戦慄のスローモーション。ゾウガメがアジサシのヒナを狩るめずらしい映像

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  • author Isaac Schultz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
戦慄のスローモーション。ゾウガメがアジサシのヒナを狩るめずらしい映像

見るに耐えない……。

たった2分弱しかないこの動画に名状しがたい恐怖を感じてしまうのはわたしだけでしょうか…。記事を翻訳するために最後までなんとか視聴しましたけど、苦しかった。

それほどまでに自然の無情さ、そして意外さを露呈しているこのワンシーンは、東アフリカ沖のインド洋に浮かぶセーシェル共和国のフレガット島で撮影されたもの。アルダブラゾウガメがまだ幼いインドヒメクロアジサシに噛みつき、殺し、食べてしまうまでの一部始終が、耐えられないほどのスローモーションで進行していきます。

心の準備はいいですか?では、どうぞ。


事件は2020年7月30日の午後に起きました。フレガット島に住むメスのアルダブラゾウガメ(Aldabrachelys gigantea)が、流木の上で休んでいたインドヒメクロアジサシ(Anous tenuirostris)の幼鳥にそろそろと近づいていくところから狩りは始まります。

口を大きく開けながら近づいてくるゾウガメは、まだ幼いアジサシにとって脅威でしかなかったはず。アジサシは当然後ずさりし始め、次第に流木の端へと追い詰められていきます。そしてもはや逃げる場所がなくなった時、羽をばたつかせ、ピーピーと悲痛な鳴き声を上げながらくちばしで攻撃し始めます。しかしそんな抵抗もむなしく、次の瞬間ゾウガメはアジサシの頭めがけて大きなアゴを振り下ろし、瞬殺…!アジサシの生気を失った体がダラリと地面に崩れ落ちます。動画はここで終わってしまいますが、この後ゾウガメはアジサシを丸飲みしたのだそうです。

カメは、のろくておっとりした平和主義者だなんて思ってましたけど、カメだって生きるためには食べるし、タンパク質を補うために肉だって食べるんですね。食事の大半は植物性ですが、骨やカタツムリの殻(カルシウム源)、屍肉、そして中にはカエルを食する半水生のゾウガメもいるのだとか。

あらわになった殺意

この動画を撮影したのはフレガット島の自然環境保全官、ゾラ(Anna Zora)さん。ゾラさんはケンブリッジ大学の生物学者・ガーラック(Justin Gerlach)さんとタグを組み、映像から得られたゾウガメについての新たな知見を『Current Biology』誌上で発表しました。

というのも、過去にもゾウガメが鳥やその他の小動物を食す様子は観察されていたものの、どのように獲物を捉えたかまでは把握されていませんでした。「これまで観察された例では、ゾウガメが動物を食べるために直接殺したのか、それともたまたま踏みつぶしてしまった動物を食べていたのかは分からずじまいでした」とガーラックさんは説明しています。

ところが、今回の映像を見る限りではこのゾウガメは明らかな殺意を持ってアジサシに近づいています。つまり、アジサシはそのまま食べられるモノではなく、まずは殺してから食べられるようになるモノだと認識していたことになります。

「ゾウガメはアジサシをまっすぐに見据え、そちらへ意図的に向かっている様子が見て取れます」とガーラック氏。「これは非常にめずらしいことで、普段のゾウガメの行動からかけ離れています」。さらに、

今回確認されたゾウガメの行動は、おそらく例外であり慣例ではないでしょう。めずらしい条件が重なったからこそ敢行された行動だと思います。ゾウガメが狩りに成功するためには、獲物よりも素早く動けなければなりませんから、可能性が限定されてきます。もしアジサシが逃げ出していたら、もはやゾウガメには追いつけなかったでしょう。

けれども、木の上に営巣する種であるアジサシにとって一番危険な場所は地面の上なので、流木から地上に降りて逃げるのをためらったのだと思います。その隙を狙って、ゾウガメが食らいついたのです。

ゾウガメもアジサシも必死に生きている

こんなに短い映像も生物学者にとっては情報の宝庫です。ガーラックさんは続けてこのように話しています。

今回の発見から、私はふたつのことを学びました。まずは、カメはのろまでつまらない生き物なんかではなく、人々が想像しているよりももっとずっと複雑で、ずっと活動的で、驚くほどの知能を持っているということです。

ふたつめは、観察こそが予想外の発見につながるということです。科学的な大発見は高価な機材やハイテクラボの中だけで見つかるわけではないんですね。

今後の研究課題としては、この行動をもっと深く掘り下げていければと思っています。たとえば、アルダブラゾウガメのうちどのぐらいの個体がこのような行動を取っているのか(少数派、または大半?)、どのぐらいの頻度でやっているのか(このゾウガメがいかにも堂々としていることから狩りの経験値が備わっていると推察されます)、さらにはこの行動がゾウガメにとってどれぐらい重要であるか、などです。アジサシはたまにありつけるご馳走なんでしょうか、それともなにかほかにも重要な価値があるのでしょうか?

近年フレガット島ではインドヒメクロアジサシの生息環境修復が積極的に行われており、今ではおよそ25万羽(巣の数にしておよそ1万)が棲息しているそうです。一方で、アルダブラゾウガメの棲息数はおよそ3,000頭。どちらも人間の開発行為により数百年前から数が減り続けてきていましたが、ゾラさんたちとしては今後も保全活動を続けて順調に増やしていくのが狙いです。

両方の個体数が増えれば、お互い鉢合わせする確率も必然的に増えてくるはず。ゾウガメとアジサシの命をかけた攻防が、フレガット島のあちこちで繰り広げられるかもしれません。

それにしても、アジサシって飛べるんじゃなかったっけ?ヒナだからまだ飛んで逃げられなかったのかもしれませんね。合掌…!

Reference: Current Biology

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