NFTで「ダンス」は何が変わる? 世界初NFTダンスアート作品を発表したダンサー、Miyuさんに聞いてみた

  • author Jun Fukunaga
NFTで「ダンス」は何が変わる? 世界初NFTダンスアート作品を発表したダンサー、Miyuさんに聞いてみた
Photo: GEEK PICTURES/ODORIBA

SNSで「#高速ステップ」が大反響を獲得しているZ世代ダンスアーティスト・Miyuさんは、パリで開催された世界最高峰のダンスバトル「JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL」ハウス部門で優勝。19歳にして世界一の称号を手にした実力派ダンサーです。

コロナ禍により多大な影響を受けているエンターテインメント業界で、ダンサーたちの新たなマネタイズの可能性を探ることを目的に企画された“ダンスパフォーマンスアート作品のNFT化”プロジェクト。企画したのは、 TVCMを中心に、グラフィック、イベント、キャラクターなど様々なコンテンツをプロデュースしている 「ギークピクチュアズ」と、ダンス専門クリエイティブエージェンシー「ODORIBA」です。

Miyuさんはこれに賛同し、世界初のダンスパフォーマンスアート作品「FREEDOM」を、NFTマーケットプレイス「OpenSea」にて販売しているのです。

実は、前澤友作氏とともに2023年に月を周回する宇宙プロジェクト「dearMoon」の最終選考に残っている1人でもあるMiyuさん(現在審査中のため、取材時のコメントは控えて頂きました)。

Instagramのコメントにもあるように、これまでも挑戦を続けることで、ダンサーとしての可能性を常に切り開いてきたMiyuさんが次に挑む、世界初となるダンスパフォーマンスアートのNFT作品とは。

作品作りの経緯やダンサーとしてのテクノロジーとの向き合い方など、お話を聞かせていただきました。

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──Miyuさんは何がきっかけでダンスをはじめられたのでしょうか?

Miyu:子供の頃から身体を動かすのは好きでしたが、8歳の時に地元のお祭りでダンスのパフォーマンスを見て、その後、母親にダンススタジオに連れていってもらったことがきかっけです。プロのダンサーとしてやっていきたいと考えるようになったのは中学3年生の頃で、高校はダンスを学べる学科がある学校に進学しました。

──数々のダンスバトル大会で輝かしい成績を残されているMiyuさんが、これまでダンサーとして活動してきた中で印象に残っている出来事はありますか?

Miyu:「JUSTE DEBOUT」はダンスを始めた当初からいつか優勝したいと思っていた大会でした。いつも携帯に大会のビデオをダウンロードして見ていましたし、そこで優勝するのは昔からの夢でしたね。

高校1年生の頃に、初めて海外のフリースタイルのセッションに参加した時は、大きな衝撃を受けました。参加しているダンサーの国籍も違うし言葉も全然通じませんでしたが、「ダンスで人と人がこんなにも通じ合えるんだな」と肌で実感しました。その経験がきっかけになって、世界で活躍できるダンサーになりたいと思うようになりました。

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世界初のダンスパフォーマンスアート作品「FREEDOM」。Miyuさんのダンスステップによりドローイングされている。

──NFTで作品を発表することになった経緯を教えてください。

Miyu:ほかのエンタメ業界と同じく、ダンス業界でもコロナ禍の影響でダンサーたちのイベントや活動の場所が減ってしまうような状況になりました。私自身も実際に人前に出る仕事が減りましたし、周りのダンサーのそういった状況を知っていたこともあり、ダンサーにとって新しいビジネス、マネタイズの可能性になるのであればと、今回の企画に関わらせて頂きました。

──自粛期間中、人前でパフォーマンスできない時はどういった活動をされていたのですか?

