アメリカ宇宙軍のお仕事:GPSを守ってます

アメリカ宇宙軍のお仕事:GPSを守ってます

たしかにGPSってすごい、けど…。

米軍には8つの軍・部隊があるんですが、そのうち最近できた「宇宙軍」は、イロモノ扱いを受けがちです。トランプ政権下で生まれたって時点で不吉だし、そのミッションの多くは未来のもので、兵士を「Guardian」(守護者)って呼ぶところもSFめいてます。宇宙軍のガーディアンが実際宇宙に派遣されるのがいつになるのかもはっきりしない現状、世の中的には、宇宙軍って結局トランプの虚栄心を満たすためのプロジェクトだよね?という見方が広がってます。

Task & Purposeいわく、宇宙軍はそんな世間からの風当たりを少しでも和らげたいみたいで、みんなにとって大事な衛星を守ることが我々の責務だと言ってます。とくに強調してるのが、米国防総省が運用するGPSの防衛です。そう、誰もが位置情報で使ってる、あのGPSです。宇宙軍はYouTubeに「宇宙はつらいよ(Space Is Hard)」と題したリクルート動画を流し、ガーディアンたちが衛星をハッキングや破壊から守ることがいかに重要かを力説しています。

毎日みんなが使ってる衛星だから

「私がそれを大事だと考えるのは、(衛星技術を)毎日使っているからです。たとえば毎日使うGPSです」宇宙軍の情報官、Pierre Jones大尉は動画で語ります。作戦士官のNatalia Pinto大尉も「宇宙軍がサポートするもっとも重要なものは、一般市民の見地からすると、我々がGPSを持っているという事実です。GPSは個人や企業、銀行、あらゆる金融機関が利用しています。なので外から見ると、GPSはおそらく我々が依存しているもっとも大事なものです。」

GPSと聞いてパッと思いつくのは、近くのマクドナルドを探すといった使い道かもしれません。でもDefense Oneが指摘するように、GPSは間違いなく、宇宙ベースの技術の中でもっとも重要なもののひとつです。GPSシステムを構成する31の衛星は、移動する人に位置情報を提供するだけじゃなく、世界的な金融ネットワーク上でタイムスタンプを押すために必要な時刻管理をしていたり、電気グリッド事業者が正確なリアルタイムデータを維持できるようにしたり、セルラーネットワークのルーティングを支えてたり、交通信号のタイミングを合わせるのに使われたり、飛行機や船に航行データを提供したりしています。科学研究用途も無数にあり、地震や火山の監視、気象、水文、大気研究などなどで使われています。そしてもちろん、軍事用途も膨大です。

たしかに脅威はある

GPSは、New Yorkerいわく「きわめて頑健」ですが、それに対する攻撃も想定されています。地球上での脅威には、たとえばGPS信号に干渉したりドローンを使えなくしたりする「GPSジャミング」などがあります。もうひとつGPSにも「なりすまし」があって、これはGPSを使ったシステムをだましてニセのデータをレポートさせるものです。中国など他の国家も自前のGPSシステムの拡大を急いでいますが、他国の多くと違い米国では、衛星ネットワークがダウンした場合のための地上のバックアップシステムがありません。GPS衛星そのものが、リアルまたはバーチャルで、悪意のある誰かから攻撃される可能性もあります。

リスクは過大評価ぎみ

ただ電磁パルス攻撃とか、仮想上の脅威がたいていそうであるように、GPSが危ない、という話は政治家とか軍事専門家の間でたびたび話題になっていました。それでもWar on the Rocksによれば、こうしたリスクは誇張されることも多く、「GPSに依存する」と言われる民間技術の多くは実際はGPSを利用しているだけだし、軍事システムでのGPSジャミング/なりすましによる危険性は、通信保護機能や冗長性、暗号化といった方法で回避できるからです。

あとは衛星を物理的に撃墜されたり、GPSネットワークを何らかのコードで乗っ取られたり破壊されたりしたら、たしかに大変なことにはなります。でもWar on the Rocksは、リアルでもバーチャルでも、GPSが攻撃されたら一貫の終わりというわけじゃないといいます。というのは、衛星間には物理的な距離があり、アップロードにかかる時間も遅いので、どっちにしてもすごく時間がかかるので、その間に何かしら対応ができるというのです。2021年6月のRAND Corporationの論文でも、GPSの脆弱性に関する評価の多くは誇張されすぎだと結論づけています。

「人間の活動や自然現象が脅威になりうる時間は非常に限定的で、最長でも数日であり、ほとんどの脅威は空間的にも非常に限られている」とその論文にはあります。「GPS破壊または喪失のコスト試算に、現実的な改善案と既存の補完的技術が入っていれば、その試算は非常に低くなるだろう。」

今そこにある危機、という主張

リクルート動画では、宇宙作戦部長のJohn “Jay” Raymond氏が宇宙軍について、以前の売り文句よりは控えめな表現をしています。彼は宇宙軍がやってることは、地球を取り巻く宇宙資産を保護するための現実的作戦なんだと言ってます。

「かつて我々は、天文物理学やケプラーの法則、ガンマ線やソーラーフレア、ロケットサイエンス、ブラックホール、相対性理論といったことだけ心配すればよかったのです。でも今は、時速1万7500マイル(約2万8000km)で公転する3万個もの天体の追跡もしなくてはいけません。」とRaymond氏。 「我々の生き方全体が、我々による日々の衛星の防衛にかかっているんです。そう、宇宙とはつらいものなんです。」

ここではGPSがメインで強調されてますが、Pinto氏はもうひとつ、国際宇宙ステーション(ISS)の防衛における役割にも言及しています。ISSには「3人の宇宙飛行士が搭乗し、機上ではたくさんの研究が実施されている」と。

宇宙軍には2021年4月時点で5,000人近いメンバーと約1万人の文民、そして空軍から再配置された人員がいましたが、今後数年で合計2万人に拡大しようとしています。そんなわけでTask & Purposeによれば、彼らは採用目的のYouTubeTwitterアカウントを開設、8月にはカリフォルニアにあるヴァンデンバーグ宇宙軍基地での訓練に未来のリクルーターたちを送り出しています。

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