てきた残りのドラッグを濾過する仕組みなんてもちろんありません。ということは、そういった化学物質で汚染された水が放出されているということです。

生物学のジャーナルJournal of Experimental Biologyに、行動生態学者チームがこういった水が魚にどのような影響を与えるかについての論文が掲載されました。

汚染された水で魚がドラッグ中毒に

調査チームは覚醒剤が魚にどんな影響を与えるかに着目。ヨーロッパ原産ニジマス属の淡水魚であるブラウン・トラウトを対象としてスタート。まず40匹の魚 x 2チームをバラバラの水槽に入れます。一つの水槽には自然にある川の汚染レベルと同じ(1リッターにつき1ミクログラムの覚醒剤)状況を作ります。もう一つは同じ水質で汚染なしにします。

魚たちはそれぞれの水槽で8週間過ごしたあと、みんな同じ水槽に移されました。すると覚醒剤に汚染された水で過ごした魚は中毒症状を見せたのです。合同の水槽で最初の4日間、普通の水の魚たちと比べて汚染された水の魚たちは活気を失っていたそうです。これは不安とストレスの現れだとチームは認識。覚醒剤中毒の人間が起こす典型的な離脱症状と同じなんだそうです。

その後もチームが観察しつつ、覚醒剤で汚染された水を合同の水槽に注入してみると、汚染された水槽にいた魚たちの50.5%が覚醒剤が流れてくるほうに向かって泳いでいったことが観察され、一方、普通の水にいた魚たちは41.5%がそちらに泳いでいったとのこと。

論文は「結果としてドラッグに汚染された水で魚が薬物中毒になることがわかりました」と締め括られています。のちにチームは魚の体の脳の細胞を調べることに。この時点で10日以上覚醒剤とは接触していない状態です。しかし覚醒剤に汚染された水にいた魚の脳には薬物の跡が残っていたとのことです。この研究で、おそらく自然界でも同じようなことが起こっていて、覚醒剤の残りが湖や川に流れ出しているだろうということがわかりました。生態学的に魚が覚醒剤に触れることで採餌や交配という行動に影響が出て、食物連鎖に大きな影響を与える可能性があると論文には書かれています。

ドラッグによる水質汚染は珍しくない

実は人間が使った薬物の残りが流れ出て海洋生物に影響を与えていることがわかったのは、今回が初めてではありません。2018年にイタリアの研究チームが川に流れ出たコカインでうなぎが「ハイ」になっていることがわかり、さらにはうなぎの骨格や筋肉がダメージを受けていることも判明しています。

同じ2018年には、アメリカ北西部のピュージェット湾のムール貝がオピオイド鎮痛薬中毒に陽性反応が出ているという報告もありました。2019年にイギリスでもエビにコカインとケタミンの反応が確認されています。そういった薬物以外の一般的に医療に使用される薬物、例えば抗うつ剤なども海洋生物に影響が出ていて、ザリガニが抗うつ剤の流れ込んだ水の中ではより大胆に行動することが実験でわかっています。これらの研究で、人間の行動によりちょっと変わった影響が環境に出てきてしまっているのが明らかになりました。

人間の薬物中毒がまたひとつ、自然環境に対して予想もしなかった負荷を与えていることがわかりました。最近は人間、なにしても自然壊してます! どうしよう!?

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