Miyu:自分の活動や表現することを止めたくはなかったので、これまでとは違うオンラインという状況の中でも世界中の人と繋がる方法を模索しました。いろいろな国の方とコミュニケーションを取るために、ワールドツアーと名付けてオンライン上の海外向けワークショップなども自分で企画しました。

──YouTubeなどの動画プラットフォームでは、投げ銭機能を使ってマネタイズもできるようになりましたね。

Miyu:リアル、オンラインに関わらず、実はダンサーのマネタイズの方法はすごく限られています。そのことを考えると、オンラインレッスンやYouTubeの投げ銭のようなシステムは新しいマネタイズの方法になっていると思います。

でも、レッスンで生計を立てる人もいれば、自分がプレーヤーとして大会に出て活躍する人もいるように、ダンサーにはいろいろなカテゴリーがあるので、マネタイズに対する考え方や方法はいろいろあっていいと思っています。ただ、マネタイズの方法自体が増えてくることはダンサーにとっては良いことだし、そういうことを知っているだけでも今後の選択肢が広がるはずです。

──今のダンス業界で今までになかったマネタイズ方法として、注目されている方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

Miyu:やっぱり、コロナ禍をきっかけにオンラインレッスンを始めたダンサーは多いですね。あとは私もやっていますが、オンラインコミュニティを作る人も多いですね。コロナ禍の影響で以前のようにいろいろな場所に行けなくなった中でもダンサーとしてマネタイズするという意味では、オンランレッスンや動画プラットフォームのライブ配信機能を使うことは新しいマネタイズの方法になっています。そういう風にダンサーの活動に関わることのほぼすべてがオンラインになったことはコロナ禍での一番大きな変化だったと思います。

──今回は、瞬間のアートともいえるダンスを、ドローイングに変換してNFT作品にしようというアイデアでした。

Miyu:ただのダンス動画ではなく、ダンス動画にひと工夫加えた動画がすごく好きで興味があったので、企画の段階でまず、自分がやってみたいことのリストを作りました。

その中に今回やったような絵具を使ったパフォーマンスがあり、絵具を使うのであれば、裏テーマとして、レインボーで"この世の中の自由を表現したい"ということを含めて、提案させていただきました。

今回は絵具を使ったため真っ白な部屋で撮影したんですが、撮り直しがきかない状況だからこそ、1度きりのダンスによる表現に価値があるはずですし、個人的にもいろいろ挑戦できたのでいい作品になったと思っています。

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ダンス作品や振り付けに著作権ができたら…

──「ダンサーの作品には、音楽等と違い著作権がないですが近い将来ダンス作品自体に著作権を持たせることに繋がるかもしれないですね」とTwitterで発信されていましたが、ダンス作品に著作権に持たせることができたら、それによってどのような変化がもたらされるのでしょうか?

Miyu:現状仮にTikTokで話題になって多くの人にダンスが踊られたとしても、振り付けには著作権のような権利はありません。だからダンス作品に著作権を持たすことができたら、それも新しいマネタイズの可能性になるのかなと思っています。

次のパリオリンピックの競技にブレイクダンス種目が追加されたり、中学校でダンスが必修化されたり、ダンスを習っていない人でもTikTokでダンスに日常的に触れるようになったことで、ここ数年はダンスに興味を持ってくれる若い人が増えています。ただ、まだまだダンサーという職業の社会的地位が低い気がするんです。ダンス自体はこんなに盛り上がっているにも関わらず、社会的に全然認められてない気がするし、将来の安定面を考えてダンスを諦めてしまう人も少なくありません。

そういうことを考えた時に、もし何か新しいマネタイズの可能性が生まれたら、今後ダンサーを目指す若い子も増えるはずですし、世間も少し認められてくるようになると思ってます。

──今は、TikTokの動画で曲が使われることでバイラルヒットが生まれるなど、誰かに曲が使われた分だけお金になることもありますが、ダンスの場合は自分の振り付けが動画で使われてもマネタイズには繋がりにくいのでしょうか?

Miyu:契約にもよると思いますが、例えばその振り付けをしたダンサーに最初に振り付け料としては入ると思うんですけど、それが広がって何千人もの人が踊ったとしても、音楽とは違ってあとからお金が入ってくるわけではないですね。ダンスの振り付けを考えることは世の中に作品を発表することでもあるので、かなりのエネルギーを注いでいますが、それ自体にあまりお金は発生しません。

私も自分の振付を誰かにコピーされて悔しい思いをしたことはありますが、ダンスには著作権がないし、そもそも誰か・何かからインスピレーションを受けて自分でもやってみる文化なので、そういう形でのマネタイズの概念はこれまでありませんでした。こういったことは、今プロになってダンスでお金を稼ぐようになってから考え出したことで、それまではどちからといえば、真似されることに関してはうれしいなと思っていました。

──NFTでは、従来のアートや音楽などのデジタル作品では不可能だった“二次流通以降の販売による利益”も著作権者に還元されるようになりますが、そういった流通の仕組みを知った時、どう思いましたか?

Miyu:率直にすごいと思いました。さっきも言いましたが、現状、ダンスには著作権がないので、この業界ではそういう仕組みはなかなか考えられないというか、普通のことではありません。

例えば、自分が作ったダンスの振り付けがTikTokでバズって多くの人に真似されて広がるたびに、その振り付けの使用料が利益として還元されるようになれば、ダンス業界は大きく変わると思います。

また、今実際にダンスの「モーション権」を販売するサービスもあります。このサービスではダンサーの振り付けをAIが解析して、他のダンサーがそれと同じ振り付けをしているのを検出することができるので、今後はモーション権があるものに関しては、誰かにその振り付けが使われるたびに、元の振りを作ったダンサーに利益が還元されるようになるかもしれません。

ダンスとテクノロジーの未来

──ところで、ダンスはモーションキャプチャーと結びつくなどテクノロジーとも密接な印象があります。最近だとNFT以外にどんなテクノロジーと結びついた作品や取り組みがあるのでしょうか?

Miyu:ディズニーのアニメーション映画『あの頃をもう一度』には、ここ最近で一番驚かされました。アニメキャラクターが、ダンサーが作った振り付けをそのまま踊ったり、メガネをかけるような日常的な動作にダンスのエッセンスを加えた動きなどをしたりするのですが、YouTubeで公開されているメイキング映像で見ると、元のダンサーの動きとキャラクターとの動きがまったく同じなんですよ。こういうことがもっとできるようになると、ダンサーの可能性も広がっていくだろうなと思いました。

Video: AniBox Trailer Access / YouTube

──テクノロジーを活用したダンス関連の作品として、どんなものが生まれてほしいですか?

Miyu:以前『フォートナイト』をやっていたのですが、そこでダンスのバーチャルライブをやってみたいですね。あと、スケボーやフリースタイルバスケの実際の技を取り入れたゲームもあるので、そんな感じで、何かのゲームに自分のダンスを登場させてみたいです。

──ダンス業界が、今後テクノロジーを活用することでより良くなっていくとするなら、どんな進化に期待しますか?

Miyu:オンラインレッスンが増えてきましたが、映像が平面的なため、どうしてもリアルさに欠ける部分があります。今後、もっとカメラや映像配信機材が発達すれば、立体的に見えるレッスン動画の配信も可能になると思います。そうなればレッスンする側も受ける側ももっとオンラインレッスンをリアルに感じられるようになるはずなので、そういった部分での進化には特に期待しています。

テクノロジーもダンスも、きっとこの先もずっと永遠に進化していく部分は共通していますよね。とはいえ、ダンスは昔のものも大事にしながら進化しているので、私自身は新しいものだけに価値があるとも思っていません。昔のものでもカッコいいものはありますし、どちらも大切にしていくことが大事だと思っています。

作品概要

・作品名:「FREEDOM」

・発売日:2021年8月10日〜8月31日

・仕様:NFT ムービーアート

・価格:オークション形式. 0.5ETH

・販売サイト:OpenSea https://opensea.io/collection/odoriba

・Performance:Miyu

Produce:荒木理恵子(ODORIBA)、義井翔大(ODORIBA)、菅原研吾(GEEK PICTURES / PEEEK TV)

Photo: GEEK PICTURES/ODORIBA

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